2020年11月1日日曜日

三菱スペースジェット 事業凍結

 


 三菱の国産旅客機“スペースジェット”の事業凍結のニュースがあり、個人的には大変ショックです。YS-11以来の国産旅客機で、期待しただけに今回の報道は、新型コロナウイルス問題の現状では仕方ないと思いますが、同時に95%完成しているだけに、ここで諦めるのかと悔しい思いも強くあります。三菱重工株も買って応援していたのですが、結局、株価は買った値段の半分で推移しています。

 

 三菱のスペースジェット(MRJ)は、本当に運のない機体です。2008年から始まった機体開発は、主翼を炭素繊維複合材から普通のアルミに変えるなどの大きな計画変更があったものの、201511月に初飛行にこぎつけ、順調にいけば、ここから23年でアメリカ連邦航空局の形式証明を得て、販売になるはずでした。ところが、ここでボーイングなど航空業界の妨害なのか、大規模な変更を要求され、もともと形式証明にはこれといった正解がなく、日本人の開発スタッフはアメリカの暗黙の了解を理解していなかったことによります。そのために開発スタッフをボンバルディアなど海外メーカーから引き抜き、一から開発をやり直し、最新の変更が行われた機体ができたのが2020年の3月でした。ここで新型コロナウイルス問題に巻き込まれ、試験試験もストップしました。10号機までの試験飛行時間は3900時間を超え、おそらく後、200-300時間で形式証明は取れたように思えます。


 2017から2019年に続いたボーイング737maxの墜落事故は、その原因が連邦航空局への形式証明でも計器の虚偽報告があったことが判明したため、スペースジェットの審査もより厳しくなった可能性が高いと思います。さらにカナダのボンバルディアからの訴訟、あるいはブラジルのエンブラエル社のボーイング社との企業協定など、幾度もの困難に直面し、もう少しで形式証明が得られ、量産できるとなった時点で、新型コロナウイルス問題が発生し、全てが中止となりました。本当に、数々の試練にありましたが、今回のコロナウイルス問題は、スペースジェットの最大顧客である日本のJALANAもひどい経営状況となり、結局、飛行機購入どころでなくなりました。


 今後、JALANAなどの航空会社が、コロナウイルス前の状況に戻るには、少なくとの23年はかかると思われ、その間は、既存の飛行機を何とか使い支出を減らすしかありません。これは世界中の航空会社も同じです。こうなると航空機需要は相当、厳しく、ボーイング社ですら、経営困難になるかもしれません。

 

 一方、小型飛行機、90席以下の飛行機は、カナダのボンバルディアがすでになくなったことから、生産はブラジルのエンブラエルしかありません。ところがこのエンブラエル社も株価が5年前、40ドル近かったが、今や4.5ドルまで、ほぼ1/10になる程暴落しています。今後も飛行機の需要は少なく、さらに資本提携していたボーイング社も経営危機のためエンブラエル社との資本提携は白紙になりました。今後、エンブラエル社は、さらに経営が厳しくなることも考えられ、倒産の可能性もあります。


 一方、アメリカでは運用協定、席数76席以下、最大離陸重量39トンに、スペースジェトMRJ90は抵触するため、席数を減らしたMRJ70を開発していますが、これに該当する機種は世界中にないため、協定の変更がなければ、売れ筋になる可能性もあります。今の所、数年後の景気回復を待ちながら、まずMRJ90を何とか形式証明まで持っていき、並行してMRJ70の開発をスローダウンしながら待つしかありません。エンブラエルが倒産すれば、100席以下の小型旅客機を生産する会社はなくなることから、その時こそ、再び勝機が訪れます。生産を開始してから中止するよりは、今の時点で開発を減速する方が被害は少ないかもしれません。コロナ問題が収束すれば、必ず小型航空機の需要は出てくるので、今は辛抱の時です。次期戦闘機F3の開発が、三菱重工に決定しましたが、今後、アメリカ企業との協力が不可欠で、その際、スペースジェット開発の経験が生かされると思います。負けるな三菱。


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