2021年11月23日火曜日

もし日本共産党が政権をとったら

 


日本の知識人と呼ばれる人々は、共産党などの左翼政党を支持する人が多い。政権与党、自由民主党の政策やスキャンダルに過剰な反応を起こし、日本の自由を侵すものだと批判する。例えば、日本学術会議の問題では、推薦した会員候補の一部を政府が任命しなかったということで、学問の自由を侵害する大きな問題だと騒ぎを起こしている。他にも安倍首相時代の加計学園をめぐる問題、獣医学部新設に便宜を図った問題で、民間人と政府の癒着を激しく攻撃している。

 

 こうした左翼、それを支持するマスコミ、学者は、基本的にはマルクス・レーニン主義による共産主義を支持しているが、上記のような問題は、中国、北朝鮮や旧ソビエトのような社会主義国では起こらなかったのかというと、日本以上に露骨に、規模を大きく行われており、さらにそれに対する批判も完全に禁止される。つまり日本の左翼が支持する社会主義国では、彼らが批判する日本の政治をはるかに上回る問題が日常的に起きている。

 

 もちろん左翼を支持する人々は、中国、北朝鮮、旧ソビエトの社会主義は間違ったものであり、我々が目指す社会主義国はそうしたものと全く違うものだというだろう。ただ彼らが目指すような社会主義国が実際に存在したかというと、100年以上の社会主義の歴史を見ても、多くの社会主義国は最終的には一党独裁、全体主義となり、個人の自由を制限する方向性を持つ。つまりこれまで100年の社会主義理論の実践経験から、オリジナルのマルクス・レーニン主義、共産主義自体に内包する大きな問題ということになる。

 

 例えば、立教大学の井上周八名誉教授は、中国の文化大革命を支持し、北朝鮮を死ぬまで社会主義による理想郷とし、また北朝鮮による拉致事件をでっち上げと否定した。こうした学者は、最近ではさすがに少なくはなっているが、それでも1970年代、中国の文化大革命を支持した学者は驚くほど多く、むしろ中国の当時の実情をしっかりと把握していた学者は少なかった。その後も左派とよばれる学者では、共産主義、社会主義体制に強い憧れを持つ者は多い。

 

 こうした前提で、日本共産党が、日本の政権をとり、議席数で過半数、あるいは2/3以上の議席を取った場合を考える。まず彼らは、悲願である天皇制の解体を目指すであろう。皇居始め、天皇家の資産を全て没収し、完全に民間人にすることで、天皇制を廃止する。戦後の華族廃止した方法で進めていく。現在の秋篠宮家問題のようなゴシップが続くと、天皇家に対する国民の批判も高まり、将来的には天皇家の廃止も案外すんなり出来るかもしれない。日本共産党の綱領には、アメリカからの経済的、軍事的依存からの離脱と、第九条の完全実施、自衛隊の解消が書かれており、軍事同盟がなく、軍隊を持たない国家を目指している。もし中国から攻められれば、話し合いで解決すると言うのだろう。このことは自動的に中国への隷属を意味する。すなわち、日本から米軍が撤退し、経済関係も悪化すれば、その間隙に入るのは、間違いなく中国であり、そのまま中国の傀儡国家になっていくのだろう。

 

そしてこれも彼らの最重要課題、自衛隊の廃止と日米安保条約の破棄である。ただ軍隊は、旧ソビエト、中国、北朝鮮の例を持ち出すまでもなく、権力維持のために必要であり、何か問題があれば、強力な軍隊を出動して鎮圧する。そのため、自衛隊は残すか、逆に日本軍として、より強力な存在に格上げする可能性もある。もちろん日米安保条約の破棄は、隣国、中国の望むところであり、急速に日中間の距離が近くなる。日米安保条約に代わって、アメリカからの脅威に対する日中安保条約が結ばれ、米軍基地の後に中国軍が進駐する可能性がある。こうした動きは、中国の傀儡国となる第一歩であり、政権が長期化すれば、自由選挙の廃止、学問の自由の廃止など、現在の中国のような状況となっていく。

 

 もちろんこんなことが実際に起こることはないだろうが、それでも日本共産党は存在するし、それを支持する人がいるわけで、彼らは、日本共産党はこれまで地球上に存在した共産党とは全く違う、自民党政権下の日本以上に自由に発言できる政党であると主張するだろう。ただこれは「共産党」という概念とは別物の政党であり、論理的に考えるなら、共産党を名乗るメリットは少ない。党名を変えるべきであり、それをしない限り、この党を信頼することはできないし、支持する人々も信頼できない。

 

英国共産党党員775人、フランス共産党20000人、ドイツ共産党 解散、イタリア共産党 解党、スペイン共産党 党員35000人、アメリカ共産党 党員 5000-10000人、に対して、日本共産党 党員270.000人で、衆議院で10名、参議院で13名の議席を持ち、資本主義国の中で最大の勢力である。ある意味、日本は一種の理想的な社会主義国なのかもしれない。





2021年11月19日金曜日

私がアライナー矯正をしない理由



世界的にインビザラインなどのアライナー矯正、マウスピース矯正が流行っている。インビザライン社によるとすでに1000万人以上の人々がインビザラインによる治療を行なっているという。インビザラインによる治療を進める先生方は、将来的には今のワイヤー矯正に代わってインビザランによる治療が主流になると宣言している。ただ矯正治療の主たる治療者に当たる矯正歯科専門医、あるいは日本矯正歯科学会は、こうしたアライナー治療に関しては否定的で、将来的にもワイヤー矯正の地位は揺るがないと考えている。

 

歯を動かすためには、弱い力を持続的に歯に伝える必要がある。ワイヤー矯正では、歯に接着したブラケットにワイヤーやゴムを介して歯を動かす力を伝える。ブラケットは歯の唇側、あるいは舌側につけるため、歯に対する力としては、前後、上下はもちろん、四角形のスロットと角ワイヤーによるトルクという二次元的な力をかけることもできる。理論的にはゴムを併用すれば、ほとんどの方向に歯の移動は可能となる。こうしたシステムはアメリカの矯正歯科医、アングルが考案したもので、すでに100年以上の歴史を持ち、多くの論文でその欠点、利点などが解明されており、トータルでいえば一億人以上の患者で使用したと思われる。

 

一方、アライナー矯正について、マウスピースのようなものを咬ませて歯を動かす方法はすでに50年以上の歴史を持つが、今のようなコンピューターを用いて、少しずつ歯を動かすインビザラインのようなマウスピース矯正が始まったのはここ20年くらいである。当初は、簡単なデコボコや隙間が開いた症例など限られた症例に用いられてきたが、最近では抜歯ケースも含み、ほぼ全ての症例で用いられてきた。ただ、その仕上がりには未だ大きな問題があり、ワイヤー矯正のレベルには達していない。

 

一つの理由として、アライナー矯正では、アライナー本体が歯を覆う際の力を利用するので、いったいどれくらいの力がかかっているかわからないことと、たとえアタッチメントなどの突起物をつけても、取り外し式タイプである限り、どうしても力が直接かからず、ロスがある。特に捻転などの解消は不向きである。例えばワイヤー矯正であれば、3、4ヶ月で治る30°以上の捻転も、一年以上かけても治らないことがある。また上下にゴムをつけるのも制限があり、トルクもかけにくい。昔の日本矯正歯科学会の専門医試験では、10のカテゴリーがあって、多くは抜歯ケースであるが、合否はその治療前後の資料などから判定される。以前、舌側矯正を主としている先生が全ての症例、舌側矯正で治して、この試験に提出した。見事、合格し、その先生の臨床能力の高さを証明したが、未だに舌側矯正でこのレベルになるには相当難しい。それでは将来的に、インビザラインでこのレベルに達することができるかというと、ほとんど不可能であろう。実際、日本で一番、インビザランをしている先生に、この10のカテゴリーの症例を出して、審査を受けてもらってもまず不合格となろう。

 

インビザラインなどのアライナー矯正を行うのはほとんど成人患者である。こうした患者は非常に要求が厳しく、肉眼ではわからないほどの段差やねじれを気にする。また治療期間についてもシビアで、最初に2年間と言われると、治療期間が2年を過ぎるとかなり批判される。また治療後も後戻りがあると、すぐに再治療を要求される。一番、多いのは口元の突出感が気になる患者さんで、私のところでも当初は歯を抜くのを嫌がり、非抜歯で治療したものの、口元の突出感が気になり、小臼歯を抜歯して治療した患者は数十名に及ぶ。中には一旦、非抜歯で治療を終了し、数年後に再度、抜歯して治療し直した症例も5例ほどある。アライナー矯正の多くは、非抜歯で治療するので、感覚的には半分以上の患者からこうしたクレームがきそうである。全ての患者がこうした厳しい患者ではないにしても、子供の患者に比べて相当、神経を使う。それでもワイヤー矯正であれば、簡単なワイヤーベンディングや抜歯などで対処でき、治療後、数年たっての再治療もそれほど気にならない。ある意味、患者のわがままと言えるような要求に対しても何とかカバーできるし、そうしないと患者は満足しない。

 

現在、日本矯正歯科学会では、医療広告法を遵守させるために、会員、特に認定医、臨床指導医の診療所のHPをチェックし、広告法に違反があれば、訂正を求め、従わない場合は資格を与えない、更新させない。それ故、認定医、臨床指導医の矯正歯科医院ではインビザラインの宣伝が実質できず、それ以外の一般歯科医院が派手な宣伝をして、多くの患者がそちらで治療をする。結果、治らないケースはお手上げとなり、費用と期間の無駄となる。日本臨床矯正歯科医会では、「歯科矯正何でも相談」という患者さんからの問い合わせコーナーを行なっており、このまとめが毎年送られてくるが、年々、報告書は厚くなり、インビザランなどのアライナー矯正のクレームも倍増している。おそらく今のままのペースで進めば、消費者センターへの苦情も増え、矯正歯科、とりわけアライナー矯正については特定商法取引法の適用になるかもしれない。ここまで状況が悪化すると、私個人としては、是非、特定商法取引法の適用になった方が、患者のためになるように思える。


 

2021年11月18日木曜日

日本人の雑食性

 



今朝の朝ごはんは、納豆、味噌汁、シャケにご飯といった純日本食であったが、昼は昨日食べた鶏のトマトソース煮込み(イタリア風)が入った弁当、そして夜は麻婆豆腐であった。和食、中華、洋食が日によって、混ざって食べることは日本人にとっては、特に不思議なことではなく、むしろ、毎食、和食という家庭は少ないであろう。

 

ところが隣国の韓国、台湾、中国を見てみよう。確かに日本食やイタリアレストランが増えて、日曜日や記念日に、こうしたレストランで外食することはあっても、基本的には韓国人はキムチを中心とした朝鮮料理を食べ、中国人、台湾人は中華料理を食べる。単純に割合で言えるようのものではないが、日本人は、和食1/3、洋食1/3、中華料理が1/3ぐらいと思うが、韓国人は90%が朝鮮料理、同様に台湾、中国人も90%が中華料理となる。それ以外の料理を自宅で食べることは少なく、食べる場合は外食となる。

 

それで他の国はどうかというと、タイは当然、タイ料理が主力であり、インドはインド料理、フランスはフランス料理がメインの料理であり、食べる割合も自国の料理が圧倒的に高い。アメリカはどうかというと、この国は、そもそも家で料理を作ることがなくなり、三食ともレクルト、冷凍食品という国となっている。それでもよく食べるのは冷凍ラザニアやパスタ、ハンバーガー、鶏料理などのいわゆる西洋料理が基本である。自宅で中華料理屋日本料理を作ることはほぼない。

 

明治になるまでの、日本人の食事は、ご飯、味噌汁、漬物、魚あるいは煮物といったものであったが、とりわけご飯の消費量は今の感覚からすれば信じられない量で、1日に五合は食べていた。その後、明治になっても、こうした和食を中心とした食事が続き、たまにすき焼きやカレーライスを家で作ったり、食べにいったりした。大正八年生まれの父親も、外ではカレーライスや中華料理、西洋料理が好きだったが、家では最後まで和食であった。お袋は、いろんな料理を作るのが好きで、テレビの料理番組や、本などを見ていろんな料理を作ったが、親父の食べるものは別メニューであった。母に実家のある徳島の脇町に行くと、そこでは毎日、毎日、和食で、子供心にも料理に不満があった。

 

おそらく明治になると、西洋料理や中華料理が日本に入り、少しずつお店もできて、昭和になると、外食としてそうした料理を食べることはそれほど珍しくなくなった。ただ家での食事に中に和食以外の料理が登場するのは、戦後も昭和30年以降のことで、NHKの「きょうの料理」が放送されたのが昭和32年である。この番組が家庭での洋食、中華料理の導入に大きな力を果たしているのは間違いない。実際、我が家もこの番組で紹介された料理をよく母親が作っていた。さらに学校給食でも、ご飯の代わりにコッペパンが主食で、それに牛乳やおかずが添えられた。おかずは主食がパンであるため、鯨の竜田揚げなど和食といえば和食であるが、洋食に近いものがでた。さらに近所の市場の肉屋ではコロッケやメンチカツが売られ、それらにキャベツを添えた料理が家でも出ることとなり、またインスタントラーメンの普及は、家庭でも中華料理の普及に連動したように思える。

 

根本的には、日本人の好奇心の強さと、移り身の速さ、すぐに新しいものに慣れてしまう、が関係しているが、こうした日本人の食の雑食性は、世界でも珍しいものであり、それもあって、世界的に有名な日本人のフランス料理、イタリア料理、中華料理シェフが多くいて、また東京には世界中の料理の店がある。おそらくこの日本人の雑食性によるのか、テレビ番組でも料理番組が非常に多く、また料理メニューを載せた雑誌も数多く、こうしたことも世界でも珍しいと思う。


2021年11月14日日曜日

コロナ下の日本矯正歯科学会大会

 


 今年の日本矯正歯科学会は、学会の臨床指導医資格sの更新のためだけに参加した。コロナ対策のため、今回の更新では、症例の模型などの資料は宅急便で送る方法も可能となった。ただ審査後の修正時間に会場に来ないで、もし修正箇所があった場合は、自動的に不合格となる。そのため、その日の朝10時の修正時間に行けるように前日に横浜に行き、次の日の結果を見てから帰る計画をした。結果は見事合格で、修正箇所はなかった。ただ隣の知人の先生は修正があったようなので、結構、修正が必要な症例もあったのかもしれない。昨年の更新はなかっただけに、今年、更新できなくなれば、資格が失効となるだけに、修正にこられなかった先生はどういう対応をするのであろうか。

 

 そうしたこともあり、学会自体は参加しないで、昨日と今日、オンラインで講演を聞いた。特に関心があったのは、記念シンポジウム、「アライナー矯正の光と影確」の講演で、座長の槙先生が言っていたように、演者にはアライナー矯正の失敗ケースを出して欲しいと要望したが、あまりそうしたケースの提示がなかった。特別講演では予五沢先生がアライナー矯正を完全に否定していたので、学会としてももう少し、アライナー矯正の問題点を提示して欲しかったに違いない。外国人の演者の中にはかなりアバウトな人もいて、よく見ると問題がある症例を平気でうまく治ったと自慢する先生がいる。今回の先生もこうした傾向がある先生がいて、これなら槙先生の症例を提示してくれた方が良かったと思う。予五沢先生も言っていたが、うまく治った症例ばかり見せるのは無意味であり、ことに今回、シンポジウムで提示された症例はたまたまうまく治った症例であろう。流石に演者も自覚しているようで、同じような症例でもこのようにうまく治らないと言っていたが、ワイヤー矯正では、抜歯あるいは抜歯部位を追加する、あるいは外科的矯正で対応すれば、確実に治せるが、アライナー治療だけで治せない症例は数多い。結論からすれば、アライナー矯正だけで確実に治せる症例は限定されており、ワイヤー矯正にするかアライナー矯正にするかを診断できる先生は、そもそもアライナー矯正を勧めない。逆にいえば、アライナー矯正を勧める先生はワイヤー矯正をできないといえよう。当然、これからもこの問題は増えよう。

 

 他にはJOSフォーラムも関心があった。特に昨年、試験を受けた日本矯正歯科学会、日本矯正歯科協会、日本成人矯正歯科学会の統一試験後の動向が気になっていた。昨年、症例審査とペーパー試験を受けたが、一年経ったにも関わらず、まだ確定していない。もともと日本矯正歯科学会単独であれば、何の問題もなく、そのまま日本歯科専門医機構の審査にパスしたはずだが、厚労省から三団体で十分に話し合った結論を出すよう指示があった。どうも政治力のある先生がいて、こうした結果となった。そのため、十数年前からこの三団体で話し合いが行われ、ようやく昨年、統一試験が実施されたが、ここにきて、日本矯正歯科学会以外のある団体の認定医の受験資格が日本歯科専門医機構の条件に合致していないことがわかった。このままではせっかく行った統一試験も白紙に戻りそうで、まだまだ矯正専門医の道は厳しい。一方、今後、厚労省の認めた日本歯科専門医機構の矯正歯科専門医しか、広告に載せられないようなので、もし、うまく進み矯正専門医が認められると、今度はこれまでHPで載せていた日本矯正歯科学会認定医、あるいは臨床指導医の名前は載せられなくなり、学会としては日本矯正歯科学会認定医の記載削除を求めることになる。認定医は矯正歯科専門医をとるための前提であるが、臨床指導医の意味が全くなくなることとなり、いずれ廃止となるかもしれない。

 

 私自身、そろそろ引退も視野に入る年齢なので、こうした学会、あるいは専門医に関しては、あまり関係がないが、それでも将来の矯正歯科臨床を考えると、きちんとした専門医制度ができ、国民にとって安心して矯正治療を受ける仕組みになってほしい。マルチブラケット装置による治療は、かなり経験と知識、あるいは習得に時間がかかり、矯正治療は専門医でという流れができたが、再び、アライナーの登場で、一般歯科医で治療されるようになり、トラブルも増えてきた。また小児の矯正治療の健康保険化もようやく端緒に尽き、個人的には若者の健康保険離れを防ぐ意味からも将来的には健康保険化を望みたいが、そうした折も矯正歯科の専門医制度が必要となろう。

2021年11月11日木曜日

マイ ブーム 台湾

兄弟、親子同士の口げんかがすごい

パッケージはいまいちだが、味はベリーグー


 最近、台湾にはまっている。まず小説、呉明益の「自転車泥棒」(文春文庫、2018)が面白く、新刊の「歩道橋の魔術師」を購入、また「味の台湾」(焦桐、みすず書房、2021)を今読んでいる。これは台湾の文学者で、美食家の焦桐さんが、台湾各地で食した台湾料理を語ったもので、何しろこの焦さんは美食家でありながら、大食漢である。サバヒーという台湾を代表する魚の料理が好きで、毎朝六時に13キロ離れた店まで食べに行って、そのあまりの熱意に奥さんから浮気を疑われたという。この店に行くと乾煎魚腸を1皿、魚皮湯を二杯、食べ終わると魚粥を一杯、さらん魚頭湯を一杯頼むという。全てサバヒーという魚を使った料理である。この本には台湾各地の美味しい料理と店が紹介されているが、文章がうまく、ゆくゆくは行きたい友人のいる苗栗、台中市の店には鉛筆で全て印をつけてネットでチェックしている。なかなか読み進まない。

 

 次に映画、これは十数年前から、候孝賢監督の「非情城市」に感激し、そこ頃入っていたツタヤのレンタルでほぼ全ての作品を見て、さらに「クーリンチェ少年殺人事件」などの台湾ニューシネマも見るようになり、次第にツタヤの「台湾映画」で検索できる映画をほとんど見るようになった。流石に台湾ドラマまで見ることはなかったが、1ヶ月前にネットフリックスの台湾ドラマ「一千回のおやすみ」にハマり、その後、「ひとつの太陽」、「弱くて強い女たち」、「君が最後の初恋」などの映画や、「返校」、「同級生マイナス」、「ダーダオチェンの夢」、「双城故事」などのドラマも見たが、それほど面白くはない。ただ研修医に来ている台湾の先生のおすすめ「お花畑から来た少年」というふざけたタイトルだが、これは台湾の変わった習慣がわかって楽しい。今は「時をかける愛」を見ている。

 

 さらに昔見た台湾映画をもう一度、見ようと思い、録画していた「恋恋風塵」、「ステキな彼女」、「童年往時」などの候監督のDVDを見ようとするも、新しい機械では読み取れず断念し、昔買った「非情城市」、「ヤンヤンの夏の思い出」、「ミレニアム・マンボ」、「百年恋歌」などのDVDをこれから見ようと思う。個人的には「あの頃、君を追っかけた」、「セデック・パレ」、「恋恋風塵」、「若葉のころ」、「言えない秘密」などのDVDやブルーレイを買いたいところだが、これがどういうわけが中古のものでも高い。例えば、タイムスリップものの名作、「言えない秘密」の中古DVDでも2万円くらいしている。「若葉のころ」もレンタル用のかなり使い込まれたものでも、新品価格より高く売られている。一種の台湾映画ブームが起こっているのだろうか。これだけネット動画が普及しているが、全体的にDVD価格は高くなっている。見たい映画をすぐに観るにはDVD、ブルーレイの方が便利なためであろう。うちの家内は、韓国ドラマにはまっており、私も時々韓国ドラマを見るが、台湾ドラマは韓国ドラマ以上に出演者が被り、同じ俳優がいろんな番組に出てくる。

 

 さらに台湾スイーツといえば、あれほど流行したタピオカティーも下火になったが、個人的にはパイナップルケーキーとタロイモパイは捨てがたい。パイナップルケーキーで有名なのはサニーヒルズのもので、日本でも東京の表参道でも売られ、おしゃれなパッケージなので、贈答用でも喜ばれる。ネットでも購入することができるので時々、購入している。最近、いただいたのがタロイモを使ったスイーツ、芋頭酥で、これはアンコの中に餅が入っていて、台湾のスイーツだが、日本の味がして全く抵抗感がない。アマゾンでも買えるようなので、一度注文してみようと思うが、もらったのは台中市の躉泰という会社のもので、台中市のお土産として有名なものらしい。台湾と日本は近いので、こうしたお店の直販店も是非、作って欲しい。

 

 先日も台湾から来た研修生と自宅で、「お花畑から来た少年」を見ていたが、台湾語と北京語がドラマの中で、混ざって使われており、最近では、若者は台湾語をあまり使わず、中国語しかわからない人も出ているらしい。本屋、雑誌など全て中国語で書かれており、台湾語は会話にのみ使われる言語となり、将来的には消滅する可能性もある。苗栗県の客人が多く、ここの料理は味が恋だとか、台湾の中でも料理が一番うまいのは台南で、全体的に甘いといったことがこのドラマでもわかり、台湾のこの先生も私にマイブーム、台湾に驚いていた、

2021年11月9日火曜日

植野食堂 技術の継承

 


 面白くない番組しかないときに、よく見るのがBSフジの「植野食堂」である。「dancyu」の編集長、植野広生がよく行く普通の食堂の名物料理、人気料理の作り方を教授してもらい、それを認定してもらい、そのレシピをテレビで公開している。全く同じ材料を使い、隣に食堂の主人がいて指導しても、その店のいつもの味にはならず、ちょっとした茹で時間、炒め方法で味が全く違うというのがよくわかる。最後にレシピを紹介しているが、おそらく紹介された店と同じ味になることはないだろう。

 

 ただ同じ人が、その店の厨房に入って、3ヶ月、特訓すれば、どうであろうか。かなりの確率で、その店の味を習得することはできるだろう。レシピ、動画+経験が必要で、これが揃うことで、料理の継承が可能になるのだろう。一方、店主の高齢化と後継者がいないことから、お客がいても閉店を余儀なくされる店が多い。中には常連客や息子が、後継者として店を継続することもあるが、多くは馴染みの客に惜しまれて閉店することになる。

 

 こうした店は一度、閉店すると2度と復活することがない。ここでは料理店について述べたが、近所にリンゴ用の脚立を作っているところがあったが、最近は閉まったままだし、隣にはアケビ細工の店があり、ここは幸いにもかろうじて後継者ができて、製作している。こうした伝統品の製作まで含めれば、数多くのものが、後継者がおらず、そのままなくなる。惜しいことである。

 

 ここで提案したいのが、技術継承会社、機関の創立である。おそらく料理分野、伝統工芸分野のほか、農業分野などがあるように思われる。料理分野では、高齢のために閉店する人気店で、その名物料理のレシピ、作り方をマスターする。もちろん、集客性の高いレシピには店主に高い金額を払う。技術継承会社のスタッフが数ヶ月、ここでバイトしてその作り方をマスターする。もしその料理を、自分の店のメニューに加えたい人には、会社に料金を払い、担当者が同じ味になるまで指導する。伝統工芸分野は会社としては採算がとりにくい、習得に時間がかかるため、会社として扱うのは難しいかもしれない。むしろ国、県、市町村などが経費を出し合って、若手に継承させた方が良いかもしれない。例えば、刃物作りは最近では人気が出て若手も、その継承する場合もあるが、鍬などの農機具、大工道具などとなると継承者は少ないであろう。弘前では伝統工芸品、津軽塗はこうした補助を行って技術の継承を行なっているが、リンゴ籠や、リンゴ用の脚立など、伝統工芸品と呼ばれないものは、こうしたシステムもない。農業分野についても、古い種類の地場野菜あるいは海外の変わった野菜の種と栽培法を生産者から習い、それを希望者に料金を取って教える。ただ古い地場野菜、果物は育てるのが難しく、その割に価格が低く、販路も限られ、消滅するものもあると聞く、そうした絶滅しそうな品種を育て継承する、あるいはすでに絶滅した野菜、果実を復活するような試みは民間では難しく、公的機関で行なって欲しい。

 

  他にも高齢のために技術の継承が途絶えるものは、色々あると思う。少なくとも、市町村がそうした仕事を把握し、全国に公表して、誰か継承者を探すような仕組みを持って欲しい。場合によっては金銭のやりとりがあってもいいが、市役所内に地域の技術継承を相談するセクションがあり、もし病気などで閉店する場合は、そこに連絡するようにシステムが欲しい。


2021年11月7日日曜日

男女の相性2

 


 昔といっても、私の姉の時代、1970年代までは結婚はお見合い結婚でする場合が多かった。確率で言えば、50%がお見合いで、50%が恋愛結婚で、姉は見合い、兄も見合い、私が恋愛結婚であった。母や父の時代、昭和20年代で言えば、ほぼ90%が見合い結婚で、残り10%が恋愛結婚であった。

 

 母親の実家の徳島県脇町で言えば、中継ぎの婆さんがいて、町内に好きな人がいると、その婆さんに両家の間を持ってもらう。無事、結婚すれば、婆さんに仲介料が出るようなシステムがあった。これなど恋愛と見合いをミックスしたようなものであるが、両家の家柄があまりに違う場合は、この婆さんが結婚は無理だと断っていたようだ。

 

 お見合い結婚といえば、まずお互い写真だけで選び、お見合いをして、せいぜい3、4ヶ月、付き合って結婚する。もちろん通常、その間、肉体関係はない。普通、考えれば、お互い愛し合って結婚する恋愛結婚の方が、知らないまま結婚する見合い結婚より離婚は少ないように思えるが、周りを見渡してもそういうことはなく、むしろ恋愛結婚の方が離婚率が高いように思える。

 

 吉村昭さんの小説「落日の宴」は、徳川幕府の幕臣、川路聖謨の一生を描いた名著であるが、川路はその生涯四人の妻を持った。勘定奉行という幕臣の中でもトップに近いポジションであり、日露和親条約などに大きな業績を上げた人物であるが、性格は極めて真面目で、鍛錬を欠かさず、カゴに乗れる身分でありながら、徒歩による移動を好んだ。性格も素晴らしい。

 

 最初に妻、エツと結婚したのが、川路19歳の時で、エツは2年後に病死した。その後、22歳の時に、二番目の妻、やすと結婚し、長男、長女、次女を生み、穏やかな生活が続いた。ところが川路の昇進につれ、もともと男勝りのやすは、川路の公務を補佐する用人に厳しい命令をするようになり、川路もこうした妻の態度をたしなめたが、言うことを聞かない。次第に家の中の雰囲気が暗くなり、用人、中間が次々と辞める事態になると、堪りかねて離縁した。その後、結婚はこりごりと感じたが、さすがに四人の子供の世話を実母に任せるのは困難となり、今度は温和な性格の女性を、と望み、三番目の妻、カネと結婚する。ところがカネは口数が極端に少なく、一日中、庭を眺めているような性格で、多くの雇い人に指示することもなく、父母、子供の世話もしない。流石にこれはダメだと、またもや離縁する。度重なる結婚の失敗は自分に非があると考えたが、家のあまりの状況に見かねて知人が紹介して結婚したのが、サト(佐登)である。この最後の妻、サトとは生涯、最愛の仲の良い夫婦となった、川路が奈良奉行の時に、女が夫以外の男と関係を持ち、そのもつれで女が夫を殺すという事件があった。川路がどんな美女かと想像していると、白州に現れた女はまれなほどの醜女であった。自宅に帰ると、川路は妻に前に座り、何度も有難や、有難やと頭を下げ、頭が狂ったかと皆に思われたが、川路曰く、美しいサトと妻にしているのがもったいないとさらに頭を下げつづけた。用人はじめ、皆のものが大声で笑ったというエピソードがある。旅先からはまめに妻に手紙を最後まで出し続けた、

 

 川路のように四人の妻を持つことはまれなことであるが、最終的に、本当に相思相愛の仲の良い夫婦になったのはそのうちの一人であった。おそらく恋愛結婚で、激しい恋をしたとしても、最後まで仲睦まじく添い遂げるのは四人に一人くらいで、これだけは運の良し悪しで、相性としか言いようがない。全く生まれも育ちも違う者同士が、死ぬまで相思相愛でいるのは相性が本当に良かったのだろう。


2021年11月4日木曜日

古書店を騙った違法中国サイト



 

   須藤かくと阿部はながアメリカのイリノイ州で撮った写真のオリジナルが最近見つかった。「Brown Books」という古書店で1250ドルというとんでもない価格で売られていた。こんなものを買うのは、須藤かくの研究者の私くらいのものだと思い、自分では思い切って800ドルなら買うとこの古書店にメールをした。ところが古書店のオーナーは強気で、20%オフなら売るという。およそ1000ドルで、キャビネ版の小さな写真にしてはこれでもかなり高い。そこでさらに30%オフなら、即刻に買うと返答すると、そうした駆け引きはしないとピシリと断られた。まずこんな馬鹿げた価格で買う人はいないだろうとタカをくくっていたところ、しばらくするとsold となっていた。驚いた、私以外にこのような高い値段で、ほどんど無名の肖像写真を買う人がいたのか。おそらく博物館や大学ではこうした価格で買うわけはなく、個人のコレクターが買った可能性がある。

 

 ただ、この場になっても、売れていないのに売れたように見せかけたとのだと勝手に思っていた。その心の隙間に入り込むように「Fanbety」というサイトが見つかった。1250ドルのこの写真を70ドルで大幅に値引きするという。もともと、この写真の正当な価格は70ドルがいいところだと考えていたので、1250ドルでは全く売れないので、ここで70ドルで売ったのだろうと解釈した。すぐに買うと返事をし、そのままカード決済した。

 

 

 ここまではラッキーと考えていたが、買ったにも関わらず、制限時間の表示を消えない。メール直後にこの会社から登録がなされたとの折り返しメールが来ていたが、どうも怪しい。ここで青森中央学院大学の北原先生のフェイスブックを思い出した。欲しかった本が日本の古書店で安く売っていたので買ったが、この書店は違法サイトで、騙されたとの記事である。まさか古書店でこうした違法サイトがあるとは知らなかったが、インターネットで調べると、違法サイトは、アドレスの最後が、「.top」であることが多いとなっており、このサイトも中国の違法サイトと断定した。

 

 すぐにカード会社に調べてもらったが70ドルは引き出され、回収は難しいという。カード決済を中止し、預けていた通帳からすべての金を引き出した。そして番号を変えて新しいカードを作ることにした。

 

 ダイソンの掃除機が2万円、ロレックの時計が3万円などのメールが時々来るが、こんなの違法サイトに決まっている、買う奴がいるのかと嘲っていた自分がまんまと騙された。おそらく後日、Brown bookedHPに載っている写真をコピーして送ってくると思うが、他の古書店の販売実績を調べて、高い価格で売れた実績のある古書の写真と説明をコピーして自分のHPに載せているのだろう。巧みである。中国人は本当に騙しの天才である。

 


こうして騙されたわけであるが、それでもいまだに誰が買ったのか非常に気になる。私の場合はもし買えれば、横浜共立学園か、横浜の海外移住資料館に寄贈しようと思っていたが、少なくとも死蔵して欲しくない。