2018年6月28日木曜日

西暦2100年の老人

 


 弘前の矯正歯科に関する掲示板で“広瀬じいさん ほんとに大丈夫”と酷評され、ちょっと落ち込んでいるが、よく考えると私も今年で62歳、目は見えず、髪の毛も薄く、どうみてもじいさんである。投稿者の言う通りである。ちょっと前までおじさんと言われ、むっとしていたが、それにも慣れ始めた頃、今度はじいさんと言われる。これからはじいさんとして生きていかなくてはいけないのだろう。

 同級生もみても、自営業、医者以外そろそろ退職になる年齢で、いわゆる隠居の身分となる。平均寿命からすれば、あと17年程が老年期、じいさん期となるのだろう。うちの場合、矯正歯科専門にしているので、下は3歳くらいから上は60歳くらいもいるが、大体30歳くらいが上限で、患者の多くは孫世代である。自分が患者だと思うと、じいさん先生ではなく、もっと若くてハンサムな先生に見てもらいたいだろう。それでもここ数年、患者数も増え、ありがたいことである。

 今の若い世代は百歳まで生きるというが、今年生まれた子供が老人になる西暦2100年ころは、どうなっているのだろうか。たぶんIPS細胞の研究が進み、ガン治療の革命的な方法が見つかり、ガンによる死亡は少なくなり、結果的には寿命は延びる。一方、生殖については、発展途上国が消失することから、地球上すべての国で少子化が進行する。そうなると100歳くらいの両親、70歳くらいのその子供、そして40歳くらいの孫、10歳の曾孫という家族構成は普通になり、現行の年金制度は確実に破綻する。おそらく年金生活が送れるのは75歳以降になるし、そこまで普通に働くようになる。

 肉体労働は、しばらくは開発途上国からの出稼ぎ外国人で穴埋めされるだろうが、それもいずれ不可能になり、逆に年配者が農業、生産、建築、介護に参入することになる。当たり前だが老人は体力的に若者に劣るためロボットスーツ、パワースーツなどの活用がキイとなる。農業、建築、生産などさまざまな分野で肉体労働は、いくら自動化が進んでもなくならず、そうかといって若者はもう少し創造的な仕事をしてほしい。そこで人口構成で余っている老人世代が肉体労働に廻される。例えば、ネット社会が進むと、物の購入はすべて通販が主体となり、その配達が大きな問題となる。現状ではトラック運送が主体であるが、早晩、運転手不足となるため、本当の意味で必要なのはリニア新幹線ではなく、血管にあたる輸送専門の真空チューブ列車である。九州から北海道まで真空チューブ輸送網ができれば、運搬は主として県単位のエリアに限定できる。さらに無人輸送車ができれば、もっと下部まで自動的に物資の輸送ができ、町内単位くらいから老人による配達となる。ロボットスーツを着用すれば、冷蔵庫くらいの運搬も一人でできるだろう。

 1930年ころの青森県総覧をみていると、80歳前後でご長寿者として顕彰されているが、今では100歳を越えないと長寿として本に載らない。老人になり体のあちこちがだめになってきても、メガネで視力をカバーするように、ロボットスーツや機械、車の自動化により体力、頭脳の衰えがカバーでき、年寄りが働くのが当たり前の時代が来るかもしれない。その時代では私ごとき60歳はまだまだじいさんとは呼ばれないのだろう、と気休めにしたい。

2018年6月24日日曜日

アジアのGK



アジア最高のGK アル・デアイエ

 世界のサッカーのリーグランキング(2018)によれば、トップはスペインリーグ(リーガエスパニョーラ)で、2位はイングランドリーグ(プレミアリーグ)、3位はブラジルリーグ(カンピオナート・ブラジレイロ.セリエA)、4位にイタリリーグ(セリエA)となり、それ以降はフランス、コロンビア、アルゼンチン、ドイツ、パラグアイ、ロシアとなり、28位に韓国、そして31位に日本のJリーグとなる。実感としてはブラジルリーグよりセリエAの方がランクは上であるように思えるし、ブンデスリーグももっと上のように思える。スペイン、イングランド、イタリア、ドイツが四大リーグと呼ばれ、人気選手が集中している。

 今回のワールドカップに出ている日本選手で言えば(昔所属していた選手も含めて)、四大リーグに所属するのは、スペインには乾、柴崎選手、イングランドには岡崎、吉田、香川選手、イタリアには長友、本田選手、そしてドイツは多く、大迫、原口、宇佐美、武藤、長谷部、酒井選手がいる。酒井宏、川島選手はフランスリーグに所属する。それに比べて今夜対戦するアフリカのセネガルの選手は、スペインリーグには3名、イングランドリーグには7名、イタリアには3名、ドイツには1名と四大リーグに所属する選手数は日本が13名に対して、セネガルは14名と拮抗している。そうした意味では日本のフィールド選手はかなり海外進出が著しい。一方、GKについて言えば、日本の川島永嗣がフランスリーグに所属しているが、セネガルのアルフレッド・ゴメス選手は24歳ながらセリエAでの出場経験も多い。ついでに日本と同じ組の代表GKはというと、ポーランドの二人のGKはそれぞれイタリア、イングランド、コロンビアはイングランドとなっている。うまいなあと思ったコスタリカのナバス選手はイタリア、セリエA、ナイジェリアの19歳のウソボはスペインリーグにいる。

 フィールド選手は、その選手の実力を評価するのは難しく、結局は出場している試合を何度も見て、選手の能力を判断する。そのためにワールドカップは選手にとって最も自己アピールする機会となり、この大会を通してビッグクラブに移籍することも多い。一方、GKは、もちろん試合をみて判断することもあるが、最もGKの重要な能力、セービング能力はGK練習で判断できる。GKコーチは選手の限界を越えるか越えないかのボールを蹴る。速さ、コースなどを加減しながらGK練習を行う。GKを入団させる場合も、必ずGKコーチによるセービング能力を判定する。これまでのGKではとれないような球を簡単にとるようなら、このGKはセービング能力が高いと判断される。もちろんGK能力はセービング能力だけでなく、飛び出し、ポジショニング、最近では足によるボールコントロールもチェックされる。

 東アジア人で四大ビッグクラブでプレイしたGKはいない。もう少し広くワールドカップアジア予選出場国にすると、オマーンのアリ・アル・ハブシが2006-2017年にかけてイングランドのプレミアリーグで活躍した。またオーストラリアのマーク・シュワルツアーも1996年から2016年まで長らくプレミアリーグで活躍した。現在のオーストラリアの代表GKのマシュ・ライオンもプレミアリーグで活躍している。いわゆる黄色人種のアジア人で海外で活躍するのは川島選手くらいのもので、韓国のGKもせいぜいJリーグどまりである。かって日本代表の川口能活選手もイングランドの二部に当たるフットボールリーグのポーツマスFCに入団したが、レギュラー獲得まではいたらず、その後、デンマークのチームに入ったが、十分な活躍ができず、わずか3年あまりで海外でのプレイで終わった。おそらくはライバルであった楢崎正剛の方がヨーロッパのチームには向いていたと思うが。


 フィールドプレイヤーについては、ようやく海外のビッククラブでも活躍できる選手が日本でも現れたが、GKについてはまだまだで、道のりは遠い。平均身長の低いアジア人では優秀なGKはなかなかでてこないが、大リーグの大谷翔平のように身長が193cあって、運動神経抜群な日本人も現れてきているし、また最近では欧米人と国際結婚も多くなっており、そうした子供の中から、ビッグクラブで活躍できるGKが現れてほしい。

2018年6月21日木曜日

逝きし世の面影



 本の中には、ページ数の割に内容を2、3行で要約できるものがある。こうした本は、読むのも早く、新書版であれば2、3時間で読める。逆に中身が濃くて、数ページ読むにずいぶんと時間がかかる本がある。内容が難しいというわけではなく、1ページにある情報が多くて、読み飛ばせないのである。これは著者の資料の多さを物語るものであり、長年のそして膨大な量の資料を用いた本は、内容が濃くなり、読むのに時間がかかる。

 今、読んでいる「逝きし世の面影」(渡辺京一著、平凡社ライブラリー、2005)は、そうした本である。幕末から明治初期に来日した外国人の証言、本から、当時の日本人像を構築した。明治期の外国人が描く日本人の姿は、これまである種の先入観を持って書かれたものであり、どちらかというと眉唾ものとして評価されてきた。例えば、日本人はいつも笑顔で、幸福であると言っても、これは日本人のある一面的な姿で、実際は藩による年貢が多く、過酷な労働に明け暮れ、満足に食事をとれない 地獄のような生活だったとする左翼系歴史学者がいる。こうした考えに対して、著者は多くの外国人が共通して指摘することは、より真実に近いという立場をとる。外国人は道を歩くと野次馬ができ、入浴中の男女が裸のまま出て来て見学する、今では絶対にこうしたことはおこらないが、百五十年前の日本人の好奇心はこれほどだった。

 最近、上京して地下鉄内で家内としゃべっていると、うるさいと注意された。その時はかちんときたが、ネットで調べると電車内は公共の空間であり、勉強する人、寝る人の迷惑にならないように私語を慎むのがマナーであるとの意見が多い。そういえば、東京にいくといつも不思議に思ったのが車内の静音であり、しゃべっているのは外国人ばかりで、日本人は一様にスマホを見ている。こうした空間では大声でなくても普通の会話でもよく耳に入り、気になる。ただこうした現象は東京だけであり、大阪では車内でしゃべる人は多いし、外国の列車内はもっとうるさい。大阪や外国の車内で、隣の夫婦がしゃべっているのをうるさいと注意すると、逆にしかられるだろう。ある意味、電車内では誰一人しゃべらない、しゃべれない無言の空間、これは世界的、明治の日本人から見てもどうも奇妙な状況である。

 「逝きし世の面影」では外国人を虜にする日本の女性、子供、工芸品を様々な資料を用いて説明、解説している。先日、“迷宮グルメ”を見ていると、ミャンマーの電車の中でヒロシが電車に乗るおじさんのアルミ容器に入った弁当を見せてもらっていた。ごはんと魚の炒め物だったが、さらに隣に座る女の子にも弁当見せてと頼んだところ恥ずかしいそうにしながら弁当を見せてくれた。外国人からの要望に親切に答えたのだろう。かわいい仕草である。これを東京の地下鉄でしたらどうだろう。いくらテレビの取材とはいえ、見せてくれる人はいないだろし、おそらく変人扱いあるいは警察を呼ばれるかもしれない。さらに隠し撮りされてツイターで“弁当みせてくれおじさん”で拡散されるかもしれない。明治の日本人もこのミャンマーの人々と似た性分だったのだろう。それでは今の日本人はこうした性分はなくなったのかというと、そうではなかろう。ただマナーとか、実際は一部の人だけの常識が、そうした性分を覆いかくしているのだろう。生きにくい世の中になったものである。私自身は明治の人々の生き方の方が“電車内私語厳禁”よりは好意を持つ。電車内で私語は厳禁であるが、若いアベックのいちゃつきはOK、授乳はダメだが、ノーブラ、超ミニはOK。子供ころ、50年程前までは、赤ちゃんに母乳をあげるシーンは当たり前のことであったが、今やマナー違反になっている。ある所作が不愉快に思う人が多くなっていくとマナー違反となるのだろうが、もっとおおらかであったもよさそうなものだが。ますます窮屈な世になってきた。昔の日本に思いをはせるには、「逝きし世の面影」は名著である。明治百五十年。すでに滅びた日本文明を再検討するにはいい機会かもしれない。

2018年6月17日日曜日

ワールドカップ ロシア


 いよいよワールドカップの開幕である。ロシアということで時差がうまい工合にズレて、夜に番組を見られるのがうれしい。今大会からビデオ判定が大幅に取り入れられ、オーストラリア対フランス戦でもきわどいペナルティーキックやゴールシーンがあったが、皆が納得できる結果となった。特にオーストライリア対フランス戦の2点目は、ゴールライン判定は1cmくらいの微妙な判定で、一度、ゴールポストから跳ね返ったボールが着地後、ゴール外に出てキーパーがキャッチしただけに、これまでの審判の判定では半分以上の確率のノーゴールとなっただろう。公平性の点では優れた方法と言えよう。

 さて日本はどうかというと、ひとえに日本のGKの活躍による。今回のロシア大会のゴールキーパーは、長年日本代表である川島とガンバ大阪の東口、そして若手の柏レイソルズの中村の三人である。ワールドカップ前の強化試合、スイス、ガーナー戦では川島が、パラグアイ戦では東口と中村が出た。川島は軽卒なプレイもあり、あまり安定しておらず、調子はよくない。東口ももっとアピールすべきであったのに、ポジショニングが悪く、パラグアイの中距離のボレーをとれない。あれをとらないと日本代表の正GKには無理だろう。若手の期待の星、中村も2点目は守備の選手をだぶったという不運はあるが、十分にとれる球である。正GKになるためにはビッグプレイが必要なのだが、東口、中村ともそうしたアピールはなかった。ベテランの川島が日本のゴールを守ると思う。川島が23本、ビッグプレイをすれば、例えば1:0といったスコアで、勝つことも考えられるが、そうしたプレイがないと、3戦とも敗戦となろう。

 先月、鹿児島に行く折、羽田空港に待ち合いにいると、元日本代表の川口選手がいた。確か40歳を過ぎていると思うが、現在、SC相模原の一員として鹿児島での試合のために空港にいた。プロファイルでは身長は180cmとなっていたが、立った時を見計らって私(176cm)も立ってみたが、少し高いくらいで180cmには欠けるだろう。私も学生の頃はGKとしては背が低く、ハイボールには苦労したが、日本代表の川口選手の苦労はそんなものではなかろう。すごい選手だと思った。川口選手の特徴は、反射神経が高く、本当に多くのビッグプレイをした。高い球の処理にはやや不安があったが、ペナルティーキックを含めて近距離からのシュートには強く、ボンミスも少ない。


 日本の対戦相手のコロンビア、セネガル、ポーランドであるが、予想では3敗という声が多い。これを21敗、12引き分けで決勝トーナメントにいくのは、すべてGKにかかっている。予選リーグでは点をとられなければ、引き分け、勝ち点1をとれ、3試合で勝ち点3となり、予選突破もありうる。今回のワールドカップでもアイスランドのGKがアルゼンチン、メッシのペナルティーキックを止めるビックプレイをして、引き分けとなった。いい試合で感動した。ワールドカップにはきれいな試合は必要なく、がむしゃらな試合が望まれる。川島選手も是非、ビッグプレイの連発で、緒戦、パラグアイ戦、引き分けになってほしいものだ。(個人的にはそろそろ中村航輔になってほしいが、ワールドカップは荷が重いか)。