2020年11月23日月曜日

城西尋常小学校、時敏尋常小学校 卒業写真(明治および大正)

明治36年 時敏尋常小学校
 
大正8年 城西尋常小学校


 以前、ヤフオクで安価で購入した、明治から大正時代の卒業写真のうち、徳島県那賀郡立那賀実科高等女学校の卒業写真については、このブログで紹介した。それ以外の弘前市の城西尋常小学校と時敏尋常小学校の写真については、まだ説明していなかった。

 

 弘前のコロナ問題もようやく収束してきたので、本当に久しぶりに弘前図書館に行ってきた。四人がけの椅子に一人、1時間以内という厳しい条件で入場規制を行っていたが、普段から二階の資料室はそれほど人が多くないので、あまり変わらない。今回の目的は、ヤフオクで入手した写真の年代確認である。時敏尋常小学校の写真裏には、「時敏尋常小学校 第 回卒業生一同 及び職員一同写影 明治三十六年四月二十三日釜萢清蔵 謹写」の記載がある。西洋風の校舎の正面で撮影された写真の上段の真ん中には初代校長の中川寛蔵の姿がある。少し斜めを向きタキシードを着た人物である。明治194月に初代校長となり、明治443月まで校長を務めた。この西洋風の校舎は明治21年に下白銀町にできたもので、柱も西洋風の白いモダンな建物であった。明治36年当時の生徒数は455名で、学級数は8組であった。この卒業写真には男子42名、女子51名の計93名の生徒が写っている。他には男性教師、職員5名と女性教師2名がいる。時敏尋常小学校の卒業写真はこれ一枚である。

 

 城西尋常小学校の卒業写真は6枚ある。4枚については裏に撮影年月日が記入されている。一番古いのは「大正八年三月二十一日 卒業式 葛原岳一 卒業生一同 男 受持 健部武郎 女 受持 土谷先生 校長 白取千代次郎」の記載がある。白取千代次郎は7代目の校長で、明治36年から大正8年まで、在職したので、この写真は在任最後の年である。校舎は明治からの古い校舎である。残りの撮影年月日の記載されている写真は3枚で、いずれも真新しい校舎の前で撮影され、「大正十三年三月十七日 卒業記念撮影」、「大正十四年三月二十九日 卒業生一同」、「大正十四年三月 正夫城西小学校卒業記念撮影」の記載があり、写真の真ん中には当時の校長、外崎日出城の姿が見られる。外崎は大正10年から14年まで城西尋常小学校の校長であったので、この記載は正しい。残り二枚の写真には記載がないので、ここからは推測である。


 一枚の写真には古い校舎前の卒業写真で真ん中には外崎校長の姿が見られる。城西尋常小学校は大正1212月に新校舎を建てたので、この写真はそれ以前のものである。となると外崎校長の在職期間は大正104月から143月なので、この卒業写真は大正11年か12年の3月となる。もう一つの記載のない写真には、上段真ん中に少しいかついヒゲの男性がいる。“城西小学校百年史”を見ると、この人物は6代校長の長尾克己である。在職期間は明治33年から35年なので、この卒業写真は明治34年か353月の卒業写真であると推測される。男子は51名、女子は32名で、時敏尋常小学校より男子の割合が高い。また教師、職員7名は全て男性である。入り口、右には“外靴で入るべからず”の木板が掲げられている。多分、下駄を脱いで学校に入ったのだろう。同時期の時敏尋常小学校と城西尋常小学校の卒業写真を見ると、時敏の方が、女の子がおしゃれで可愛い髪飾りをしている女子が多いが、城西は少ない。校区により経済状態が多少違うのだろう。また明治30年代の卒業写真の女子はほとんど稚児髷であるが、大正になるとほとんどそうした髪型の少女はおらず、流行の移り変わりは早い。


できればこの卒業写真は城西小学校、時敏小学校に寄贈したいと考えているが、寄贈を受け入れていただければ、ご連絡をお待ちしている。


大正13年 城西尋常小学校

明治35年頃 城西尋常小学校







2020年11月17日火曜日

成人の矯正患者さんが増えています


 今年は、10歳以下の患者さんは、最後まで面倒を見きれない可能性もあるため、治療をお断りしています。というのは例えば、6歳で反対咬合のために、来院されたとします、前歯部が萌出する7、8歳頃からリンガルアーチ、セクショナルアーチによる前歯部のかみ合わせの改善を行い、最終的には成長を終了した高校生頃にマルチブラケット装置による仕上げの治療を行います。その後の保定も含めて10年以上の矯正管理が必要となります。今から10年、その頃までには引退したいと思っていますので、年少の患者さんについては、一般歯科からの先生の紹介も含めて来院をお断りしています。これには料金体系も関係しており、矯正治療は請負制なので、一度、受け入れれば、最後までの料金をいただいているので、責任を持って治療をしなくてはいけないからです。ただ唇顎口蓋裂の患者さんについては健康保険の対象で、最後は他の矯正歯科医に任せることができますので、引き続き、年少の患者さんも受け付けています。

 

 地方の矯正歯科医院では、成人より子供の患者さんが多く、私のところでも、これまで7割くらいは子供の患者さんですので、10歳以下の患者さんを断るのは、かなりの患者減少になると予想していました。また紹介いただく一般歯科の先生にも返書にそうした理由を書いたため、最近では10歳以下の患者さんの紹介はなくなりました。今年は、新型コロナウイルスの関係と子供患者の減少で、経営的にかなり厳しいと覚悟していました。ところが、成人の患者さんが例年より増え、結構忙しい状態が続いています。

 

 こうした成人患者の最近の増加は、私の診療所だけでなく、知っているだけで、北海道、仙台、福島、新潟、鹿児島の先生もそう言っており、これは全国的な傾向かもしれません。ただ大阪、東京の先生はそれほどではないというので、大都市以外の傾向かもしれません。患者さんに聞くと、今はどこに行くのにも、マスクをつけているので、であれば、矯正治療を今のうちに直し、2、3年後にマスクを外す時期になった時に綺麗な歯並びのなっていたいと言います。確かに、マスク生活下では、目に化粧の重点を移し、口元は口紅もつけないと言います。マスク美人という言葉もあり、マスクをつけていると美人だが、マスクを外すとそうでないとニュアンスを含みます。マスクを外して、目元、口元ともに美人になりたいという人が多いのでしょう。実は、都会では数年前から、成人矯正は大きなブームで、子供の頃できなかった歯列矯正を大人になってしたいと人が一気に増えました。ある雑誌で特集した“人生の中でやりたいことリスト100”の中にも矯正治療が入っているほどです。こうした大都市での流行が、新型コロナウイルス問題で地方にも広がったようです。

 

 ただ心配なのは、成人矯正が増えるのはいいのですが、それが通院、診療のあまりいらないマウスピース矯正(インビザラインなど)に向かうのは危険です。インビザラインについては薬事承認されていない製品であり、その適用にはかなり慎重になるべきで、患者さんからのクレームが多くあります。もちろんインビザラインも日々進歩していて、適用も広くなりましたが、非抜歯から抜歯の変更、ワイヤー矯正との併用、転換などが必要なこともあり、できれば矯正歯科専門医院で治療した方が良いし、あらかじめこうした点についても費用も含めて十分に説明を受けた方が良いと思います。


 

2020年11月8日日曜日

家での巣篭もりのお供 テレビ

 

左下は巣篭もりで作ったレゴのドカッティで、これは楽しめた。おすすめ


 弘前では、クラブ、スナックを起因として大規模なクラスターが起こり、なかなか収束しない。テレビで速報される毎日の感染者数に驚き、外出するのも躊躇してしまう。家と診療所だけの往復で、たまに家内と一緒に、ご飯の買い物に出るのが楽しみである。

 

 4月頃だったが、定額給付金で一人10万円、夫婦で20万円の特別定額給付金をもらえるというニュースがあった。その際、今見ているテレビは、購入してすでに13年以上になるので、思い切って給付金を使ってテレビを買うことにした。テレビ好きな私と家内にとって、テレビほど活用する家電はなく、思い切ってこれまで高くて手が出なかった有機ELテレビを検討した。というのは、映画が好きで、よく見るが、夜のベッドで恋人たちがゴソゴソしている暗い画面が液晶では全く見えないからである。肝心な部分が見えないのは腹立たしいことで、有機ELの方がこうした黒の画像表現に優れているという。

 

 近くのヤマダ電気に行き、最初はパナソニックの55型有機ELテレビを買おうとしたが、この機種は生産が少なく、入荷に日数がかかるとのことであった。そこで価格が高いが65型のGZ2000を勧められた。なんでも数々の家電大賞をとったテレビで、今販売されているテレビの最高峰という。4月頃はコロナ騒ぎで、電気屋もガラガラで、店員さんも何とか実績を上げるために、値引き攻勢で攻められ、かなり値引きした上に、ほぼ2TBのハードディスクをタダにしてもらい、セットで購入した。

 

 さすがにこのテレビは素晴らしく、特に4K画面は本当に綺麗で、たまに放送されるバレエや歌劇の放送には息を飲む。またパナソニックの宣伝通り、音抜けもテレビ設定に合わされているので、オーディオ機器をテレビにくっつけるより、はるかに聴きやすい。夜のシーンもバッチリと見られて、満足している。さらに素晴らしいのは、ネットとの接合で、ネットフリックやYou-tubeと簡単な操作ですぐに接続でき、これまでのチャンネル番組以外の新たなテレビの活用ができるようになった。すぐにネットフリックに登録し、“愛の不時着”、“裸監督”などを楽しんでいる。また65型で見るyou-tubeもコンピューターで見るのと迫力がまったく違い、ふと気づくとチャンネル番組よりこうしたネット配信のものを見る時間が長い。検索機能の入力には時間がかかるが、音声入力も優れていて、テレビに向かった叫ぶことがしばしばあり、滑稽である。

 

 私がヤマダ電機に行ったのは4月だったので、人が少なかったが、その後、5月になると特別給付金でテレビを買おうと思ったお客が多く、電気屋に行ったうちの従業員に聞くと、ごった返し、値引きも少なかったという。多分、パナソニックのGZ2000は相当に売れたはずだし、買った方の満足度も高いと思う。以前、3D、立体に見えるテレビが登場して、一部、番組でも3D放送が行われていたが、いつの間にか下火になった。4K放送もまだ一部であり、テレビのリモコンには4Kのボタンがあり、そこを押すと6社くらい放送局の番組をしており、大部分はBS放送で兼ねている。ただ映画などは明らかに4K放送の方が明るく綺麗で、“男はつらいよ”などは、もっぱら4K放送で見ている。

 

 将来的には少しずつ巣篭もり状態も解消されてくると思うが、それでもテレビは娯楽の王様であり、4K、8Kが今後とも主力になっていくのは間違いない。私の家では、ソフトバンクエアーを使っているが、5G普及がさらに進むと、こうしたワイヤレス置き型WiFiも光通信なみの速さになり、4K8Kのネット配信も安く、見られるだろう。また最近のカメラでは4Kの動画撮影もできるため、ネットの配信はますます高精度のものになろう。3Dテレビより高精度の4K8Kの映像の方がよほど立体的に見えるから不思議である。おそらく将来的には、ソフトバンクエアーのようなワイヤレス置き型WiFiが、5Gで月に3000円くらいなら全世帯に普及し、そうした暁にはモニター代わりの大型のテレビが一家の主力となり、仕事、教育、買い物、さらには医療の一部もほとんど、このテレビでできるような日が来るのだろうとコロナ問題の最中に思った。

 


2020年11月6日金曜日

新型コロナウイルス 弘前市の風水の綻び


 

東向きの北斗七星の柄杓の真ん中の二つの神社が消滅した


 弘前では新型コロナウイルスの感染が止まらない。10月のはじめ、繁華街、鍛冶町のクラブから発生したクラスターは、一次、二次、三次感染を発生し、すでに関連を全て入れると200名以上の感染者となっている。人口十万人あたりの感染者数では100名以上と思われ、東京都が300人であることを考えると、全国でも有数の感染地域となっている。10月までは感染者が0だっただけに、住民にとっては悪夢のような災難である。こうした大量のクラスターを起こした原因は、初動の対応、特にクラブ従業員の中に感染兆候が現れた時の保健所の対応が悪いと言われるが、今まで一人の感染者が出なかった油断もあったのだろう。こうした人為的なミスは確かにあったのだが、私自身は運が悪かったとしか言いようがない。いくら注意してもこの新型コロナウイルスは感染する可能性があり、私自身、かなり感染には気をつけているが、それでもいつ感染するかは運次第である。

 

 昔の人は、新型コロナウイルスのような疾患を疫病、厄災と呼び、お祓いをして清めた。ところが今回、弘前市ではこうした疫病、厄災から市民を守るねぷた祭りを結局しなかった。昔から続く祭りには意味があり、京都の祇園祭も同じような意味を持ち、今年は山鉾巡行こそ中止になったものの、“神籬による神幸祭”、“御幣による町内巡り”は例年通り行われ、町内の厄災を清めようとした。密集にならないように、隠れるように運行したが、それでもかなり本格的ものであった。ところが弘前では、ねぶたの本来の意味が失われ、観光エンターメント化して、市長が中止といえば、そのままねぶたを巡行しなかった。本来の意味を知れば、誰かゲリラ的運行もあるかと思ったが、結局、弘前城東(東地区町連合会ねぷた)以外、誰も運行せず、実に素直であった。城東の葛西敞さんはねぷた歴史の第一人者なので、意味を知り、敢えて行ったのだろう。


 弘前を風水で守る鉄壁の防御がここ数年で極めて弱くなっている。まず全国の東照宮でもかなり古く、1617年にできた弘前東照宮が2012年に破産し、さらに2015年には本殿も建物だけ他の場所に移され、完全に更地となった。北斗七星の真ん中を占める重要な拠点神社が完全に消失した。さらに禰宜町の江戸初期からある大杵根神社もいつの間にかなくなって更地になっていた。前から奥に隠れて目立たない神社であったが、何もなくなっているのには驚いた。ここも古い神社で、私の感覚からすれば、古い神社を平気で潰してばちが当たるとは思わないのだろうか。また新しくできた弘前レンガ倉庫美術館近くの稲荷神社、住吉神社の荒廃もひどい。北斗七星を形成する二つの神社がなくなり、一つは荒廃しており、風水の観点では東からの厄災には全く防御できなくなっている。防御は一番弱いところから崩れていき、その崩壊箇所が東であり、東から厄災の悪い気が流れ込んだ。

 

 こうしたオカルトめいたことを医者が書くというのは科学的ではないが、一方、郷土史の研究家としては、先人の築いた弘前の結界を容易に崩した最近の出来事にバチが当たったように思える。神社は日本人の自然信仰を体現する重要な場所であり、その設置には、何らかの風水あるいは意味を持たせた。人々は日照り、害虫、冷害などによる農作物被害を恐れ、神に祈った。こうした天災は人間の力ではどうしようもないからだ。また疫病、飢餓によって多くの人々が亡くなった時も神に祈った。そして村、地区の守護神として神社を作り、氏子を結成して大切に保存してきた。村には氏神様を祀った小さな神社があり、それを氏子の何名かの名義で保存してきたが、そうした村の有力者、氏子が亡くなると、その子供は“俺の名義の土地だから売って金をくれと”と言い出し、結局、神社の土地が人手に渡り、売られる例もある。一部の神主がいる神社は所有権がはっきりしているが、こうした小さい神社は村の共同保有である場合があり、村の共同体制が崩れると崩壊する。

 

 弘前での新型コロナウイルスの蔓延は、もちろんこうしたオカルト的なものによるものではない。ただお寺への墓参りは盛んであるが、さて神社の参拝というと正月くらいしかないのでなかろうか。私は、結構、神社にお参りに行く方で、自宅にも診療所にも小さな神棚があり、毎日、拝んでいる。大阪では、自宅や会社に神棚があるのは、ごく当たり前で、えべっさんの福笹などもここに飾る。今は一刻も早い新型コロナウイルスの終焉を祈っているが、どうも仏壇ではこういう訳には行かず、昔の家の多くは、仏壇と神棚が同時にあった。弘前の神社の衰退を見ると、こうした家庭での日常の祈りも減っているのだろう。残念である。

2020年11月4日水曜日

現代アートの額縁

 

たばたせいいち さんの絵本原画

タカノ綾さんの新作


 家の新築祝いや誕生祝いに絵をプレゼントする人も多いと思います。最近では、部屋も洋風になり、古臭いモチーフの絵よりは、現代絵画を選ぶ傾向があると思います。現代絵画は、従来の額縁に収まる絵からの脱却を図っているため、額縁なしでの展示を基本にしているものがあり、絵によってはキャンパスの側面にも図柄が描かれている作品があります。ただ絵の展示からすれば、額縁に入れておいた方が保管の点では優れており、また人にプレゼントするためには、やはり額縁をつけて贈った方が喜ばれます。

 

 私は、古い掛け軸が好きですが、診療所にはまさか掛け軸は飾れないので、現代絵画もどきのものを中心に飾っています。画廊などで飾っている現代絵画を見ると、白あるいは白木の立体額に浮かして飾っているようです。厚みのある額縁に額装マットを使わず、額縁内部の背面に絵を固定して使います。オークションで買った丸山直文さんのアクリル画の作品もそうした額に入っていましたが、ただ作品自体はそれほど厚い水彩紙に描かれていませんので、湿気を吸ってシワができています。できれば、額装マットを使った飾ったほうが保存には良いと思います。

 

 また額縁の色については、白もいいのですが、私は写真も飾れるため白木のものが好きです。白木の立体額に額装マットを使って展示しています。ほとんどの額縁は、「額縁のタカハシ」から買っています。安くて大きさも指定できるからです。前は立体額の19mmのものを使っていましたが、白木の種類がなくなり、今は7916希という23mmの立体額の白木のものを使っています。大きさにもよりますが額装マットも含めて3000-5000円くらいです。それほど高くはありません。部屋の中の額縁を全て白木の立体額に統一するのも、いいでしょう。

 

 上の写真は、最近亡くなった絵本作家、田畑晴一さんの“ダンプえんちょうやっつけた”の原画です(一枚は“だんち5階がぼくのうち”の原画です)。もともと字の入る場所は空欄ですが、どうも間が抜けているので、絵本から字の部分をコピーして貼っています。いずれもヤフーオークションで購入したものです。こうして5つの作品をまとめて並べると、白黒の絵ですが、楽しい雰囲気が出ます。気に入っています。

 

 下の写真は、ごく最近買ったタカノ綾さんの新作版画です。Kaikai kikiを扱うZingaroで購入したものです。店舗販売をせずにネット販売だけで、この作品も10分くらいで完売しました。ただその後、メルカリやヤフーオークションで転売事例がたくさんあることから、ファン以外の購入者も多かったのかもしれません。調べるとタカノ綾さんもかってほどの人気はないようで、少し画風が飽きられてきたのかもしれません。それでも日本人作家の中で海外でも知られた作家の一人で、今回の版画も50部という製作数には惹かれます。若い患者さんの多い私の診療所には似合っています。

 

 以前、フィンランドのイラストレータ、マッティ・ピックヤサムさんのイラスト原画が、神戸のMarkkaというお店で、6000-12000円くらいで売っていました。額縁も入れて10000-18000円くらいで、友人に贈ると大変喜ばれましたし、またアメリカの友人には、明治版画の楊州周園の作品をヤフオクで、1万円くらいで購入し、プレゼントしましたが、これも大変、喜ばれました。ヤフオクで“シルクスクリーン”などで検索すれば、比較的手頃な現代絵画の作品が見つかりますので、何かいいプレゼントと考えている人はご参考にしてください。


2020年11月3日火曜日

滅菌・消毒コーナーの改装

 

改装前

改装後


 厚生労働省から新型コロナウイルス感染症の院内の感染拡大を防ぐ取り組みを行う診療所に“感染拡大防止等支援事業補助金”が出ることを知ったため、以前から改装しようと思っていた滅菌・消毒コーナを直した。建具屋さんとなんども打ち合わせをして、狭いコーナをいかに有効に使うかということに頭を絞った。一番の改善点は、滅菌、消毒した器具の保管場所で、これは前回の保健所の調査でも指摘されていた。矯正器具は全てオートクレーブ、乾熱滅菌、薬液などで滅菌、消毒するが、それを保管する場所がなく、引き出しにしまっていた。紫外線殺菌保管庫などに入れておくようにと指摘された。こうした歯科用保管キャビネットは市販されていて、それだけをつけるのも一つの方法だが、いっそ滅菌・消毒コーナ自体が改装したいと考えていた。

 

 もともと歯科の中でも、矯正歯科は感染予防策が一番遅れていた分野である。矯正治療はワイヤーを曲げて口に入れるだけで、歯を抜いたり、根っこの治療をしたり、注射もしないので、あまり感染に対して注意を払っていなかった。昔、40年ほど前だが、ワイヤーを曲げるプライヤーも数本、ラックに入れ、患者さんの治療を終えればアルコール綿で拭いて再度使うのが普通であったし、ブラケットやワイヤーなども一回使ったものを再利用することもあった。1980年頃、鹿児島大学矯正歯科では、使用するプライヤー数を最低限に減らし、患者ごとにキットを組んで使うようにしていた。その当時、こうしたシステムをしていた歯科大学はなく、ほとんどの大学の矯正歯科、矯正歯科診療所では、プライヤーの使い回しをしていた。矯正治療には感染予防策をそれほど必要がないとされていたからである。今でも稀に円形のプラスティックのラックにプライヤーを入れて使い回しで使っている矯正歯科医院があるが、珍しい。以前、転医した医院がそうした使い周りのシステムだったので、他のところに変えて欲しいという患者がいた。

 

 もともと日本の歯科は、欧米に比べて感染予防対策は徹底されていなかった。欧米では今回の新型コロナウイルス以前も、感染防御ガウン、手袋、フェイスシールド(メガネ)、ディスポ機材などが当たり前のように使われていた。日本ではインプラントの手術など特殊な状況以外はここまでしない場合が多かった。欧米では30年ほど前にエイズが増え、特に歯科医院で感染したというキンバリー事件以降、こうした感染予防策が一般的になった。ところが日本では欧米ほどエイズ患者が増加しなかったので、感染予防策の対応が遅れた。ただ今回の新型コロナウイルスにより日本の歯科医も欧米並みになったと思われる。かなり重武装した歯科医の姿を見ても、最近は患者さんも驚かなくなったどころか、安心するようである。

当院でも、入り口での手指のアルコール消毒、体温測定、治療前のうがい、頻回な接触部分の清掃などは当たり前になってきたし、お恥ずかしい話であるが、以前は勝手に患者一人に手袋一枚として、手袋をつけたままカルテの記載などもしていたが、それもいちいち取り替えるようになった。もちろん全てのハンドピースはオートクレーブにかけている。空気清浄機の個数も増やした。

 

 患者さん同士が待合室で被らないように、基本的には同じ時間帯には一人しか予約を入れていないが、それでも家族数人でくる患者さんがいて、狭い待合室でソーシャルディスタンスが取れない場合がある。患者さん以外の付添いの入室を禁じる診療所もあるが、まだまだこの状況が続くなら、こうした対応も取りにくい。出来るだけ少ない人数で来て欲しいし、少なくとも待合室でも会話はご遠慮して欲しい。どうしたことか新型コロナウイルス問題が発生してから、急に患者、特に成人患者が増え、なかなか予約ができない状況が続いている。患者さんが増えているのに、混雑しないようにするのは難しく、予約に当たっては患者さんにご迷惑をおかけしている。



2020年11月2日月曜日

迷宮グルメ異郷の駅前食堂 青森編2

 

笹餅をここで売っている

 先週の金曜日の“迷宮グルメ異郷の駅前食堂”青森編の第二弾は、津軽鉄道の芦野公園駅から金木駅まで約1キロくらいのロケである。芦野公園は、春になると桜が有名で、五所川原市周辺の人々の憩いの場所、弁当などのお花見道具を揃えて家族で行く。公園の野外ステージでは民謡などが演奏され、そこで酒を飲んだりして、待望の春をみんなで楽しむ。

 

 ところが番組では、見た通り、普段はほとんど人はおらず、グーグルマップで確認すると、芦野公園駅から339号線を南下し、スーパーストア金木タウンセンターで寒いので服を買い揃える。この店は、先日、NHKのプロフェッショナルでも放送された桑田ミサオさんの笹餅が売っているところで、1袋2個入り、170円で販売しているが、全国でもこの笹餅を食べるのはここで買うしかない。開店と同時に売り切れなのだろう。

 

 その後、ヒロシさんは金木駅方面に歩いていくが、私は逆に金木公園から芦野公園まで歩いたことがある。さすがに食堂はもう少しあった気がする。どの道を歩いたのかはわからないが、それでも見事なほど町は寂れている。この番組ではイタリアのポンペイの遺跡がある駅に降りた時でも、ポンペイ遺跡に入らなかったくらい見事に名所を外す。ところが金木駅ではさすがに太宰治記念館「斜陽館」に入らないと尺が取れなかったようだ。

 

 こうした見知らぬ駅で降り、周辺を散歩するのは思い出となる。昨年の今頃、青森県鯵ヶ沢町で、養護教員向けの歯科矯正についての講演会があった。鯵ヶ沢にはホテルグランメール山海荘というホテルがあり、二度ほど利用したことがある。いいホテルで温泉も良い。ただこの時は五能線の鯵ヶ沢駅前から送迎バスでホテルに直接行ったので、鯵ヶ沢町そのものは全く知らない。そこでこの講演会では、講演開始の2時間前に着くような電車に乗り、鯵ヶ沢駅から歩いて会場に行くことにした。今回のヒロシさんの旅と同じような寒くて、雨の降る日であったが、駅から少し歩くと、昔の海沿い街道が現れ、そこから講演会場である公民会まで歩いていくと街道沿いには色んな店があり、そういえば鶴瓶の“家族で乾杯”でこの鯵ヶ沢を舞台にした回があったのを思い出し、そこで出会った店も発見した。昼飯はどこにしようか迷い、最終的には鯵ヶ沢町のはずれにある地魚屋食堂 たきた という店を発見し、そこでヒラメのずけ丼を食べたが美味しかった。まだ時間があったので“海の駅 わんど”というところで買い物をして講演会場に向かった。わずか2時間くらいの散歩であったが、観光地でないこうした駅に降り、色んなところに歩くのも面白いと思った。全国に観光地と呼ばれるところが500箇所あるとしよう。それ以外の何万箇所という観光地でない場所が存在し、そこにもそれぞれ面白いところがあると思う。ヒロシさんの迷宮グルメの旅も、コロナウイルスの関係でしばらく海外ロケはできないだろうが、こうした無名の駅は日本にはたくさんあり、そうしたところを訪問するのも、ヒロシさんらしく、楽しいと思う。


 このあと、秋田で2つほど撮影したようだが、どこだろうか。できれば少し大きな街として大館市を勧めたい。ここは昔の鉱山があり、古い料亭が残っているし、昭和の雰囲気もする。是非ともキリタンポも食べて欲しいところである。駅としては大館駅より東大館駅の方が鄙びていて駅前の雰囲気も素晴らしい。さて秋田編はどこを撮るだろうか、楽しみである。


2020年11月1日日曜日

三菱スペースジェット 事業凍結

 


 三菱の国産旅客機“スペースジェット”の事業凍結のニュースがあり、個人的には大変ショックです。YS-11以来の国産旅客機で、期待しただけに今回の報道は、新型コロナウイルス問題の現状では仕方ないと思いますが、同時に95%完成しているだけに、ここで諦めるのかと悔しい思いも強くあります。三菱重工株も買って応援していたのですが、結局、株価は買った値段の半分で推移しています。

 

 三菱のスペースジェット(MRJ)は、本当に運のない機体です。2008年から始まった機体開発は、主翼を炭素繊維複合材から普通のアルミに変えるなどの大きな計画変更があったものの、201511月に初飛行にこぎつけ、順調にいけば、ここから23年でアメリカ連邦航空局の形式証明を得て、販売になるはずでした。ところが、ここでボーイングなど航空業界の妨害なのか、大規模な変更を要求され、もともと形式証明にはこれといった正解がなく、日本人の開発スタッフはアメリカの暗黙の了解を理解していなかったことによります。そのために開発スタッフをボンバルディアなど海外メーカーから引き抜き、一から開発をやり直し、最新の変更が行われた機体ができたのが2020年の3月でした。ここで新型コロナウイルス問題に巻き込まれ、試験試験もストップしました。10号機までの試験飛行時間は3900時間を超え、おそらく後、200-300時間で形式証明は取れたように思えます。


 2017から2019年に続いたボーイング737maxの墜落事故は、その原因が連邦航空局への形式証明でも計器の虚偽報告があったことが判明したため、スペースジェットの審査もより厳しくなった可能性が高いと思います。さらにカナダのボンバルディアからの訴訟、あるいはブラジルのエンブラエル社のボーイング社との企業協定など、幾度もの困難に直面し、もう少しで形式証明が得られ、量産できるとなった時点で、新型コロナウイルス問題が発生し、全てが中止となりました。本当に、数々の試練にありましたが、今回のコロナウイルス問題は、スペースジェットの最大顧客である日本のJALANAもひどい経営状況となり、結局、飛行機購入どころでなくなりました。


 今後、JALANAなどの航空会社が、コロナウイルス前の状況に戻るには、少なくとの23年はかかると思われ、その間は、既存の飛行機を何とか使い支出を減らすしかありません。これは世界中の航空会社も同じです。こうなると航空機需要は相当、厳しく、ボーイング社ですら、経営困難になるかもしれません。

 

 一方、小型飛行機、90席以下の飛行機は、カナダのボンバルディアがすでになくなったことから、生産はブラジルのエンブラエルしかありません。ところがこのエンブラエル社も株価が5年前、40ドル近かったが、今や4.5ドルまで、ほぼ1/10になる程暴落しています。今後も飛行機の需要は少なく、さらに資本提携していたボーイング社も経営危機のためエンブラエル社との資本提携は白紙になりました。今後、エンブラエル社は、さらに経営が厳しくなることも考えられ、倒産の可能性もあります。


 一方、アメリカでは運用協定、席数76席以下、最大離陸重量39トンに、スペースジェトMRJ90は抵触するため、席数を減らしたMRJ70を開発していますが、これに該当する機種は世界中にないため、協定の変更がなければ、売れ筋になる可能性もあります。今の所、数年後の景気回復を待ちながら、まずMRJ90を何とか形式証明まで持っていき、並行してMRJ70の開発をスローダウンしながら待つしかありません。エンブラエルが倒産すれば、100席以下の小型旅客機を生産する会社はなくなることから、その時こそ、再び勝機が訪れます。生産を開始してから中止するよりは、今の時点で開発を減速する方が被害は少ないかもしれません。コロナ問題が収束すれば、必ず小型航空機の需要は出てくるので、今は辛抱の時です。次期戦闘機F3の開発が、三菱重工に決定しましたが、今後、アメリカ企業との協力が不可欠で、その際、スペースジェット開発の経験が生かされると思います。負けるな三菱。