2017年8月24日木曜日

ブラタモリ十和田湖・奥入瀬


 青森県の十和田湖は、昔は青森観光の一大メッカで、修学旅行や団体旅行で多くの観光客が押し掛け、有名な乙女の像あたりは混雑し、休屋には次から次へと大型バスが来ていた。私の高校の東北修学旅行もここに来て、奥入瀬渓谷を散策した。

 ところが最近では、観光客が激減し、十和田湖周辺の多くの旅館、ホテル、商店が廃業し、さらに遊覧船の廃止などの話もある。ここ十年以上、十和田湖には行ったことはないが、九州に住む姉と大阪にいる母が数年前に弘前に来た時
に、ついでに弘前からバスで十和田湖に行き、十和田ホテルに泊まった。その時のバスも乗客は姉と母の二人で、十和田湖もガラガラだったようである。古くなった遊覧船や休業した旅館がそのまま放棄されており、皮肉として、いっそ廃墟観光にしたらという声もある。

 もちろん、そうした状況に十和田湖周辺の観光業者や宿泊所も手をこまねいているわけではなく、多くの取り組みをしているし、十和田市や青森県も協力している。そうした中、久しぶりの朗報は、ブラタモリ十和田湖である。通常、ブラタモリは二話分を一緒に撮影するので、ブラタモリ弘前(78日)に来た時に十和田湖も撮影したのだろう。ブラタモリ弘前で、タモリさんが「昨日は、吉永小百合さんが泊まった部屋で、ふとんの臭いをかいでいた」と発言していたが、これは十和田ホテルのことのようである。弘前の撮影は530日だったので、その前日に十和田湖で撮影し、十和田ホテルに泊まって、朝早く、弘前での撮影を行ったのだろう。

 ブラタモリ十和田湖の放送予定日は、92日の7時半からで、NHKの番組予告を見ていると、地形学的な考察を行うようで、秋田大学の地形学の教授が案内するようである。弘前編が地形学的な内容がほとんどなかっただけに、地形、地理的ファンは楽しみな内容であろう。これを契機に多くの県外の人々が十和田湖のことに興味を持ち、来てくれるとありがたい。

 ところが、地元、十和田湖ではさぞかし盛り上がっていると思い、ネットで調べると、まず十和田市観光協会のホームページ「ゆるりらtowada」の最新ニュースは第60回十和田市花火大会開催(916日)、ゆるりら十和田奥入瀬渓流360VRサイト、あおもり10市大祭典 in 十和田(923日)、高校生ボランティアまちなかガイド(923日)、十和田市秋祭り(98日)となっており、十和田市観光協会のフェイスブックを見ると、まず奥入瀬渓流エコツーリズムプロジェクト(1026日)、十和田市夏祭り花火大会(916日)があるだけである。どうしたことかブラタモリ十和田湖のことは書かれていない。さらに探していくと、ようやく十和田市地域おこし協力隊(十和田湖)のフェイスブックに「テレビ情報 NHKのブラタモリで十和田湖・奥入瀬が登場します」と載っていて、さびしく7人のいいね!マークがついている。ツイッター上ではブラタモリ十和田湖もそこそこ盛り上がっているが、どうも十和田市、十和田湖とも全く関心がないようである。もちろん宣伝用のポスターを製作したということもなさそうだし、関連事業をするわけではない。

 撮影から3か月近くなっており、十和田市の観光協会は知らない、あるいは時間がなかったという言い訳はできない。要するに折角のビッグチャンスを何もしないまま逃すということである。きびしい言い方だが、これでは十和田湖観光客が激減し、大変困っている、是非、観光に来てくれと言っても、全く説得力はない。まずはどんなチャンスでもいいから、それをどん欲に、集客に繋げるような努力をすべきである。観光課の人は、PR効果あるいは広告換算という概念をよく理解してほしいものである。よく火曜サプライズなどでアポなしレストラン訪問で撮影を断る店がある。確かに放送されると常連さんに迷惑をかけるため、長い目で見て、撮影を断るのはわかる。ただ客足が少なく、経営が厳しい店なのに撮影を断るのは、ただ面倒なだけなのであろう。十和田市の対応はこれに似ている。もちろん地元ではブラタモリ十和田湖の放送を楽しみにしているし、それに関連した取り組みをすでに行っているかもしれない。ただ私が知らないだけかもしれないが、それでもこれだけ探しても、見つからないのは、少なくとも地元から全国に発信しているとは見えない。

2017年8月23日水曜日

延吉からの米山留学生


 米山奨学生というのは、日本のロータリークラブ独自の奨学金制度で、主としてアジアの若者で日本の大学、大学院に行く学生を支援するものである。外国人学生の対する奨学金制度としては、民間最大の事業であり、平成27年度も720名の学生に奨学金が支給されている。今年の弘前ロータリークラブが世話する奨学生は、中国の吉林省延辺朝鮮族自治区の延吉市から来た優秀な大学院生である。これまで数人の学生の世話をしてきたが、延吉からの留学生は二人目であった。

 今年の留学生は子供の頃、父親が弘前大学に留学し、3年間、弘前の小学校、中学校にいたため、日本語(津軽弁なまり)が驚くほどでき、全く日本人と区別できないレベルである。よく語学では早い時期に学ばないといくら勉強してもネイティブ並みの語学力にならないというが、本当のようである。

 以前、鹿児島大学にいた時に、これも中国からの留学生(女性)がいて、その子供は小学3年生から6年生まで日本の学校に行っていた。会うと全く日本の小学生と見分けがつかないほど日本語がうまかった。その後、両親と一緒にアメリカの大学に進み、今はアメリカのシアトルに住んでいる。彼女に聞くと、今は娘さんも大学を卒業して、すっかりアメリカ人になったようだが、日本のアニメや音楽で好きで、アメリカに移ってからもテレビやビデオを見ていたため、今でも日本語が得意という。もちろん、学校、社会でも英語が中心なので、英語が最も得意だが、次に日本語、そして中国語がもっともできない。日系アメリカ人の場合でも一世は、日本語と少しの英語、二世では英語が主で、少し日本語が、そして三世ともなると日本語はほとんどしゃべれないのが一般的である。

 ところが今回の中国からの学生は同郷の学生と一緒にうちに来たが、しゃべっているのを聞くと、お互いに朝鮮語でしゃべっている。先祖を聞くと、もう数世代前から朝鮮から中国に移り住んだとようだ。通常であれば、朝鮮語は家でしゃべっていても、あまり得意でない。ところがこの留学生に聞くと朝鮮語>中国語>日本語の順序で得意とのこと。いずれもほぼネイティブなレベルであるが、細かく聞くと、中国語は東北部の訛り、朝鮮語は北朝鮮の訛り、日本語は津軽弁の訛りが少しあるようだ。ちなみに卓球の福原愛の中国語は完璧な東北部訛りの中国語でみごとと言っていた。

 どうして朝鮮語を忘れないのかと尋ねたところ、延吉市では、学校も中国語中心のところと、朝鮮語中心の学校があり、また町のレストランや商店も朝鮮語が第一言語という。すなわち中国語の学校に行く以外がすべて朝鮮語の社会なのである。完全に朝鮮の社会をそのまま延吉市では残しているようである。そういえば、アメリカには多くの韓国人が移住するが、閉鎖的で全米の各地のコリアンタウンを形成し、そこでは朝鮮語がそのまま残っていたりする。昔は全米各地や南米でも多くの日本人街があったが、二世、三世となるうちに次第に日本語世代が減り、あるいは現地に馴染んでいったため、日本人街も少なくなった。一方、朝鮮人あるいは中国人は、日本以上に同族で集まって生活する傾向が強いようだ。こうして見ると日本人は民族的にはそれほど強固な集団ではなく、割合、他の民族とも混じりやすいのかもしれない。

2017年8月20日日曜日

プロの凄さ


東奥日報の書評




 ブラタモリ弘前の製作に少し携わったことは、すでにこのブログで述べた。こちらとしては弘前のよさを宣伝すべく、プロデユーサーに色々な提案をしたが、ことごとく採用されず、残念なところも多い番組となった。おそらく地学、地理学的なコメントを求められた弘前大学の先生は、専門分野の内容はほとんどカットされ、さぞかしがっかりしたことであろう。ツイッター上の番組コメントでも、辛口の採点をしている人も結構いた。

 ただ実際の視聴率はというと14.3%で、名古屋が13.9%11.9%、前回のさいたま市が14.2%、次の回の秩父が13.1%であり、これらに比べても大健闘である。番組プロデューサーも喜んでいた。おそらくは私や弘前大学の先生の意見に沿って、番組を作ったならば、あまりに独りよがりで、視聴率も低かったと思われるし、一部のマニアには喜ばれても、一般の視聴者からは支持されなかっただろう。プロというのは、こうした数値をきちんととれる人のことを言い、テレビの世界ではずばり視聴率を取れる制作者となる。いくら能書きを垂れても、数値が取れなければプロとしては失格である。

 私の例で言えば、今年の八月に「須藤かく —日系アメリカ人最初の女医—」を発刊した。東奥日報や陸奥新報でも取り上げてくれたが、販売はおもわしくない。これまで4冊、本を出版したが、この本が最も売れ行きが悪い。最初の本、「明治二年弘前絵図」は出版社を通さずの個人で紀伊国屋書店弘前店だけで発売したが、1か月程で500冊は完売し、次の「新編明治二年弘前絵図」500部はすぐに完売で、その後、二版として500部を追加印刷したが、これも2か月ほどで完売した。そして2年前に「津軽人物グラフィティー」を発刊し、これも500部発行し、ある程度は出版早々に売れたが、その後、販売は思わしくなく、2年経っても在庫がある。前回の本は定価が1800円というのが高すぎると感じ、今回はかなり安く800円にした。ところが売り上げは前よりさらに悪くなっている。値段ではなく、内容が問題なのであろう。本人はそこそこ書けていると思っても、売れないということは内容が読者に面白くないからであろう。いろいろと反省点の多い作品となったが、これもアマチュアのせいであろう。

 こういうことは世にはごまんとあり、歯科医院でも院長自身は治療に自信を持っていても、患者が来ないということは治療そのものに問題があるのであり、料理屋でもそう、美容院でもそう、不動産屋でもそうである。数値だけではないというのは、その通りであるが、そうかと言って数値は関係ないということはない。プロというのは、そうした数値も含めてきっちりと結果を出せる人のことを言うのであろう。

 こうした才能を持つ人は、極めて限られており、特に文学の世界では一冊ごとに評価されるため、継続して数値を取るのは非常に難しい。漫画「響」はそうしたシビアな文学界を描いているが、仮に小説が1500円、10000部売れたとしても印税が10%とすると、150万円しかならない。通常、完売することはなく、また印税ももっと少なくなるため、文学だけで生活することは厳しい。私のような自費出版のような場合は、絶対に黒字になることはなく、赤字がどれだけ少ないかが成功の目安になる。ノンフィクション作家の場合は、取材に多くの時間と金をかけており、そうかといって出版数は限られるため、講演料や雑誌の原稿料がないと生活はかなりきつい。自費出版では勝手な内容で掛けるが、プロの作家はまず企画を出版社に持ち込み、それを読者に読まれる、売れる作品にレファインして、売り出す。そこにはまたプロの編集者がいて、修正させる。今回の私の作品でも、わずが400部の出版で、それも数十部しか売れないとは、私の文才のなさであり、また完全の企画ミスなのであろう。プロの編集者であれば、この内容では売れないことはすぐにわかったことであろう。

* ブラタモリ弘前でタモリさんがフアンである吉永小百合さんが泊まった部屋と言っていたのは、十和田湖の十和田ホテルのようです。先に十和田湖で撮影し、十和田ホテルに泊まって、次の日に弘前で撮影したようです。弘前で一泊したかわかりませんが、クルーは弘前パークホテルに泊まり、次の日も追加撮影していました。相も変わらず、青森県民の対応の遅さに歯がゆいばかりです。十和田湖観光も凋落している時期に、ブラタモリで十和田湖を取り上げられるのは大きなチャンスなのですが、十和田湖、十和田市の観光協会も番組のことを一切取り上げていません。もちろんポスターもないようです。がんばれ十和田湖!

2017年8月16日水曜日

未来の歯科医療


 私のところでは、開業以来(1995)、マルチブラケット装置では、大臼歯はバンド、それ以外の小臼歯、前歯はブラケットを使っていた。それがここ数年、大臼歯も含めてすべての歯にブラケットをつけるケースが多くなった。それまで第一大臼歯の90%は何らかの処置、インレーやレジン充填がなされており、充填用レジンとブラケット用接着レジンの相性もあり、なかなかボンディングできなかった。ところが最近は第一大臼歯にウ蝕がない場合が多くなり、大きな大臼歯用ブラケットを使うことが多くなった。

 さらに矯正歯科に来るのが、生まれて初めてという患者さんもここ2、3年現れるようになった。比較的、全国的にウ蝕の多い青森県でも、このような状況であり、東京などの都会では、中高生の半分くらいはもはやウ蝕はない。こうした子供達は大きくなっても、ウ蝕ができることはなく、ようやく歯科治療が必要となるのは歯周疾患が問題化する中年以降であり、それまでの主とした歯科経験は矯正歯科ということになる。

 こうしたことは欧米でも以前からそうであり、未成人では医療保険でカバーされている歯科健診は受けるが、それ以上の治療は矯正治療以外、ほとんどない状況になっている。つまり歯科健診以外で、未成年者、学生が実際に歯科治療を受けるのは矯正歯科だけとなる。大雑把な個人的な推論で言えば、今後、230年後には、歯科健診を除いた実際の歯科治療の総数は今の半分以下になろうし、処置のグレードもより小さな、簡単なものが多くなろう。現在、8020運動はほぼ達成され、今度はさらに、ほとんどの人が80歳になっても20-28の歯があるだろう。こうした時代になれば、補綴、エンド処置は激減し、保存処置、歯周治療が残るだけだろう。

 現在、歯科医師国家試験合格者数、つまり新らしい歯科医数は年間2000人、私たちの頃は3000人を越えていたから、ここ30年ほどで2/3くらいになっている。実際の患者数、処置数が230年後に半分になるのであれば、さらに歯科医師数も半分でいいわけで、合格者数をさらに減らして、1000名以下にすべきであろう。歯科医師会は診療報酬の増加を常に叫んでいるが、その前に疾患そのものが減少し、歯科医同士で少ないパイを取合う競争がますます激化するであろう。実際、弘前で開業した22年前は、年配の先生を中心に90%くらいが紹介患者であったが、最近では50%以下で、患者からの紹介が多い。他の矯正歯科医への紹介が多くなったことによるが、若い歯科医では紹介しないで、自分のところで取りあえずやってみるというところも多い。患者数が少なくて、紹介する余裕がないからであろう。

 最近では歯科疾患と全身疾患を結びつける傾向がある。歯周疾患が心臓疾患、脳血管疾患や糖尿病と関係するというものだが、こうした研究をするドクターには悪いが、私自身あまり信じていない。統計的な関係性はあると思うが、例えば歯周疾患— ○○○—○○○—○○○—心臓疾患というように間のファクターが多く、逆に歯周疾患を治療しても変化は少ないと思われる。う蝕が少なくなったころから、新たな歯科治療の必要性として日本歯科医師会が大規模に提唱したものである。ただ食欲、食事は人間にとって非常に大事なものであり、歯の存在は大きい。今後は、死ぬまで自分の口で食べたと思う人は多く、そうした意味では、老年期の歯科医療にこそ、未来の歯科の主力となるのであろう。