2010年5月26日水曜日

ジョッパルを「つがる芸術村」に構想



 以前のブログで、弘前駅前のジョッパル空きビルについて私見を述べた。弘前を活気のある街にするためには、大学誘致、芸術学部の誘致を提唱した。その後、さまざまな意見を頂戴した。すでに多くの自治体で地域の活性化のために大学誘致を積極的に取り上げ、努力している。土地、建物、税制上の優遇をしても、少子化の現在ではなかなか大学も地方への進出には消極的で、時間もかかるし、競合も多くて、実現はきわめて難しいとのことであった。

 この前の月曜日に、新市長の話から弘前市の活性化のためには観光がキイとなることを聞いたが、そうなると駅前の整備は欠くことができない問題であり、駅前の一等地に空きビルが存在するようでは困る。建物は使う人がいないと急速に老朽化するため、ジョッパルの処理が急がれる。

 商業ビルへの活用は、ジョッパルの倒産が示すように、郊外型の商圏が確立した現状では、難しい。やはり公共施設として活用し、それの波及効果による周辺地域の活性が望まれる。

 芸術学部の誘致には時間がかかり、難しいのであれば、芸術村の構想はどうであろうか。弘前には弘前交響楽団、弘前オペラなどを含む27団体の音楽サークルがある。また演劇には弘前芸場、劇団雪国始め4つの劇団が、バレエではアカネバレエはじめ3つの団体があり、その他絵画、書道などの芸術関係の団体や各種のカルチャースクールが数多くある。これらの団体をこのジョッパルに集約的に集めて、ここを芸術村にする構想である。

 現在、各団体は練習場に困り、遠方のかなり不便なところで練習しているのが現状であろう。特に音楽関係は音の問題もあり、夜間の練習の場が限られる。その点、ジャッパルの地下は広く、音の問題は完全にシャットアウトできる。また4階には舞台もあるため、演劇団体にも十分活用できる。いずれにしても冬の長い弘前では、広くて暖かな空間が必要であろう。さらに周辺から部員が集まるため、広い駐車場あるいはバス、電車などのアクセスのいいところがよいであろう。こういった点ではジョッパルの建物、立地は条件に恵まれている。空間があれば、施設自体はそれほど豪華にする必要はなく、今の建物を比較的安く改装することができる。また公共機関であることで、著名な芸術家を招聘することが容易になり、それが内外からの人が集まることにつながる。例えば、現代美術を代表する弘前出身の奈良美智さんを招き、ワークショップを開く場合でも、個人でお願いしてもなかなか難しいが、「つがる芸術村」からの依頼であれば、それほど難しくはないし、県外からの参加者も見込まれる。多くの津軽出身の芸術家の活用も期待できる。またコーラスグループや音楽グループなどは近くにある駅前遊歩道の野外舞台で演奏するのも、うれしい。現在、あまりにぎやかでない駅前遊歩道の活用手段としても生かせる。

 青森市にある国際芸術センターのようなものは全く必要ない。安藤忠雄に設計してもらい、海外の芸術家を招き、美術運動の拠点とするのは結構であるが、全く市民の文化活動とは遊離している。私も含めて青森県民で国際芸術センターに行ったことのあるひとはどれほどいようか。いわゆるかっこうはいいけれど、普通の人が簡単には使いにくい施設である。金沢市の金沢市民芸術村のような、あるいはもっと気楽なものであってもよい。アメリカのポートランドにはパイオニア・コートハウス・スクウェアという広場があり、一時資金難から計画が頓挫しかけたが、市民から75万ドルの寄付を求め、寄付者の名前をレンガに入れて広場に敷くというアイデアで実現された。こういった芸術村においても市民に寄付を求め、それに国、県、市、企業がバックアップすることが、より市民に開かれた愛着のある施設となる。

 市民が多く集まるところに、活気が生まれ、それが観光に誘致にもつながるのではなかろうか。駅前、新幹線、それなら土産物屋、観光館という単純な発想では、人は集まらない。こういった観点から「つがる芸術村」では、内部を完全に開放し、例えば盛岡市のアイーナーのように部屋をガラス張りにするという方法もあろうが、観光客、市民も自由に、交響楽団、演劇の練習を見れるようにすることで、新たな観光名所になりうる可能性もある。さらには駅前にこういった文化設備を構えることが、弘前市の文化都市としての対外的なシンボルとなる。

 実際には、金の問題が一番大きな障害になろうし、これほど多くの各種団体がまとまるのも難しいことであろう。さらには本来、こういった施設はトップダウン的に市から提示されるものではなく、ボトムアップ的に市民から提唱されるべきものであるが、そういった機運もなかなか作りにくい。また根強く残る、つがるの足ひっぱり風潮も、言葉通りに実現への足ひっぱりになろう。

 新幹線の開業が間近に迫った時期、ジョッパルの扱いは、火急の案件であり、新しい市長にとっては就任早々その実力が問われる機会である。

上の写真は青森市郊外にある国際芸術センター、下は市民の寄付により作られたポートランドのパイオニア・コートハウス・スクウェア広場。

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