2020年4月25日土曜日

土屋嶺雪 上手くない画家

川合玉堂の滝

橋本関雪の滝
引きこもりの連休中に読む予定の本
土屋嶺雪の滝 水の表現、特に滝の下部が下手



 土屋嶺雪の作品を中心に集めている。ヤフーオークションを通じてこれまで18点になった。同じ作者のコレクションとしては、まあまあの数になったと思う。最初の頃はオークションでも競う相手もなく、一万円前後で落札できたが、最近では入札件数も増え、二万円前後まで上がってきた。こうしてブログに書いたことも一因で、自業自得である。最終的にはどこかの美術館でまとめて預かってもらえるなら寄贈したいと考えている。

 以前のブログでも述べたが、土屋嶺雪は何らかの美術団体に属しておらず、展覧会にも作品を出していない。屏風に描かれた比較的大きな作品もあるのだが、あくまで個人に頼まれて描いたもので展覧会用のものではない。通常、画家は展覧会用の作品と生活のための作品は違う。展覧会用には、自分の技術を存分に注入して大型で人目をひく作品を作る。もちろん賞があればそれを目指すし、何より展覧会により名が知れることを求める。そうして名前が売れるようになると、画廊などを通じて小型の家の床の間や応接間に飾る絵を売る。中にはお金持ちからより大きな作品を頼まれることもあるが、こうした金が生活費となる。一方、土屋嶺雪のような展覧会には出さない、美術団体にも属さないとなると、その評判を聞きつけた、いわゆる口コミで作品を依頼されたり、知人を介して作品を売ったのであろう。

 嶺雪の画風は、師匠であり、友人であったと思われる橋本関雪に近い。山水から動物画、歴史画などジャンルも広いことも似ている。ただ画力について言えば、かなり落ち、関雪は一流とすれば、嶺雪は二流以下、三流くらいのレベルである。関雪は帝展などにも大型で見事な作品を出しているし、帝国美術院にも属して建仁寺の襖絵など歴史に残る作品も描いている。掛け軸のような小品でも優れた作品が多く、嶺雪の作品と比較するとその才能の差は大きい。

 近年、田中一村や不染鉄など、特定の美術団体に属さず個性的な絵画を描いてきた画家の掘り起こしが流行っているが、土屋嶺雪に限って言えば、特定の分野に長けているわけでもなく、また独創的な絵でもない。つまり凡庸でそれほどうまくない絵描きである。それでも彼の作品を18点集めてみると、中にはいい絵もあり、長年、暮らしていた兵庫県、もう少し狭く言うなら明石市くらいで展覧会をするくらいは、いいのではないかと思う。これまでほとんどオークションや画廊にも出てこなかったが、こうしたブログで紹介するうちに少しずつ出てきた。これまではオークションに出てきた作品を出来るだけ落札するようにしてきたが、この養老の瀧のようなあまりできのよくない作品もある。買おうかずいぶん悩んだが、コレクションとしては下手なものも入れなくてはいけない。今後はもう少しいい作品を中心に集めていきたい。


2020年4月19日日曜日

N-95 マスク

買ったのはこれ Crosstex社
前回のブログに紹介したシャワーカーテンを利用した医療用ガウンです。家内に作ってもらいました。消毒液をいっぱいかけられるのでカワクーノと併用すれば、使い回しができそうです。このマスクは普通のサージカルマスクです(3M).


カワクーノ 回転しないのでシワになりにく




 通常のサージカルマスクよりさらに高機能なN-95マスクの入手がほぼ不可能となっている。ネット上では中国製のN-95マスクが高い値段で取引されているが、こうした商品がN-95に相当する基準に達しているか、不明であり、やはり3Mなどアメリカ、日本企業以外のN-95マスクは信用置けない。

 歯科診療では、どうしてもタービンと呼ばれる高速な切削器具を使うことが多い。あのジェット機のようなキーンとうるさい機械である。圧縮空気を利用して内部の歯車のようなものを高速で回転する。切削時、高い熱を発生するために水を噴射しながら歯を削る。この際に発生するエアロゾルが問題で、もし感染者がいれば、その口腔内のウイルスがこのエアロゾルとなり、空気中にばらまかれる。通常の咳やくしゃみの場合は水分にウイルスが包まれるので、通常のマスクでも捉えられるが、エアロゾル化したウイルスは通常のマスクを通す。そのためアメリカ歯科医師会でも、基本的にはエアロゾルの発生するタービン、超音波スケーラーによる歯科治療は控えるように言っているが、それでも使わないわけにはいかない。その場合は、ゴーグル、防護服、グローブとともにN-95マスクの着用を勧めている。

 矯正歯科ではタービンを使うことは少ないが、それでもタービンを使う時はN-95マスクを着用して治療するようにしている。現在、ギリギリで手に入れたものも含めてアメリカ製のN-95マスクも少なくなり、再利用を検討しなくてはいけない。

 厚労省の推薦するN-95マスクの推薦は、過酸化水素水プラズマ滅菌器あるいは。過酸化水素滅菌器などであるが、いずれも大病院の滅菌室などにある特殊滅菌器で、歯科医院にはこうした器具はない。もう一つの方法として5枚のマスクを5日間のサイクルで再利用すると言うもので、紙についたウイルスは72時間で死ぬという研究に基づく。そこで私のところでも曜日を記載して、紙袋に入れ、72時間以上経ってからもう一度使うようにしていた。

 ところが4/17のニュースで香港の研究者の実験で、なんとサージカスマスク上のウイルスが最も長生きし、マスクの内側で4日後まで、外側で7日後まで感染力の持つウイルスが検出されたと言う。内側のマスクでは7日後にようやく陰性化したが、外側はわからない。これはショックで、マスクに限り、72時間たってもウイルスは死んでいないことになる。そこで他の方法を考えてみた。前述した実験では56度の温度で30分、70度の温度で5分でウイルスが死ぬ。そういえば台湾のIT大臣が電鍋という台湾の炊飯器でマスクの再利用を説明していた。これによれば70度くらい、8分でマスクの除菌ができ、3回くらいは再利用できると言う。香港の実験結果と似ている。つまり70度くらいの温度で8分以上おけば、除菌できることになる。

 医院にある乾熱滅菌器やオートクレーブは70度の温度設定はできない。温度調節のできる小型の乾熱消毒器をネットで買う方法もあるが、今後の活用が望めない。騒ぎが収まってからも使えるものとなると、まず思い浮かぶのが布団乾燥機である。ダニ退治機能も付き70度以上の高温となるため、マスクを30分ほど容器に入れて布団乾燥機で高温にすれば十分に除菌できそうである。ただマスクだけでなく、ガウンも除菌しようとすれば容器を検討しなくてはいけない。そこで他に何かないか検討すると、カワクーノという吊るして乾かす乾燥機がある。内部温度は70度くらいにはなるようなので、この乾燥機にマスクや防護服を吊るせば30分で理論的には除菌できることになる。排気は上部の穴から出るようで、ここから出たウイルスは3時間は空気中に漂うので、閉院後に30分セットして翌日、窓を開けて換気すればよかろう。ただ空気中に漂うウイルスが壁、床についたらと考えると、診療室の外、倉庫の方がいいのか、いろいろ悩む。まず自分の帽子、マスク、ガウンなどカワクーノに入れて使ってみたい。騒動が終われば家で衣類の乾燥に使えて便利そうである。
*4/22から開院前の30分、マスク、ガウンを入れて乾燥してみた。その後、ガウンは次亜塩素酸系の消毒剤を開始時、昼休みと終了時に噴霧している。効果は不明である。たた濡れたタオルを乾かすには1時間の乾燥では無理のようで、2、3時間はかかりそうである。

** 4/30   N-95マスクはFDAにより認定され、そのリストは以下のサイトに載っている。現在、楽天などで買えるN-95のマスクはリストに載っていない。つまりN-95相当という意味しかない。3M、日本製や中国企業でもこのリストに載っている製品はほとんど買えない(唯一、Moldex社くらいか)。恐ろしいのは、こうしたまがい物のN-95を病院に寄贈する会社や団体があり、善意が逆に医療従事者の感染を生む可能性がある。
https://www.cdc.gov/niosh/npptl/topics/respirators/disp_part/N95list1.html

2020年4月16日木曜日

”コロナクリニック” 長尾先生の提案

勝手に貼りました。すいません。

比較的簡単に作れるようなので家内に作ってもらいます


 コロナウイルス問題は、あまりに変化が激しくついていけない。現在のところ日本におけるコロナウイルスの死亡率は10万人あたり一人くらいと言われているが、やはりこれだけ報道されると恐れるのは無理ない。

 尼崎市の実家近くにある長尾クリニックでは“発熱外来”を開設して市民の要望に応えている。ここでは診療所の外に診察コーナーを設営し、発熱など10項目のアンケートで5つ以上に該当する患者さんについて電話で予約して、ここで診察して、CT検査を行っている。

 CTの保険診療の負担金額が6400円なので、患者さんからは1万円札を用意してもらい、それに消毒スプレーをかけて、おつりの3600円を渡すようにしている。検査は月曜、火曜、水曜の14時から15時の完全予約制とし、医師と放射技師が2m以上離れて対応し、約5分で終了する。新型コロナウイルスCT所見がかなりはっきりしてきたので、90%以上の確率で陽性かどうか判定でき、80%以下のPCR検査より制度は高い。さらに新型コロナウイルスに罹っても症状がほとんどなければ何も恐れる必要はなく、その重症化、致死が問題となる。初期から中等度の症状であれば、日本が開発したアビガンの副作用が少なく、効果があるようなので、早くCTで検査をしてアビガン投与で重症化しないであれば、これほど安心なことはない。

 長尾先生は、PCR検査よりCT検査を勧めているが、これは日本だけで提唱できるもので、他の国ではこうしたことは全くできない。例えば、日本では百万人あたり107.2台のCTがある。弘前でもCTのある病院、医院が29軒ある。17万人に人口だから百万人あたり170台と全国平均より多い。アメリカは比較的CTが多い国だが、40台くらいしかなく、日本の半分以下で、今回の新型コロナウイルスで被害が深刻な、ヨーロッパではイギリスが10台、フランスは17台くらいと日本とは桁が違い、長尾先生の提唱するようなことは日本以外、不可能なことである。同様なことは人工呼吸器や人工心肺装置(ECMO)もそれぞれ全国で22254台、1412台あり、青森県でも270台、15台ある。医療の先進国と呼ばれるアメリカでもECMO250台しかなく、他の欧米諸国も同様であろう。こうした意味でも日本の医療環境は世界でもトップクラスと言える。

 さらに日本の医療の凄いところは、いわゆるフリーアクセス、好きなところに通院できることと国民皆保険制度がある。先の長尾クリニックの例で言えば、予約制とは言え、すぐに見てもらい、料金はたったの6400円。イギリスではこうした騒動がなかった時でも、まず家庭医で見てもらい、CT装置のある大きな病院に紹介されるが、ここまで1ヶ月以上かかることは珍しくない。イギリスでは保険が効いて費用はかからないが、こうした不便がある。一方、国民皆保険のないアメリカではCT撮影の費用は580ドルから1500ドルかかり、日本円で6万から16万円くらいかかることになり、簡単にCT撮影できるものではない。

 日本ではむしろ院内感染などを考えると、全ての人に感度が悪いPCR検査を実施するより、あくまで肺炎症状のある患者についてのみCT検査をし、その後に感染が疑われる患者のPCR検査をした方が良いように思える。こうしたことを言うとCT検査の被ばく線量を問題視する意見も出ようが、現状の1から3%の致死率は十分にリスクを上回る価値がある。できれば長尾医師の提唱するようなCTのある一般内科医院での“風邪外来”、”コロナクリニック”と“コロナ専門病院”が長期化するであろう日本の新型コロナウイルスへの現実的な対応であろう。さらにこうした病院、医院については県、市町村から相応の補助金を出すべきであり、また放射線診断専門医などのインターネットによる診断確認も合わせて必要となろう。元々の医療基盤のない国では、こうしたことは夢物語であるが、幸せなことに日本ではこうしたことが実施可能な国である。
http://blog.drnagao.com/2020/04/post-7131.html

2020年4月14日火曜日

田舎暮らしの勧め

東京タワーから(2018.10)

弘前公園(2020.2)

 私は兵庫県尼崎市で生まれ、その後、仙台市、鹿児島市、宮崎市と巡って、青森県弘前市に住み着いて、25年になる。尼崎には18年間、仙台には8年、鹿児島に8年、宮崎に1年いたが、弘前が一番長く住んでいるところとなっている。

 そのため私の経験と言っても、兵庫県、宮城県、鹿児島県、宮崎県、青森県の比較になるが、どこが老後住みやすいか考えてみたい。

 兵庫県は生まれ故郷なので、まず言葉の問題が一番少なく、ストレスがない。また料理も一番口に合う。一方、最近でこそ慣れたが、宮城や青森など東北の食事は濃くて、しょっぱい。この地方では、冬場の保存食として漬物などの塩分の濃い食べ物が使われていたために、しっかりした味付けを好むようになった。逆に宮崎、鹿児島は全体的に甘い。これは、特に鹿児島で言えることだが、薩摩藩のころ、砂糖が藩の重要な産物であり、貴重品であった。そのため、砂糖=貴重品=美味しいとなり、食べ物を甘くすることが美味しいとされた。若い人にはわからないと思うが、昔は贈答品に砂糖の詰め合わせが重宝された。流石に昭和40年になると大阪でもそんなことはなくなったが、鹿児島では昭和50年代まで砂糖が贈答品であり、農家や漁師の家では、砂糖壺は神棚に置かれて子供が触れないようにしていた。

 気候については、これも一長一短であり、鹿児島や宮崎では5月頃から11月頃まではエアコンが必要な夏で、特に鹿児島では夏の季節、桜島の火山灰が鹿児島市内に吹かれるために窓を開けられない。その点、同じ暑さでも宮崎の方が窓を開けられるだけでもまだマシである。逆に仙台や青森は冬が長く、感覚的には12月から3月頃までが冬で、夏は78月のみとなる。冬の寒さを堪えるだけでなく、雪片付けも大変である。それじゃ兵庫県はどうかというと、冬が寒く、夏が暑い。流石に夏の温度はどこも35度くらいが上限であるが、1月の平均気温は青森市がマイナス1.8度、仙台は0.9度、神戸が4.8度、宮崎市は6.8度、鹿児島市は7.0度となる。個人的には寒さは着込めば何とかなるが、暑いのはどうしようもない。これは個人差で、寒さに強い人は暑さに弱く、冬場でもアメリカ人など半袖で平気な人は見かけるが、夏場はさずがにアフリカ人でも長袖は着ないだろう。

 県民性については、日本でも南に行くほど、性格は暖かく、人懐っこい。よそものに対しても、警戒心が少ない。一方、青森では、まず津軽弁が喋れないと一線は画し、性格的にも暗くて社交的でないので、よそ者が地元に溶け込むことは難しい。兵庫県や宮城県は中間である。

 物価については、まず土地代は2020年の都道府県の公示地価ランキングでは、1平方メートルの平均額、兵庫県が165721円で7位、次に宮城県が138598円で10位、鹿児島県は68880円で18位、宮崎県は39401円で42位、そして青森県は3145円で46位である。東京都が116950円で青森県の40倍くらいになる。弘前市では、駅から徒歩10分くらいのところで4万円くらいである。住んでみての感覚では宮崎県の物価が安い。平野部が広く、土地が安いためにアパート代や一戸建て価格も安く、また農産物や漁業も盛んで、食品が安い。青森県も同様であるが、それでも灯油代など冬の暖房費がかかる。鹿児島は夜、窓が開けられないので冷房費が高く、また土地が狭いので住居費が高い。最近発表された県庁所在地の平均生活費(月額)を見ると、鹿児島市が171136円、神戸市が168579円、仙台市が147691円、青森市が134620円、宮崎市が134543円で、家賃も含めた物価の高さはほぼ実感に近く、おそらく弘前市は青森市より安く、宮崎市以下であろう。

 弘前市はスキー場まで車で、20分くらいで行けるし、ゴルフ場も近く、釣りやキャンプ場、温泉も多く、アウトドア好きの人はいいところと思う。また医療機関も多く、老人ホームも安い。ただ寒さに苦手の人は厳しいところであろう。一方、暖かいところがいい人は宮崎市がいいであろう。スキーはできないが海水浴はできる。ただどこも住めば都で、いいところもあれば、嫌なところもあり、住んでみないとわからない。新型コロナウイルス問題のため、テレワークによる仕事で大丈夫な人は何も都会に住む必要はなく、そうした意味では今後、都市離れが少しずつ進むような気がする。

2020年4月12日日曜日

新型コロナウイルス と歯科診療 3

 連日、弘前歯科医師会から新型コロナウイルスのファックスがくる。厚労省からの通達、連絡をそのまま流しているだけで、歯科医師会独自の解釈、説明はない。一番、笑ったのは日本歯科医師会のHPを見るとN-95マスクの再利用のことが挙げられていたので、開くと英文のかなり長い論文をそのまま掲載していた。忙しい最中、誰がこんな長い英文論文を読めるか。仲間内のメーリングリストやフェイスブックでこうした英文の論文を紹介するのはまだいいとしても、仮にも日本歯科医師会のHP、全国の歯科医に流す情報としてはあまりにお粗末である。厚労省からの通達をそのまま流すのでなく、金があるのだから、少なくとも日本語訳あるいは日本語の抄録を掲載すべきであり、こんなことからも日本歯科医師会の上層部のレベルが思い知らされる。

 さらにこうした通達の中に上記の医療従事者の暴露のリスク評価と対応表が載っていた。これを見ると、歯科医院にくる患者は治療中、必ずマスクを外すので、この表の“マスクを着用していない”ケースとなる。患者が新型コロナウイルスに感染していないかはわからないので、標準感染予防策の原則に従えばすべての患者は感染しているとする。また長時間接触とは数分以上とされているので、通常の歯科診療はほぼ長時間接触となる。したがって歯科診療はこの表の“マスクを着用していない新型コロナウイルス感染者と長時間の濃厚接触”とみなせる。

 通常の歯科医の感染防御は、サージカルマスク、手袋となるため、この表の中の”サージカルマスクは着用しているが眼の保護ない(注4)”になり、中リスクとなる。万が一、患者に感染者がいれば、14日の就業制限となる。さらにゴーグルなどの眼の保護を加えると“医療従事者のPPE:ガウンまたは手袋の着用なし(注3、4)”で、低リスクとなり、就業制限はないことになる。少し説明するとガウンをしていなくてもサージカルマスク+手袋+ゴーグルは”ガウンまたは手袋の着用なし“になり、サージカルマスク+手袋+ガウン+ゴーグルあるいはフェイスシールドが”すべて着用“となる。注3は体位変換など広範囲の身体的接触のあった場合は中リスクとあるが、歯科医師では関係ない。注4はエアロゾルが発生する場合は中リスクとなり、歯科医院の場合、タービン、超音波スケーラーの使用の場合にエアロゾルが発生する。つまりタービンを使う場合は、これ以上の防御策を講じるべきであり、N-95マスク(またはDS2など、それに準じるマスク)+手袋+ガウン+ゴーグルの使用を勧めている。

 この通達にはこうした意味があり、タービンを使った通常の歯科診療をするなら完全防護で診療をせよということになる。もちろん歯科用バキュームや口腔外バキュームによりタービンによるエアロゾルの発生はかなり抑えられるし、換気を良くすれば、かなり拡散する。それでもこの通達に従えば、通常の防護対策、サージカルマスク、手袋、ゴーグルだけで、タービンを使えば、もし無症状の感染者の治療をしたなら、14日間の就業制限が必要となる。もちろんこうしたことは歯科医のみならず。衛生士などの介保者にも適用されるため、タービンを使って通常通りに診療を行うためには、患者ごとにN-95マスク+手袋+ガウン+ゴーグルをして治療に当たらなくてはいけない。感染予防製品が欠乏してほとんど買えず、またタービンを使用しない歯科治療は難しい状況では、一方ではすべての患者は感染者とみなす標準感染予防策の徹底を唄いながら、歯科医院にくる患者は感染者でないと思えと言っているようなものである。

 歯科医院でタービンの使えない状況はかなり考えにくいことであり、仮に緊急性のある処置のみ診ると絞っても、歯が痛くなってくる患者には、歯髄処置が必要となり、タービンを使う。となるとこの通達は、完全防護できる体制の歯科医院以外は休診せよと言っているのに近い。実際に感染者の多い東京や横浜などの歯科医院では、こうした対応が取れないために休診するところも増えていると聞くが、休診する歯科医院が多くなった場合、歯の痛みのある緊急の患者はどこに行くのかという問題が生じる。当番医を決めて診療するにしても無防備では診療できない。地区の中心病院歯科、大学病院、市立病院歯科などで対応するにしても、そうした話し合いが歯科医師会とできているか疑問である。

 今のところ、あくまで個人的な見解だが、N-95マスク+ゴーグルあるいはフェイスガード+手袋+(ガウン)で診療すべきで、貴重なN-95マスクは5枚ほど用意して、汚れが目立つまで72時間以上経ってから使い回しで使用するのが良いように思える。雑菌は付くが、コロナウイルス自体は紙の上で3日しか生きられない。使い捨てガウンも同様に使いまわしてよい。従来の手術着は術者から患者への感染を配慮したものだが、今回はそうしたことは配慮する必要はない。

ただNー95マスクは全く買えない状況にある。上記の暴露リスクによればエアロゾル発生の環境でない場合は、サージカルマスクで十分であり、一般人が大量の購入したN-95マスクは是非とも医師会あるいは歯科医会に寄贈、あるいはサージカルマスクとの交換するようなシステムが欲しい。また歯科医師会には高い会費を払っているのだから、政府と交渉して、各歯科医院へ優先的にN-95マスク、フェイスガード、アルコール消毒液の配布を何とかできないだろうか。

 なお歯科医師会の通達より、補綴臨床の論文の方がよほど理解しやすので、一読を勧める。

https://www.ishiyaku.co.jp/pickup/20200225_info_01.aspx

2020年4月8日水曜日

弘前公園の桜映像



昨日(4/7)の東奥日報の夕刊、明鏡欄に載せた提言は以下のようなものである。

弘前公園の桜映像 配信はできないか 
 桜田弘前市長が、弘前さくらまつりの中止に続いて、先日、桜の開花時期の弘前公園の閉鎖を決めた。入り口が閉鎖され、公園内には人が入れないようになる。これによる県内外からの観光客の減少は、市内の観光業界にとっては大きなダメージとなるだけに、弘前市民、観光客の健康を考慮した苦渋の決断であった。
 一方、誰一人いない桜の咲き誇る弘前公園。これほど美しい光景は世界中にないだろうし、今後もそうした光景をまず目にすることはなかろう。できればこの美しい光景をせめてテレビで見ることはできないだろうか。
 ◇新型コロナウイルスで自宅に閉じこもりがちの世界中の人々にとって、天国のような美しい桜の景色は大きな励みとなるだろう。最近では4Kあるいは8Kといった高精細度の撮影が可能であり、弘前公園の全体をきれいな映像で記録、保存することができる。
 ◇弘前市とNHKなどの放送各局が協力して、できるだけ少数の放送クルーで立ち入り禁止の弘前公園内を撮影し、ぜひともその美しい映像を世界に配信してもらいたい。そしてコロナウイルスが早く終息し、来年度は世界中の多くの人々が弘前公園に来て、実際の桜を堪能して欲しい。
(弘前市・広瀬寿秀)

 投稿したのは櫻田市長が弘前公園閉鎖を決めた翌日の4/2であったが、土日を挟んで月曜日の掲載となった。その間に、実際にこうしたことが可能かと、知り合いのNHKのディレクターに聞くと、NHKでは県域を超えての取材やロケは原則禁止となっており、またBS放送も予算が決められて制作するため、急に撮影はできないということであった。つまりNHKで撮影するなら、NHK青森支局で作るということになるが、予算をどうするかという問題もある。そこでこれも知り合いの東奥日報に記者に聞くと、弘前市としては弘前公園の桜状況をライブ撮影でYoutubeなどで流す予定、さらに報道各局に日時を決めた上での撮影許可を出す方法であるという。

 弘前市でも私の提案に関わらず、すでに観桜会100年を記念誌のための写真撮影を企画していたようである。ただ動画あるいはテレビ放送としての撮影を企画しているかというとはっきりしない。無人の弘前公園、これはいろんなところで活用できる。まず今春に開館する弘前れんが倉庫美術館で、アートとして無人の弘前公園の映像を流すことができよう。これはプロジェクターで流してもよいし、周年的なイメージ映像としても使える。さらに弘前観光館や弘前駅でもプロモーション映像として活用できるし、世界各国の観光旅行会社に送ってもよいし、DVDで発売してもよい。こうしたことを考えると、市内の撮影会社に弘前市から4Kあるいは8K撮影を委託して著作権を弘前市が確保しておく手もある。青森県のNHKあるいは民間放送各社に撮影、放送の便宜を図り頼んでもよいし、緊急予算とはなるが、弘前市で独自に撮影する方法もある。開花の日時が迫っているので、弘前市およびコンベンション協会など関連機関の早急の検討と対応を期待する。

PS; 本日(4/9)、弘前公園の桜の写真、動画を桜の見頃が終了するまで報道自粛してほしいというニュースがあった。また西堀の封鎖は無理だろうと思っていたが、ここも封鎖されるようで徹底した方がよかろう。市が検討していた園内のライブ撮影も禁止されたが、それでも無人の園内の撮影は、今後もその画像のいろんな活用が考えられるだけに、是非行うべきである。その際、記録としての動画だけでなく、アートとしての動画も欲しいところで、要望があれば県内に住む映像作家の撮影も許可して欲しい。



2020年4月5日日曜日

人間の品性 安物買いの銭失い

説明を追加


ニコンF4でこんな写真が撮れました(カラーで撮影したのに)



 自分でも呆れるくらい、品性の低い男だと思っている。歯科医の家に育ち、これまで人生であまり金に困ったことはないが、人間の品性が低いせいか、どうも安売りに弱い。小学五年生の頃、三和商店街の近くにあったみどり電気で、展示品に限り全品半額という企画があった。AMだけでなくFM、短波も聞けるソニーのラジオが欲しく、それまで貯めたこづかい全額を持って、電気屋に走った。半額で確か6000円くらいであったが、500円くらい足らず、店員に30分ほど泣きついて有り金全部で購入した記憶がある。安く買ったというのが一番嬉しかった。

 大学に入り、スキーをやろうと、仙台のスポーツ店を回った。何と80%引きのスキー靴がある。カベールというメーカーで最上級者向けのものが8000円くらいで売っていた。全傾がきつくてお店の人にも初心者には向いていませんといわれたにも関わらず、安さに負けて買ってしまった。慣れるのに相当苦労した。

 最近でこそ、安売りもそれほど珍しいものではなくなったが、昔はセール期間以外、安売りすることは少なく、三宮の地下街でも年に2回のセールが行われ、全製品が安くなった。そのためお客さんは前日までに試着し、セール当日になると開店と同時に購入するパターンであった。セールの期間は人でごった返すのが毎年のことであった。

 最近では、ヤフーオークションが安売りの場となっており、ここでの購入が多い。ある時、憧れのニコンのF450mmレンズ付きで1万円くらいで売っていたので、即購入した。フィルムカメラなので、すぐに動作確認はできず、36枚撮りポジフィルムで撮影し、現像所に送ったところ、半分以上の露出が狂っていた。露出計に問題あるようで、アイフォンに簡易露出計アプリを入れ、それで露出を測り、マニュアルで撮影していたが面倒なので使っていない。またイタリアのカンタレリというメーカーのスーツが80%引きで出ていたので、これも購入した。スーツというのは通販やオークションで購入するのは最も向いていないもので、サイズ合わせが難しい。それでも同じメーカーのスーツ、ジャケットを持っていたので、大丈夫と思い、購入した。届いたスーツを着ると、丈が相当長く、結局修繕費に相当費用がかかった。こうした安売りに負けて購入し、失敗することが後を絶たない。これはどうも人間の品性に問題があるように思える。

 大阪人の変な癖に、知人に安く買ったことを自慢する癖がある。大阪以外でこんなことをすると、それこそバカにされるが、大阪ではすごいねえと逆に褒められ、羨ましがられる。この背景には、大阪の商売人根性があり、商売の基本は安く仕入れて、高く売ることであり、安く買うことができる才覚があるということになる。昔は安く買うには、店員と交渉することであり、交渉テクニックで安く買うことができる。昔、インドのニューデリーの中心街コンノートプレースで、キャッツアイを安く購入するために30分くらい粘り、最後は日本の平凡パンチをおまけにして半額くらいの値段で買った。帰国後、ネックレスにしようと宝石店に持っていくと、これは人工宝石であると言われ、安く買った値段よりさらに安いものであった。インド商人の方が一枚上だった。物を買った以上にこうした記憶が後まで残る。

2020年4月2日木曜日

弘前レンガ倉庫美術館オープン





 今年の春にオープンする弘前れんが倉庫美術館、館長に三上雅通氏が決まった。三上さんとは弘前ロータリークラブで少し面識があるが、頭の回転が早く、本職の弁護士でも母校の慶應義塾大学の法科大学院で教授をしていたほどの学識を持つだけでなく、こと映画に関する知識は半端でなく、ほとんどオタクと呼べるほどすごい。さらに弘前で行なった奈良智美さんの3回の展覧会でも主要なメンバーとして活躍し、成功に導いた。そうした意味では弘前の知識人の中でも最も新しい美術館の館長にふさわしい人物といえよう。もっと早く内定して欲しかったという不満はあるものの、本当にいい人が館長になってよかった。

 三上さんが中心になって活動しているNPO法人Harappaの活動を見ていると、新美術館の活動がおおよそわかる。ズバリ弘前市民にためにアートを切り口にいろんな活動をする拠点にするというものであろう。弘前市は観光拠点に美術館を考えているが、もちろんそうした要素は重要であるが、さらに弘前市が全国的にもアートの街として有名になり、そこに住む住民も自分の街をアートの街として誇れるようになってほしい。美術館の周囲に古民家や古い家をリノベーションした喫茶店やレストランがあってもいいし、古い映画館がリバイバルしてもいいだろうし、音楽祭や映画祭もいいなあ。また若者が作った陶器や家具を売る店もあってもいいだろうし、自分のデザインした服を売ってもいいだろう。

 2ヶ月ほど前、土手町を歩いていると、中年の外国人女性が地図を片手に困っていた。近くのメガネ屋に入ってその店主に聞いているようだが、英語がわからなく無駄だったようだ。そのまま行き過ぎようと思ったが、途中で引き返し、その女性に何か探しているのか聞くと、英語で書かれた弘前の小物、インテリアショップのマップを見せてくれた。イタリアから来たようだが、日本の小物が可愛いく、弘前でもいろんな店を探しているということだった。探している店は代官町にある店だったが、その日は定休日で、違う店を教えて別れた。わざわざ海外から来て弘前の店を探すのかと思ったが、逆のこと、私がイタリアのミラノに行けば同じように地図片手にミラノの骨董店に行っているかもしれない。

 こうした街を探索するのは楽しいことであり、さらに一軒一軒の店が全国にもここしかない商品がある店であれば、それは個性があり、面白い。これも一種のアートであろう。大きなシッピングモールもいいのだが、こうした個性的な店が集まった街はもっと面白い。

 以前のブログで是非、美術館では野外シネマ上映をしてほしいと述べたが、館長が三上さんであれば、より可能性は高くなった。ただ野外シネマの問題点は近隣の住民に反対される可能性がある。多くの人が集まれば、近くの住む人からすれば騒音になり、迷惑になろう。おしゃれな美術館であれば、“ロシュフォールの恋人たち”や“シェルブールの雨傘”などのフランス映画がいいなあと思っていたが、ふとここは、成瀬巳喜男の“石中先生行状記”はどうだろうか。撮影は地元弘前で行われており、1950年当時の弘前の街を映し出している。美術館近所に住む住民にも懐かしい映画、風景であろう。近くに住んでいる人々が楽しい野外シネマという点ではこうした地元の作品、例えば美空ひばりの“リンゴ園の少女”や“八甲田山”もいいかもしれない。

PS:もうすぐ見られなくなると思うが、“石中先生行状記”がyoutubeで挙げられている。昭和25年当時の弘前の姿が出ていて面白い。杉葉子さんという女優、今風でスタイルが良い。三船敏郎さんもハンサム。藤原釜足さんは親父の旧友で、いい味を出している。昔の土手町界隈はわかるが、他の場所はあまりわからない。第二話の芝居小屋は弘前のものだろうか。教えて欲しい。

https://www.youtube.com/watch?v=1EfbRTMPD_M