2021年9月2日木曜日

マウスピース型矯正装置

 


 このブログでは、それこそ何度もインビザラインのデメリットを述べてきた。それでもインビザラインをする患者さんが急激に増えており、結果に満足がいかず、訴訟騒ぎになっているケースもよく耳にする。

 

 確かにインビザラインは、治療法も進歩しており、その適用も広がっている。それでも従来のワイヤーを用いた矯正治療法に比べると、まだまだ適用範囲が少なく、個人的に言えば、上下の顎の大きさに問題ない、骨格性要因を有さない、Skeletal Class Iの口元の突出感のない軽度のでこぼこ(叢生)症例と言える。

 

 こうした症例はどれくらいあるかというと、私の診療所では年間130人程度の成人患者が来るが、少し甘い判定で行っても20%以下しかない。他の80%は、インビザラインの適用ではない。

 

 まず10-15%の患者は上下の顎のずれの大きな症例で、その治療のためには手術が必要な外科的矯正症例となる。そして20%は上の歯が出ている上顎前突の症例で、多くのケースでは上の前歯の10mmくらいの後退が必要となる。手術まで必要のない反対咬合の患者は5%くらいで、これは非抜歯で治療が可能なので、インビザラインでも治療できそうである。残りの40%はでこぼこのひどい叢生症例で、多くの患者では口元の突出感がある。上下左右第一小臼歯抜歯の適用となる。

 

 この小臼歯抜歯ケースをインビザラインで治療するか、ワイヤー矯正で治療するかとなる。最近のインビザラインでは個々の歯に突起物をつけてより歯に力がかかるようになっているが、ブラケットにワイヤーから力をかける方法に比べて、樹脂による力はかなり効率が悪い。また歯の移動には、最適力という一番よく動く弱い力があるが、実際には、歯の移動によりかける力を変える必要があり、特にトルクをかけるには大きな力を必要とする。また歯を上下的に動かすにはゴムの着用が絶対に必要となり、こうしたことを考えると、インビザラインの力は矯正用ワイヤーに相当し、当然、同じような結果を得るためには、アタッチメントを何度も変更しないといけないし、ゴムの着用も必要となる、ブラケット自体、今では透明でほとんどわからないものが多くあり、このブラケットとアタッチメントの差はそれほど大きくない。ワイヤーとインビザライン本体のテカリを比較すると、さすがにワイヤーがメタルだと、見た目はインビザラインに軍配があがる。それでも治療期間はワイヤー矯正の方がインビザラインの半分から2/3くらい早い。インビザラインと舌側矯正を比較すると、審美面、仕上がり、期間などすべての面で舌側矯正が勝り、唯一、舌側矯正が負けているのは舌感くらいである。

 

 まず見た目が気になるのであれば、第一選択は舌側矯正であり、費用、治療期間や仕上げが気になるのであれば、通常のワイヤー矯正、唇側矯正であり、少なくとも唇側矯正より安くなければ、インビザラインをするのはオススメしない。ただインビザラインの技工料は確か25万円くらいであり、それにどれだけ歯科医院側が利益を載せるかということになる。もしインビザラインでうまく治療ができない場合は、ワイヤー矯正で治療するという契約であれば、60万円以上とっても問題ないが、ワイヤー矯正はできないという契約で60万円以上取るのは、問題がある。私たち矯正歯科専門医は、無料の再治療や結果保証を考慮した料金を提示しており、再治療はない、結果も保証できない一般歯科医のインビザラインの治療は、少なくとも安くすべきであろう。

 

 新しくできる日本矯正歯科機構専門医の試験を受けたが、こうした専門医を取得しようとするベテランの先生で、インビザラインを積極的にしている先生は1人もいなかった。ワイヤー矯正、舌測、唇側矯正との比較をきちんとした上でで、患者にどの治療法を選択するかを決めるところでの治療をオススメしたい。


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