2021年9月22日水曜日

矯正歯科医が足りない

 

 以前のブログでは、歯科医も高齢化が進み、あと10年くらいで今の半分くらいになるようなことを書きました。特に専門分野が限定されている場合、例えば、矯正歯科についていえば、数年前まで、矯正歯科のトレーニングを受けて専門開業していた先生は、八戸市に2名、十和田市の1名、青森市に2名、弘前市に2名の計8名いましたが、八戸の先生の一人は亡くなり、青森市の1名の先生は診療の拠点を青森から奥さんが開業している東京に移しました。さらに八戸のもう一人の先生、青森市の一人の先生、十和田市の先生は私と同級生で、あと5年くらいでは引退する可能性があると思いますし、すでに十和田市の先生は半分、リタイヤしています。そうなるとあと10年後には、青森県の矯正歯科専門医院は、八戸市が0名、青森市が0名、弘前市が1名となります。

 

  新しく開業する先生はどうかというと、今のところ、青森市の先生の息子さんが大学矯正歯科学講座で修練し、親の跡を継ぐので、青森市は1名となります。それでも青森県の矯正歯科医は計2名で全く足りません。何とか、こうした事態を回避したいのですが、まず一人前の矯正歯科医を育てるには、歯科大学卒業後、1年の研修医、その後、矯正科の医局に残り、最低6、7年の研修で認定医、さらに数年して専門医の資格を得るとなると、少なくとも卒業後10年以上かかります。この間、給料をもらえればいいのですが、なかなか助教などの職を得るのが難しく、結局、矯正歯科専門医は、全国で29校ある歯科大学で、各校で毎年、2名ずつの先生を出しても、60名くらいで、その多く札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡などの都市部や学校のあるところで開業するので、なかなか青森のような地方に来ることは少ないと思います。

 

 アメリカでは卒業後、3年の専門大学院での修練で、一応、専門医の資格ができるので、日本よりもっと簡単に、専門医の資格を取れます。日本の国立大学歯学部では、矯正歯科講座に入局する条件として、大学院に入ることを求めます。この大学院は簡単に言えば、基礎の講座に行って、研究を行い、その合間に矯正歯科の教育を受けるもので、あくまで、将来の研究者を育てるコースです。教授になるなら、こうした基礎研究もいいのですが、将来矯正歯科の臨床をするのであれば、基礎研究は全く必要ありません。アメリカで矯正歯科の専門医になるためには、歯科大学卒業後、3年の矯正歯科のコース(大学院)に入り、ここで朝から晩まで、厳しい、教育を受けます。大学病院は民間の歯科医院の半分くらいの費用で治療を受けられるために、矯正歯科治療を希望する患者さんも多くいて、矯正歯科を専攻した学生にも多く配当されます。一般的なコースでは、基本的な文献の読破、そこの大学を卒業したOBによる実習などかなりぎっしりしたカリキュラムがあり、ここの集中的に矯正の臨床技術を学びます。学費が大変高く、日本円で毎年500万円から1000万円かかるために、卒業後は、引退した先生のオフィスを買い取り、稼いで、授業料を返却します。あるいは優秀な先生のところで働いて、さらに経験、技術を学びます。青森県の三沢の米軍基地でも卒業したての矯正歯科医が働いていました。軍人は治療費が無料なので、多くの治療ができるためです。

 

 国民が最良の医療を受けられるためには、近くに高度な専門性を持つ先生が必要で、こうした医師不足の状況を考えると、一刻も早く、国立大学歯学部の大学院大学を、法科大学院のような専門職大学院にすべきだと考えます。歯科研修医制度もあまり意味のないものですが、廃止にはならないようなので、少なくとも研究者を養成する大学院大学は、即刻やめて、3年の臨床コースを作るべきで、その後、日本矯正歯科学会の試験に合格すれば認定医、さらに開業、勤務でもう少し経験を積んで、日本矯正歯科専門医機構の専門医に資格を得るようにしたらどうでしょう。現行のシステムでは、卒業後、10年かかるのが、4年ほどで矯正歯科医になれるので、希望者も増えるでしょう。毎年、全国で300名くらいの認定医になってくれないと、全国の矯正治療をカバーできないように思えます。

2021年9月13日月曜日

最近の矯正用ブラケット

 


 サンキンという矯正歯科機材メーカーがあったが、デンツプライという世界的な歯科機材グループの傘下に入り、昨年、突然、提供していた矯正歯科材料の販売を中止した。私のところではサンキンのブラケットをメインにここ二十年以上使っていたので、その影響は大きく、他のメーカーの代替わり品を探したりしたが、ようやく5月頃から日本のトミーインターナショナルが、サンキンの福島にある工場を買取り、ここから製品を販売することになり、何とかなった。医療メーカーというのは、その後ろにユーザーがあり、さらに患者がいるため、単純な経営的な目的で、販売を中止するような事態は問題がある。

 

 デンツプライ社は、収益の多いマウスピース矯正に経営軸を移すために、従来の矯正機材の販売をやめた訳であるが、こうしたユーザー、患者を簡単に裏切る会社の商品を私たち矯正歯科医は今後、買うことはない。さらにいうなら、この会社が新たな矯正治療機材の主力として売り出す「Sure Smile」は、マウスピース矯正を最初に始めたインビザライン社の特許切れの手法を使っただけの商品で、確実に失敗すると思う。従来の矯正治療機材自体は黒字商品であっただけに、矯正治療のことを全く知らないCEOが業績をさらにあげようとデジタル矯正の方向に進めたのだろう。アメリカ型経営の典型的なパターン、つまり大きな利益を得ようとCEOが無茶な経営方法をとり、結果的に黒字の会社を潰すパターンである。こうした例は多い。

 

 サンキンでは、強化コンポジットレジンを材料とした、クリアブラケットという製品をずっと使っていたが、アメリカのGACという会社が開発したOvation Sというセラミックブラケットも販売していた。サファイヤの単結晶に多結晶の強度を加えたポリサファイヤとされ、審美性に優れ、ワイヤーの滑りも良いため、40症例くらいのブラケットを購入して使っていた。ところが実際に使うと、このブラケットはひどい。ブラケットにはウイングと呼ばれる結紮線を結ぶ出っ張りがあるが、この部分が簡単に折れる。ほぼほとんどの症例で折れていて、その度に新しいブラケットに交換するが、また折れる。こうした例は、同じような透明の単結晶セラミックの商品、インスパイアやオームコのラディアンスというブラケットもよく折れた。ただこれらの商品は、最近では丸みを帯びたタイプにしてウィングも太くしたので、前より欠けにくくなった。このOvayion Sも新しいタイプのポリサファイヤブラケットと言われて購入したが、こうした透明のタイプ、サファイヤ系のブラケットは、材料自体に粘りがなく、簡単に折れるようだ。さらに問題があるのが、ウイングが欠け、新しいブラケットに変えようとする時、古いブラケットが綺麗に歯の表面から除去できず、セラミックのベースの一部が歯に残る。セラミックは硬くて、タービンでもなかなか取り切れず、それも大きな問題である。最近、購入した製品では、ひどい失敗製品であった。

 

 インビューやクリアティーなどの白い色がつくタイプのセラミックブラケットではこうしたことがほとんどないため、透明のセラミックブラケットに特有の欠点なのだろう。単結晶のブラケットは、材質はガラスに近く、粘りがなく、簡単にウイングなどが欠ける。最初の単結晶ブラケットができたのが、二十年前以上だったが、その後もその欠点が改善されていないようで、今のままでは実際の治療に使うのはまだまだ無理と思われる。


2021年9月12日日曜日

矯正治療費

 





 矯正治療費は、一体どういう理屈で価格が設定されているか、これは全く根拠がない設定をしているのが現状である。東京ではマルチブラケット装置による治療費の総額は70-100万円くらい、地方では60-80万円くらいであり、都会では地方の1.5倍くらいの治療費となる。その理由として東京ではテナント代、人件費が高く、その分高くなるということである。これは美容院などの料金設定とほぼ似通っている。

 

 一般的には、価格=原価+販売管理費+利益となる。矯正治療で言えば、原価は矯正用材料、とりわけ一人一人で毎回使う消耗品となる。矯正用ワイヤーは高いもので1500円くらいするものもあるが、通常は200円くらいで上下でも400円くらい。結紮線やモジュール、エラスティックなどは合わせても200円くらいであろう。つまり毎回の調整の時の材料費としては600円くらいとなる。他には最初につけるブラケット、チューブ類については、ブラケットは高くて一個1500円くらい、通常は600円程度なので、抜歯ケースで24個、つまり1症例分で15000円くらいとなる。

 

 減価償却となる材料費として、矯正用のプライヤーは結構高く、1本2-3万円くらいかかり、今は感染予防の観点から全て滅菌してセットを組むため、来院患者数分のプライヤーのセットが必要である。私のところでは、ミラー、短針、ピンセット、バードピークプライヤー、スケーラー(プッシャー付)、ホープライヤー、エンドカッター、ピンカッターの8種類が基本セットとなり、これを患者数分用意している。多分、こうしたプライヤーの価格が総額、200万円くらいだが、10年以上は持つ。他には診療チェアー、レントゲン装置、タービンなど機械類の減価償却が年間200万円くらい。他の減価償却費を足しても年間多くて250万円くらい、1日20名の患者、年間で4000名とすると1人あたり、一回分の減価償却費は600円くらいとなる。つまり材料費と減価償却費を合わせて1200円くらいが原価となり、これは地方、都会でもほぼ同じ額となる。

 

 次に、テナント料や給与について、東京は青森の2倍くらいと考えられ、都心では30坪のテナントで、月に50万円、衛生士が二名、受付一名の人件費が月に100万円くらいとなり、これに光熱費など足すと、月の経費は150万円くらいとなる。22日、働くと、一日7万円、20人見るとなると、1人の患者に3500円かかる。矯正治療に2年間、保定に2年間、計35回、来院するとすれば、材料費は5、6万円、経費が12万円となり総額で多くても20万円くらい、これが商品で言うところの原価と販売管理費となる。そしてこれを超える金額が利益となる。

 

 一般歯科医では、一日、二十名の患者をみて、平均治療費は15000円、8時間勤務するとすれば、時給で12000円くらいとなるが、これには材料や経費も含まれ、純粋の技術料の時給はこの半分、6000円くらいとなる。矯正患者について言えば、マルチブラケットの装着時が30分、調整は15分、その他、ブラケットの脱離などのトラブルを含めて、30分+15分×4010時間30分で、技術料の時給で見れば、63000円となる。日本の保険診療の単価が低すぎると言う意見があり、自費診療の場合の時給は、保険診療の倍、一般歯科で130000円、専門医では、さらにその倍の260000円となり、治療費の総額は、それぞれ33万円、46万円となる。

 

 ただここで、問題となるのは、患者数で、アメリカでは1日の患者数が100名を超えるところが多く、衛生士あるいは歯科助手が治療の主体となっている。日本ではこうした大規模な矯正歯科医院は少なく、よくて1日20名くらい、年間で新患数が100名くらいの規模となる。この規模であれば、矯正治療費の総額を50万円くらいにすれば、かなり利益が得られるはずだが、新患数が減れば、勢い治療費を上げなくてはいけない。つまり患者数の少ない、矯正歯科医院では治療費を高くしないと経営が難しく、患者数の多いところでは治療費が高くしなくても経営に余裕がある。

 

 また舌側矯正では、表矯正のように15分の調整では無理で、この3倍以上の調整時間をとる医院が多いので、技術料の時給は3倍くらいとなり、先の計算によれば時給が78万円+原価20万円=100万円が妥当な額となる。一方、私のところでは、装着に2時間、調整に1時間かけて丁寧な治療をしていると言う先生がいるが、私も大学にいるときはこれくらい時間がかかっていたが、慣れればこの時以上に良い治療を短時間でできるようになり、時間がかかる=良い治療とは決してならない。つまり患者の多い矯正歯科医では、材料費も多量に仕入れるので、割引も多く、患者にかかる治療時間も少なく、1人あたりの経費も少なくでき、治療費を減らすことが可能であるが、逆に一般歯科医での矯正治療は、材料費が高く、診療時間が長く、経費も高くなり、診療費を高くしないと利益が出ない。

 

結論として技術料をどこまで算定するかとなるが、さすがに現行の保険制度の技術料は安すぎ、その倍くらいの技術料とすれば、個人的な感想であるが、通常の唇側矯正で、40万円から60万円、舌側矯正で100万円くらいが適正な矯正治療費の価格であると思われる。少なくとも、一般歯科医の矯正治療の臨床レベルが、専門医より高いことはなく、そうした意味では、専門医より高い治療費を設定している歯科医はおかしいが、患者数が少ないと材料費や治療時間もかかり、こうした値段になるのかもしれない。


 インビザラインについては、インビザライン社の技工料は、確か25万円程度であり、この治療法はワイヤー矯正に比べて診療時間が少なく、ワイヤーやモジュールなどの消耗品やブラケット、プライヤーなども必要なく、歯科医院がかかる費用は、ほぼ技工代のみとなる。つまりインビザライン70万円とる歯科医院では、技術料が45万円というわけだが、その根拠を聞きたい。もしインビザラインで治らないケースでは、ワイヤー矯正で治療するなら、その費用として45万円はかかるので根拠となるが、インビザライン以外の治療法をしない場合は、つまり1人の患者に45分以上かけて治療する舌側矯正並みの技術料をとっていることになる。日本でまともな舌側矯正をする技術を持つ先生はせいぜい百名くらいで、それに匹敵するほどのインビザライン の臨床技術を持つのであろうか。ボリすぎであろう。





2021年9月7日火曜日

街角ピアノ 弘前


 家内がピアノを弾くので、NHK BS1で放送している駅ピアノという番組をよく見る。日本でも神戸や横浜、沖縄編を見たが、まさか弘前で撮影するとは思っていなかった。

 

 撮影は確か3日間くらいだったようだが、かなり前から撮影するのでみんな参加するようにという知らせがあったが、これだけの演奏者を集めるのは苦労したであろう。実際、弘前でもピアノをしている人は多いが、こうした駅のピアノで弾くにはかなり勇気が必要で、なかなか演奏しない。特に青森県人はシャイな性格の人が多いので尚更である。それでも番組を見るとうまく構成、編集しており、良い番組となり、また弘前市としては観光アピールができた。

 

 弘前は人口17万人の小さな町であるが、番組でも紹介されていた弘前オペラという素人による団体があり、毎年、今年で50周年になるが、かなり難しいオペラの演目を公演している。また弘前交響楽団もあり、これもプロから見ると、バイオリンやクラリネットなどのメインの楽器奏者は集まっても、交響楽団となるとファゴット、チューバ、コントラバスなどマイナー楽器奏者も必要であり、こうした小さな町では普通、充足できない。それがアマチュアながらオーケストラに必要な楽器奏者がいることはすごいところである。また島口和子さんが主催している弘前バッハアンサンブルは、1985年に創立され、今では本場のドイツに遠征して、そちらでもリサイタルをするほど、レベルの高い集団となっている。番組では弘前は音楽の街として紹介されていて、百石町展示館でも週一くらのペースでピアノリサイタルをしていて、ジャズや邦楽も含めて、音楽活動は盛んである。また知人がしているスイングハットジャズオーケストラというビッグバンドもあり、いろんなところで演奏している。


 うちの家内も幼稚園から小学校2、3年までの3、4年、ピアノを習っていたが、先生が厳しく、だんだん、レッスンを受けるのが苦痛となり、そのまま弾かなくなった。娘二人にも一応は、ピアノを習わせたが、家では全く練習せず、上達しないので、これも2、3年でやめた。その時に買った電子ピアノがあったが、そのうち故障して音が鳴らなくなり、リビングにあるだけとなった。3年ほど前に、ふるさと納税で、カワイの電子ピアノを買った。最近の電子ピアノは、性能もよく、ほぼピアノ並の音が出るので、いっそこの機会にピアノを習ったらと勧めたところ、素直に習う気になって、今では毎週一回、カワイの音楽教室に通っている。もともと音楽の才能があるのか、結構多くの曲を弾けるようになり、楽しんでいる。今はこうした人も多いようで、今回の街角ピアノでも子供の頃、習って、子育てが終わってから再開したという人もいた。

 

 昔は、ヤマハやカワイの音楽教室は、半分、ピアノを買わせる場所でもあり、うちの衛生士のところも娘2人がピアノを習っていたが、楽器屋からしつこく勧められ、グランドピアノを買わされた。費用的なこともあるが、小さなグランドピアノでも8畳の部屋がピアノに占領され、潰れてしまう。東京のようなマンションが多いところでは、グランドピアノを入れることできず、音大に行くような学生も家では、アップライトピアノか電子ピアノということが多いが、弘前のような田舎では家が広く、実はグランドピアノがある家が多い。

 

 ただ今ではほとんどグランドピアノに近い、音質、タッチを持つ電子ピアノもできており、昔ほどグランドピアノを買わせるような雰囲気はなくなった。また今の子供は昔に比べてピアノなど楽器を習う子供が少なく、むしろヒップダンスやスイミングなどを習う子供多く、今後は音楽の町、弘前という名も返上しないといけないかもしれない。

 

 街角ピアノ 弘前のツイッターなどのコメントを見ていると、一度は弘前に遊びに行きたいという声が多く、コンベンション協会やシティープロモーションの努力の結果なのだろう。関係者の目論見通りで、今後ともいろんな方法を利用して観光プロモーションをしてほしい。今回、県外から出張や観光でやってきた奏者がいたが、口々に弘前はいいところだと言っていた。こうした何気ない言葉が、テレビ視聴者にも強く訴えるだろう。


 

2021年9月3日金曜日

日本ーオマーン戦 ワールドカップアジア予選


 昨日のサッカー、日本代表ーオマーン代表とのカタールワールドカップアジア予選には、がっかりした。オマールはFIFAランキングは79位で、欧米のリーグで活躍している選手もおらず、もちろんワールドカップにも出場したことがない。実績だけで言えば、JリーグのJ1とJ3くらいの差があり、いくら何でも引き分けはあっても、負けることはないだろうと考えていた。ところが実際の試合は、むしろオマーン優位に試合が進み、日本には得点の気配すらなかった。客観的に見てもカタールの勝利は当然であった。

 

 グループBには日本、オーストラリア、サウジアラビア、中国、オマーン、ベトナムがあり、上位2チームがワールドカップ出場となる。次回は9/7にアウエイで中国との対戦となり、これに負けるとワールドカップの出場は黄信号となり、森保監督は解任となろう。ただコロナ対策として日本での試合は無観客となったが、他の試合が無観客でするか、この影響も大きい。無観客の試合であれば、ホーム、アウエイの差はかなり小さくなり、これまでのワールドカップ予選の戦い、ホームで勝って、アウエイで負けない方法は取りにくくなる。中国戦では、コロナのために、中国では開催できず、アウエイにも関わらずドーハでの開催となり、これは有利である。

 

 サッカーはチームによる試合であり、どれだけ選手がチームとして練習し、試合をして、チームとしてのコンセプトを作るというのが重要であり、これが監督の使命である。こうした点ではオシム監督など外国人監督は、あくまでチームの中での役割から選手を選び、チームのパーツとして選手に仕事をさせる。ところが近年、ヨーロッパの強豪チームで活躍する選手が増え、今回のオマーン戦に出場した14選手のうち、Jリーグの選手は、GKの権田、DFの酒井、FWの大迫であるが、酒井は昨年までフランスに、大迫もドイツブンデスリーガに所属しており、純粋のJリーグ選手は権田しかいない。過去の日本代表でも、これほど海外リーグでの選手ばかりではなかった。2018年のロシア大会でも56人のjリーグ選手がいたので、今回の日本代表ほどではなかった。

 

 海外組が多くなると、必然的に招集しての練習、試合は難しくなり、これまで以上に監督の能力は必要となる。優れた選手ばかり集めて、チームとしてまとまりがなければ、結果として弱くなる。今回のオマーン戦もこうし海外組がほとんどになったことによるチームとしてのまとまりが欠けていた。以前、海外組が多くなった時に、練習、試合をヨーロッパでやったことがある。こうした方法を取らなければ、なかなかチームとしてのまとまりは取りにくいし、今後、予選リーグを突破するのはかなり難しくなる。

 

 個人的には、1998年のフランス大会から6回連続してワールドカップに出場しているが、そろそろ予選敗退という屈辱を味わうべきだと思う。イタリア代表も1958年と2018年にヨーロッパ予選を敗退しているし、アルゼンチンも1970には南米予選で敗退している。スペインに至っては、1954195819701974年の4度、敗退している。ただこの敗退は、スペイン代表を強くしたようで、1978年以降、11回連続、ワールドカップに出場し、ベスト16が三回、ベスト8が三回、優勝一回の成績となっている。日本もこのあたりで一度、アジア予選で敗退し、日本的なサッカーを模索する必要があるように思える。強豪国は何らかのカラーを持っているのに対して、日本代表はこれだというカラーを持っておらず、もう一度、よく研究した方が良い。一時期、早くて、走るサッカーを目指していたが、いつの間にか、そうした方向性もなくなっている。

 チームとして強くなるためには、監督の強い意志とチームとしての決まりをしっかりすべきであるが、森保監督では少し役不足であり、おそらく次回の中国戦で敗れれば、解任されるであろう。

 


 

矯正歯科医の引退

 



 高校の同級生の多くは65歳になった今、定年となり、年金暮らしをしている。一部の人は、しばらくは関連会社に勤務するにしても、あと2、3年には完全に引退となる、それに比べて医師、歯科医師の同級生は誰1人、引退していない。開業医の多くは、特に引退時期も決めず、病気などで診療ができなくなるまで、診療を続ける場合が多い。あるいは患者が少なくなって、赤字になる場合も診療をやめることがある。私の父も85歳になり、患者も1日に数名しか来なくなった時に診療をやめた。特に旅行などもすることなく、一日中、テレビを見て、ある日、交通事故で88歳で亡くなった。兄も70歳になったが、まだまだ引退する気もなく、死ぬまで歯科医をすると言っている。

 

 どうして医師、歯科医は高齢になっても仕事をするのであろうか。この理由は、ズバリ金である。歯科医院をしていて、従業員がそれほど多くなければ、一日、二十名ほど患者が来れば、月70万円くらいの収入となる。70歳でこれほど収入があれば、そりゃ頑張って働くのが人間の性である。サラリーマンと違い、歯科医、医師とも年金などあってないようなもので、私の場合も国民年金とごくわずかな共済年金しかないので、月7万円くらいである。とてもこの金では暮らせず、働くことになる。

 

 もう一つの理由は、医師、歯科医の多くは、一生のほとんどを自分の仕事だけしてきて、あまり趣味のない先生が多い。引退しても何もすることがないのである。であれば診療をしようということなる。また患者さんから、感謝される職業であり、人の役に立っているという認識は仕事を生きがいとさせる。ただ外科系の先生の多くは、60歳くらいでメスを捨てる場合が多い、時間がかかり、集中力を要する外科手術はできないと思うことと、万一、何かあれば大変だということで手術をしない。歯科も外科的治療の一種であり、細かい仕事と集中力が必要なために70歳くらいで引退するケースが増えてきた。私の父の場合も、70歳くらいから抜歯はあまりしなくなり、さらに神経の治療、歯内療法も嫌がるようになり、もっぱら義歯の治療が中心となってきた。そのため患者数も減少していき、最後は診療所を開けるだけ赤字になり、引退した。

 

 アメリカなどでは大体70歳までにほとんどの歯科医は引退するため、診療所丸ごと、若い先生に売る場合が多い。最近の収支、施設、機材などの減価償却などから値段を決めて、売り出す。もちろん新規に開業するよりはるかに安い費用で開業できるために、若い歯科医はまずこうした歯科医院を購入して、開業する。彼らは歯科大学にかかった学費を早く返すために開業し、ある程度、軌道に乗れば、違うところに開業してもいいし、診療所を改築しても良い。

 

 ところが日本では、どうした訳か、こうした医院の売買はほとんどない。十年ほど前に、日本臨床矯正歯科医会が全国の歯科大学の矯正歯科にいる先生に、矯正歯科医院の継承について尋ねたところ、ほとんどの若い先生は、いくら安くても医院の継承は嫌だ、自分で新しい医院を作るという。実際、私の医院について、若手の先生にタダでもいいので、引き継いで欲しいと頼んだことがあるが断られた。レントゲンや診療台など、買ったばかりで、少なくとも機材だけ2千万円以上、患者も多いので、継承した次の日から収支が望めるが、どうも嫌なのだろう。世の中、面白いことに2000万円、タダであげると言われても、疑ったり、何かあると思い、断る人が案外多い。人生のチャンスはいろんなところに転がっているが、それをうまく利用しない人は多い。

 

 私も現在、70歳頃には引退しようと考えているので、治療期間がかかる小児の矯正治療は、保険適用の口蓋裂患者以外は断っている。また成人の矯正患者については、特に制限を設けずに受け入れているが、これもあと三、四年後には断らないといけないと思う。矯正歯科は1人の患者に少なくとも2年ほど治療期間がかかるために、かなり前もって計画的にやめる必要がある。誰か継承してくれる矯正歯科医がいれば、ただでもいいのでお譲りするのでご連絡ください。



2021年9月2日木曜日

マウスピース型矯正装置

 


 このブログでは、それこそ何度もインビザラインのデメリットを述べてきた。それでもインビザラインをする患者さんが急激に増えており、結果に満足がいかず、訴訟騒ぎになっているケースもよく耳にする。

 

 確かにインビザラインは、治療法も進歩しており、その適用も広がっている。それでも従来のワイヤーを用いた矯正治療法に比べると、まだまだ適用範囲が少なく、個人的に言えば、上下の顎の大きさに問題ない、骨格性要因を有さない、Skeletal Class Iの口元の突出感のない軽度のでこぼこ(叢生)症例と言える。

 

 こうした症例はどれくらいあるかというと、私の診療所では年間130人程度の成人患者が来るが、少し甘い判定で行っても20%以下しかない。他の80%は、インビザラインの適用ではない。

 

 まず10-15%の患者は上下の顎のずれの大きな症例で、その治療のためには手術が必要な外科的矯正症例となる。そして20%は上の歯が出ている上顎前突の症例で、多くのケースでは上の前歯の10mmくらいの後退が必要となる。手術まで必要のない反対咬合の患者は5%くらいで、これは非抜歯で治療が可能なので、インビザラインでも治療できそうである。残りの40%はでこぼこのひどい叢生症例で、多くの患者では口元の突出感がある。上下左右第一小臼歯抜歯の適用となる。

 

 この小臼歯抜歯ケースをインビザラインで治療するか、ワイヤー矯正で治療するかとなる。最近のインビザラインでは個々の歯に突起物をつけてより歯に力がかかるようになっているが、ブラケットにワイヤーから力をかける方法に比べて、樹脂による力はかなり効率が悪い。また歯の移動には、最適力という一番よく動く弱い力があるが、実際には、歯の移動によりかける力を変える必要があり、特にトルクをかけるには大きな力を必要とする。また歯を上下的に動かすにはゴムの着用が絶対に必要となり、こうしたことを考えると、インビザラインの力は矯正用ワイヤーに相当し、当然、同じような結果を得るためには、アタッチメントを何度も変更しないといけないし、ゴムの着用も必要となる、ブラケット自体、今では透明でほとんどわからないものが多くあり、このブラケットとアタッチメントの差はそれほど大きくない。ワイヤーとインビザライン本体のテカリを比較すると、さすがにワイヤーがメタルだと、見た目はインビザラインに軍配があがる。それでも治療期間はワイヤー矯正の方がインビザラインの半分から2/3くらい早い。インビザラインと舌側矯正を比較すると、審美面、仕上がり、期間などすべての面で舌側矯正が勝り、唯一、舌側矯正が負けているのは舌感くらいである。

 

 まず見た目が気になるのであれば、第一選択は舌側矯正であり、費用、治療期間や仕上げが気になるのであれば、通常のワイヤー矯正、唇側矯正であり、少なくとも唇側矯正より安くなければ、インビザラインをするのはオススメしない。ただインビザラインの技工料は確か25万円くらいであり、それにどれだけ歯科医院側が利益を載せるかということになる。もしインビザラインでうまく治療ができない場合は、ワイヤー矯正で治療するという契約であれば、60万円以上とっても問題ないが、ワイヤー矯正はできないという契約で60万円以上取るのは、問題がある。私たち矯正歯科専門医は、無料の再治療や結果保証を考慮した料金を提示しており、再治療はない、結果も保証できない一般歯科医のインビザラインの治療は、少なくとも安くすべきであろう。

 

 新しくできる日本矯正歯科機構専門医の試験を受けたが、こうした専門医を取得しようとするベテランの先生で、インビザラインを積極的にしている先生は1人もいなかった。ワイヤー矯正、舌測、唇側矯正との比較をきちんとした上でで、患者にどの治療法を選択するかを決めるところでの治療をオススメしたい。