2017年8月20日日曜日

プロの凄さ


東奥日報の書評




 ブラタモリ弘前の製作に少し携わったことは、すでにこのブログで述べた。こちらとしては弘前のよさを宣伝すべく、プロデユーサーに色々な提案をしたが、ことごとく採用されず、残念なところも多い番組となった。おそらく地学、地理学的なコメントを求められた弘前大学の先生は、専門分野の内容はほとんどカットされ、さぞかしがっかりしたことであろう。ツイッター上の番組コメントでも、辛口の採点をしている人も結構いた。

 ただ実際の視聴率はというと14.3%で、名古屋が13.9%11.9%、前回のさいたま市が14.2%、次の回の秩父が13.1%であり、これらに比べても大健闘である。番組プロデューサーも喜んでいた。おそらくは私や弘前大学の先生の意見に沿って、番組を作ったならば、あまりに独りよがりで、視聴率も低かったと思われるし、一部のマニアには喜ばれても、一般の視聴者からは支持されなかっただろう。プロというのは、こうした数値をきちんととれる人のことを言い、テレビの世界ではずばり視聴率を取れる制作者となる。いくら能書きを垂れても、数値が取れなければプロとしては失格である。

 私の例で言えば、今年の八月に「須藤かく —日系アメリカ人最初の女医—」を発刊した。東奥日報や陸奥新報でも取り上げてくれたが、販売はおもわしくない。これまで4冊、本を出版したが、この本が最も売れ行きが悪い。最初の本、「明治二年弘前絵図」は出版社を通さずの個人で紀伊国屋書店弘前店だけで発売したが、1か月程で500冊は完売し、次の「新編明治二年弘前絵図」500部はすぐに完売で、その後、二版として500部を追加印刷したが、これも2か月ほどで完売した。そして2年前に「津軽人物グラフィティー」を発刊し、これも500部発行し、ある程度は出版早々に売れたが、その後、販売は思わしくなく、2年経っても在庫がある。前回の本は定価が1800円というのが高すぎると感じ、今回はかなり安く800円にした。ところが売り上げは前よりさらに悪くなっている。値段ではなく、内容が問題なのであろう。本人はそこそこ書けていると思っても、売れないということは内容が読者に面白くないからであろう。いろいろと反省点の多い作品となったが、これもアマチュアのせいであろう。

 こういうことは世にはごまんとあり、歯科医院でも院長自身は治療に自信を持っていても、患者が来ないということは治療そのものに問題があるのであり、料理屋でもそう、美容院でもそう、不動産屋でもそうである。数値だけではないというのは、その通りであるが、そうかと言って数値は関係ないということはない。プロというのは、そうした数値も含めてきっちりと結果を出せる人のことを言うのであろう。

 こうした才能を持つ人は、極めて限られており、特に文学の世界では一冊ごとに評価されるため、継続して数値を取るのは非常に難しい。漫画「響」はそうしたシビアな文学界を描いているが、仮に小説が1500円、10000部売れたとしても印税が10%とすると、150万円しかならない。通常、完売することはなく、また印税ももっと少なくなるため、文学だけで生活することは厳しい。私のような自費出版のような場合は、絶対に黒字になることはなく、赤字がどれだけ少ないかが成功の目安になる。ノンフィクション作家の場合は、取材に多くの時間と金をかけており、そうかといって出版数は限られるため、講演料や雑誌の原稿料がないと生活はかなりきつい。自費出版では勝手な内容で掛けるが、プロの作家はまず企画を出版社に持ち込み、それを読者に読まれる、売れる作品にレファインして、売り出す。そこにはまたプロの編集者がいて、修正させる。今回の私の作品でも、わずが400部の出版で、それも数十部しか売れないとは、私の文才のなさであり、また完全の企画ミスなのであろう。プロの編集者であれば、この内容では売れないことはすぐにわかったことであろう。

* ブラタモリ弘前でタモリさんがフアンである吉永小百合さんが泊まった部屋と言っていたのは、十和田湖の十和田ホテルのようです。先に十和田湖で撮影し、十和田ホテルに泊まって、次の日に弘前で撮影したようです。弘前で一泊したかわかりませんが、クルーは弘前パークホテルに泊まり、次の日も追加撮影していました。相も変わらず、青森県民の対応の遅さに歯がゆいばかりです。十和田湖観光も凋落している時期に、ブラタモリで十和田湖を取り上げられるのは大きなチャンスなのですが、十和田湖、十和田市の観光協会も番組のことを一切取り上げていません。もちろんポスターもないようです。がんばれ十和田湖!

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