2017年8月23日水曜日

延吉からの米山留学生


 米山奨学生というのは、日本のロータリークラブ独自の奨学金制度で、主としてアジアの若者で日本の大学、大学院に行く学生を支援するものである。外国人学生の対する奨学金制度としては、民間最大の事業であり、平成27年度も720名の学生に奨学金が支給されている。今年の弘前ロータリークラブが世話する奨学生は、中国の吉林省延辺朝鮮族自治区の延吉市から来た優秀な大学院生である。これまで数人の学生の世話をしてきたが、延吉からの留学生は二人目であった。

 今年の留学生は子供の頃、父親が弘前大学に留学し、3年間、弘前の小学校、中学校にいたため、日本語(津軽弁なまり)が驚くほどでき、全く日本人と区別できないレベルである。よく語学では早い時期に学ばないといくら勉強してもネイティブ並みの語学力にならないというが、本当のようである。

 以前、鹿児島大学にいた時に、これも中国からの留学生(女性)がいて、その子供は小学3年生から6年生まで日本の学校に行っていた。会うと全く日本の小学生と見分けがつかないほど日本語がうまかった。その後、両親と一緒にアメリカの大学に進み、今はアメリカのシアトルに住んでいる。彼女に聞くと、今は娘さんも大学を卒業して、すっかりアメリカ人になったようだが、日本のアニメや音楽で好きで、アメリカに移ってからもテレビやビデオを見ていたため、今でも日本語が得意という。もちろん、学校、社会でも英語が中心なので、英語が最も得意だが、次に日本語、そして中国語がもっともできない。日系アメリカ人の場合でも一世は、日本語と少しの英語、二世では英語が主で、少し日本語が、そして三世ともなると日本語はほとんどしゃべれないのが一般的である。

 ところが今回の中国からの学生は同郷の学生と一緒にうちに来たが、しゃべっているのを聞くと、お互いに朝鮮語でしゃべっている。先祖を聞くと、もう数世代前から朝鮮から中国に移り住んだとようだ。通常であれば、朝鮮語は家でしゃべっていても、あまり得意でない。ところがこの留学生に聞くと朝鮮語>中国語>日本語の順序で得意とのこと。いずれもほぼネイティブなレベルであるが、細かく聞くと、中国語は東北部の訛り、朝鮮語は北朝鮮の訛り、日本語は津軽弁の訛りが少しあるようだ。ちなみに卓球の福原愛の中国語は完璧な東北部訛りの中国語でみごとと言っていた。

 どうして朝鮮語を忘れないのかと尋ねたところ、延吉市では、学校も中国語中心のところと、朝鮮語中心の学校があり、また町のレストランや商店も朝鮮語が第一言語という。すなわち中国語の学校に行く以外がすべて朝鮮語の社会なのである。完全に朝鮮の社会をそのまま延吉市では残しているようである。そういえば、アメリカには多くの韓国人が移住するが、閉鎖的で全米の各地のコリアンタウンを形成し、そこでは朝鮮語がそのまま残っていたりする。昔は全米各地や南米でも多くの日本人街があったが、二世、三世となるうちに次第に日本語世代が減り、あるいは現地に馴染んでいったため、日本人街も少なくなった。一方、朝鮮人あるいは中国人は、日本以上に同族で集まって生活する傾向が強いようだ。こうして見ると日本人は民族的にはそれほど強固な集団ではなく、割合、他の民族とも混じりやすいのかもしれない。

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