2021年12月20日月曜日

弘前駅前、吉井酒造事務所と倉庫の用途を考える

 




ホテル東横INN弘前駅前の裏に、あまり弘前の人にも知られていない建物がある。吉井酒造の事務所と倉庫である。弘前駅前の日本チケットの前の道を線路側に行くと、左手に門が見える。個人の建物であるので、内部については全くわからないが、門の左手に事務所とそれに連結した白壁の倉庫がある。かなり大きな倉庫で、幅が20m以上、奥行きも30mくらいある。外から見る限り比較的、コンデションもよい。門の右手にも白い漆喰で塗られた小さな蔵のようなものが並んでいる。グーグルマップで見ると倉庫の裏には、さらに幅は15mくらい、奥行きは50mくらいのさらに大きな倉庫があり、奥は突き当たって右に30mくらい曲がる。そしてこれに連結するような形で別の幅15m、長さが30mの倉庫がある。コの字になった倉庫を合わせると、恐らくは全長で100m以上ある。

 

できたのは昭和14年で82年経つ。台風で、大きな倉庫の屋根が飛ぶ被害があったものの、その後、綺麗に修復された。全体的にはあまり利用されていない割にはよく管理されている印象を受ける。それでもオーナーであった吉井千代子さんが2年前に亡くなり、その後、この土地、建物が今後、どうなるのかは全くわかっていない。千代子さん自身、子供がいなかったので、その縁者が相続したものと思われるが、活用方法がなければ、壊され、土地売却となる。隣の日通の空き地と同様に、駅前の大きな更地ができるだけであろう。

 

明治頃のレンガ倉庫であれば、函館の金森レンガ倉庫や横浜の観光スポット、赤レンガ倉庫のように多くのテナントを入れて再開発という手はある。それらに比べるとこの吉井酒造の倉庫、事務所はそれほど古くはない。それでも戦前の古い建物であり、場所的には弘前駅前のいいところである。全く内部も知らないので、かってな推測で話をするが、その活用方法について検討したい。

 

まず入口の事務所と白壁倉庫は、レストランや青森市のA-Factoryのような観光物産品を売る場所が良かろう。駅にも近く、利便性は高い。一方、総全長100m以上ある大きな倉庫については、土を敷きしめ、雪の降る冬場の運動場にすれば、どうであろうが。弘前市も武道館近くに克雪トレーニングセンターがあり、人気があって利用者も多い。ここの大きさは幅が50m、横が55m、高さは15mと、野球場の内野くらいの広さである。吉井倉庫は克雪センターほど幅はないものの、全長はそこそこあり、ランニングやピッチングなどはできよう。またギリギリかもしれないが、フットサルコートやテニスコートも作れるかも知れない。また子供用の土の公園兼運動場も保育園など冬場の運動場のない園児には必要かもしれない。雪の降る弘前では、屋内の広い場所はそれだけでも貴重である。

 

他にはベルギーやフランス、リトアニアなどヨーロッパ各国に見られる屋内型のマルシェもいいかも知れない。肉や魚、野菜などの食材を売るだけではなく、花屋、ワインショップ、イートインの屋台などの立ち並ぶもので、若い人にさせれば、おしゃれなものになるに違いない。昔、えきどてプロムナードでしていたマルシェのようなものが、この倉庫に集結して、店をすれば、それは楽しいものになろう。また津軽三味線は全国的に知られており、毎年、弘前でも全国大会が開かれているものの、観光設備としては、常設演奏場としては津軽ねぷた村くらいしかなく、「津軽三味線博物」のようなものがあってもいいかも知れない。

 

色々と活用のアイデアはあるし、特に若者の知恵を借りれば、かなりおしゃれな空間に生まれ変わる可能性もある。ただ若者は資金、経営面では経験が不足しており、弘前市、国と所有者が協力して検討し、例えば国、市、民間企業、所有者が改築、リノベーションを行い、それを起業する若者に貸す。さらに最近ではクラウドファンドという手もあり、そのまま何もせずに、壊されるには避けたい。弘前市が音頭をとって、是非とも弘前れんが倉庫美術館につぐ新たなプロジェクトに臨んでほしい。

 

少なくともニュース、テレビや雑誌特集などでいいから、この建物を取り上げてもらい、その内部について紹介してほしいものである。


2021年12月19日日曜日

65歳での試験

 


昨年の106日に日本矯正歯科専門医新規申請のための筆記試験を受けた。選択問題を中心にした60分のMCQ試験と60分の論述試験が、14:20から休憩も挟んで17:45まで行われた。周りを見渡すと60歳を超えたベテランの先生ばかりで、みんな久しぶりの試験だと思う。私の場合は、一番最後の試験が30歳の時に受けた自動車免許の筆記試験なので、35年ぶりの試験である。

 

はっきり言って、この歳での試験は、拷問に近く、2ヶ月前から診療の合間と日曜日、祝日を利用して勉強したが、もはや記憶力と呼ばれるもの自体が存在せず、覚えるうちから忘れていく。前の週の日曜日に覚えたものが、次の週にはすでに忘れており、自分の記憶力の減退にショックを受けた。若い頃は、記憶力にはかなり自身があって、歯学部のような記憶力が必要とするところでも、それほど勉強で困ったことはなかった。ところが40歳頃から、テレビに出ている俳優や歌手の名がなかなか出ないことが多く、最近ではむしろ思い出そうともしなくなった。

 

こういう状況で試験を受けるので、最初から困難が予想されたが、実際勉強を始めるとこれほど手こずるとは思わなかった。まず今回は初めての試験で、範囲は示されているものの、傾向は全くつかめず、どんな問題が出るかわからなかったことも苦労した点である。矯正歯科全体をおさらいするために、多くの歯科大学矯正歯科の教科書となっている「プロフィットの現代矯正学」の新しい版を購入して、2度ほど読み込んだ。その後、他の出題範囲についてインターネットを利用してまとめ、それを記憶するようにした。ただいくらこういうことをしても記憶できず、最後は自分で問題を作ってそれに答える方法を思いつき、ようやく何とか試験開始日までの覚えることができた。若い頃に比べて10倍以上の手間と時間がかかった。

 

 結果は何とか合格できたが、さずがにもう2度としたくない。医科の専門医試験でもこれほど年配の先生ばかりが受ける試験もなかろう。今回の試験は、日本矯正歯科学会、日本成人矯正歯科学会、日本臨床矯正歯科協会の三者の合同試験であり、それぞれの学会の専門医のみが受験できた。そのためにほとんどの受験者がベテランの平均年齢60歳以上の受験者となった。75歳以上のドライバーが受ける認知機能検査に匹敵する年齢の高い人の筆記試験である。今後の試験は、若い先生方も受験するので、平均年齢がこれほど高くなることはない。

 

不思議なもので、試験終了後の受験者同士の答え合わせは、全く高校生の頃のものと同じで、皆と一致すれば嬉しいし、間違っていれば凹み、そうした青春の苦い記憶も同時に思い出した。試験中、試験後の奇妙な高揚感も久しぶりの経験である。すでに試験から1年以上経って、ほぼ95%忘れてしまった。今受けると100%不合格である。こうした資格試験は、一回目より二回目、二回目より三回目と回数を重ねるごとに難しくなり、早めに受験してよかったと思う。

 

試験を受けてすでに1年以上経つが、いまだに日本歯科専門医機構というところで矯正歯科専門医が認められておらず、我々受験者も合格となっていない。結果が気になる。というのは今年の7月の厚労省告示で、「日本専門医機構が認定する専門医」が正式となり、将来的に「学会の認定する専門医」が広告に出せない可能性がある。すると現在のHPでは何とか認められている「日本矯正歯科学会認定医、臨床指導医という名称がネット上に出せないことを意味し、かえって一般の人からは誰が認定医かわからなくなる。さらに口蓋裂児の矯正治療に関連する「自立支援医療機関の指定審査基準」も変わる可能性があり、対象医療機関が少なくなる可能性もある。

 



2021年12月18日土曜日

歯科医院を選ぶポイント(子供の矯正治療)


 


2年ほど前から、子供の患者は治療終了まで数年以上かかるため、新患は原則的に断っている。そのため、患者構成も10年前は18歳以下が70%であったが、今は口唇口蓋裂患者を除くと、ほぼ成人患者が占めて、18歳以下の患者も20%程度になった。

 

私のところでは、マルチブラケット装置の調整では、まずワイヤーを外し、調整あるいは新たなワイヤーを曲げて装着し、説明して、終了となる。全て一人でしているので15分の予約を入れているが、衛生士による歯磨き指導以外には、他の患者が一緒に治療することはないため、同時間には一人の患者しか入れていない。さらにマルチブラケット装置の装着は1時間、治療途中の1年検査では30分かかるために1日の患者数はせいぜい20-30名くらいとなる。衛生士にワイヤーの交換などさせればもっと患者はみられると思うが、どうも自分でしないと気が済まない。それでも以前は、土曜日以外はだいたい10-15名くらいで多少は休憩の時間もあったが、最近は患者が多く、ほぼ毎日、20-30人、土曜日は40人程度となり、これ以上の患者は見られない。患者の多くは来院時に1ヶ月後の予約をするために、特に新規の患者の予約はかなり先になってしまい、ご迷惑をおかけしている。

 

子供患者を見ない点については、一番多い反対咬合の患者さんの例で説明する。早い患者さんでは45歳頃に来院する。ムーシールドという装置による治療を使ってかみ合わせが治ることがあっても、上の前歯が萌出する7、8歳の頃にまた治療が必要となり、骨格性反対咬合の場合は、ここまでが一期治療で、ここから成長終了まで経過観察となる。二期治療は、早くて女子で13,14歳くらいから、男子では16-18歳くらいからマルチブラケット装置による仕上げの治療となる。さらに2年ほど治療を行い、保定となる、ここまで10年以上となる。私の場合はとてもこの年齢までは仕事をしていないので、小児の患者を取っていない。同様に、叢生、上顎前突のケースも少なくとも高校卒業までは見ていく必要がある。

 

子供の歯並びについて、何とか見てもらえないかという電話も多いが、上記の理由と患者が多いため、誠に申し訳ないが断っている。それで、どこに行ったらよいかと聞かれるが、これは紹介にも責任が生じるので、基本的には自分で探すように言っている。まずネットや知人から評判を聞き、実際に何軒も訪ねて一番、信用がおける歯科医院での治療を選ぶのが良い。その際のポイントは

 

大まかな治療方針を聞く。いつまで治療が必要で、それまでにかかる費用を聞く。これは経験のある歯科医であれば、検査などしなくてもだいたいわかる。早期治療を勧められた場合は、治らなかった場合のことも聞く。子供の治療、一期治療で終わる症例は少なく、多くの場合はマルチブラケット装置による二期治療を必要とする。一期治療で治らない場合、二期治療は他院に紹介すると言われれば、料金についても聞いておく。二期治療を他院で紹介しても、まず新規の患者扱いとなり、一期治療費は無駄となる。それなら、最初から二期治療をする歯科医院に紹介してもらえばよいことになる。すなわち、最後まで責任を持って矯正治療をしてもらう先生が良い。ただ長期の治療となり相性などもあるため、必ず数軒の歯科医院で意見を聞いてから治療を始めてほしい。また転勤などの可能がある場合も、転医、その際の返金なども聞いておく。

 

日本矯正歯科学会では、上顎前突、反対咬合のガイドラインを示しているが、それによれば、あまり早期治療の意義を示されておらず、そうしたガイドラインを読んでおいて先生に質問することも大事である。こうしたガイドラインは治療の基礎的な資料であり、ある程度、矯正治療をしている先生であれば、十分に理解しており、患者さんの疑問に答えられる。中にはエビデンスのほとんどない治療法が勧められることもあり、気をつけたほうがよい。

 

https://www.jos.gr.jp/guideline

2021年12月16日木曜日

韓国の平均賃金が日本を超えた



韓国の一人当たりGDP、平均賃金が日本を超えたというニュースがネット上で話題になっている。2021年度の調査では、韓国の一人当たりのGDP43780ドル、日本は41507ドル、年収は韓国が462万円、日本が424万円で、いずれも韓国の方が優っている。これに対して、集計方法の問題だとか、韓国は海外分も入れている、年齢構成が違う、大企業のみの集計といった意見もあるが、それでも日本並みになってきたのは間違いない。

 

1965年(昭和40年)当時の日本人のサラリーマンの平均年収は448000円、当時の為替1ドル−360円で換算すると1240ドルに対してアメリカの年収はおよそ1万ドルで日本の8倍ほどであったが、その後、日本も物価上昇とともに年収も増え、1990年にはアメリカが47000ドル、日本は4万ドルと接近したものの、その後、2020年ではアメリカが6万9000ドル、日本は39000ドルと差が開いた。

 

どうも日本だけ1990年代以降、物価、賃金の上昇もなく、韓国が追いついてきたというのが実際である。日本と近い国はイタリアで、他の欧米の主要国は軒並みに賃金と物価の増加が起こっている。このことは日本、イタリアは、他国からすれば相対的に物価が安く、逆にアメリカは物価が高いことになる。そのため観光客からすれば、日本やイタリアが最もコスパの高い国となる。逆に言えば、アメリカ製品のコスパは低い。それでもアイフォンは売れるし、B-35戦闘機も売れる。値段が高くても売れるものだけを生産しているのだろう。それではアメリカは何で儲けているかというと、ほとんどは金融、IT関係の企業によるもので、何かを実際に作って儲けているものではない。同じ百万円を儲けるのに、株で儲けるのは家にあるコンピューターで、わずか1日でできるかもしれないが、これを服を作って儲けるとなると、デザインを決め、工場に発注し、そして小売に卸して売る。恐ろしく手間が掛かる。

 

現代社会は、世界がインターネットでつながれ、例えばUSA Amazonを使えば、一部商品は買えないにしても、税金と輸送費を払えば、全く日本のアマゾンと同じように買える。以前は海外から購入した方が安い商品も多くなったが、ここ数年で関税も下がり、簡単に買えることから、海外との価格差も減ってきた。こうしたネットによる購買がさらに進むと、世界中から何でも買えるようになり、市場としての商品価値は均質化され、ある意味、世界共通の価格となる。中国製の時計はいくら頑張っても1万円以上することはなく、日本のセイコーやカシオは数万円、そしてスイスのロレックスは百万円の値段がつく。これが世界中の共通価格となる。国によりその生産品のブランド化が決まり、韓国製サムソンと日本製パナソニックのブランド差はなくなったのであろう。

 

青森県の平均賃金は東京の約半分の2万2000ドルくらいで、ポーランドやブラジルのリオデジャネーロの平均賃金と同じくらいだったと思う。青森県には農産品、漁獲品以外に大きな産業はなく、ましてや金融やIT関係の企業はほとんどなく、公務員が一番いい職業と考えられている。日本とアメリカの関係が、そのまま青森と東京の関係に相似しており、青森での生活を考えることで、ますますアメリカとの給与面での差がつく将来を予想できる。結論としては、料理、家賃など物価は安く、賃金が安くともそれなりの幸せな生活ができ、決して東京より賃金が安いからといって困ることはない。ただ、30年以上、物価も上がらないが、賃金も上がらないのは、かなり異常な状況であり、そろそろ賃上げ、物価の上昇となることは間違いない。また円ドルの為替レートも今の円安傾向より円高傾向が理にかなっており、例えば、1ドルが80円になるだけで、日本の平均賃金は56000ドルとなりカナダ並みとなる。個人的には1ドル115円は安すぎ、100円くらいが妥当と考える。

 

アジアでも賃金が最も高かったのが日本であったが、これからアジア諸国も賃金が上昇すると、海外技能実習制度などは崩壊するであろうし、ノーベル賞を受賞した真鍋淑郎のように優秀な人材の頭脳流出も顕著になってくるかもしれない。アジアの先頭を牽引してきた日本の役目は、そろそろ終了しているのかもしれないが、日本のような国がなかったアフリカの現状を見ると、日本の功績は大きい。


 

2021年12月12日日曜日

外資系歯科メーカーについて

 


現在、私の診療所では、保定患者を中心に、EMS社のエアーフローを用いた歯のクリーニングを行なっている。細かい粒子を高圧で、歯の表面い吹き付け、着色などを除去するもので、一部の一般歯科医院では、歯周疾患の治療のために積極的に使っている。ブラケットがついた歯についても、これまでのPMTCよりは綺麗にプラークを取ることができて、患者さんからも喜ばれている。

 

元々はモリタから出ていたハンディータイプのものを使っていたが、EMSの衛生士の方から、今度、新型のプロフィキシスマスターという製品が出るので、これを是非使って欲しいと言われ、日本で未発売の時から欧米のカタログをチェックし、日本で販売と同時に購入した。そのため東北でも早い導入であった。日本では松風が代理店として扱うことになったが、最初の導入のため、何度か故障があり、そのたびに松風の担当者が修理に来て、お世話になった。

 

その後、松風からスイスのEMS社が直接、EMSジャパンを作り、ここで扱うことになった。ただこうした外資系の歯科材料屋にありがちな、傲慢な経営方針に変わり、まず年に一度のメンテナンスを求められた。一回のメンテナンス料は5万円で、それ以外にも交換部品や修理費が必要となる。医療機材であり、構造上もパウダーなどが機械内に詰まることもあるので、年に一度のメンテナンスは、仕方ないと受け入れた。ただここでも外資系特有の合理的というか、せこい方法がとられ、メンテナンスをする場合、それ専用の箱が送られ、それに詰めて送るのだが、簡単には梱包できず、なかなか難しい。これまでの松風で扱っていた時は、青森の機材屋にそのまま渡せば、そちらから送ってくれるので、手間が省けた。さらにメンテナンス中の代品は以前が、タダであったが料金がかかるようになった。

 

ここまではまだ辛抱できた。かなり日数が経ってから、メンテナナンスが終了した機械が送られてきた。ところが今まで故障したことがない、スケーラーの調子が悪いと衛生士がいう。もう少し様子を見るように言ったが、やはり調子が悪い。メンテナンスに出して、すぐに故障が出るようならメンテナンスの意味がないような気がし、不満が残った。よほど前の松風の方が、対応が良かった。そこでこうしたユーザーの不満は直接会社に伝えた方が良いと思い、電話すると電話を取った女の方が対応し、上の人に電話を代わって欲しいと頼んでも、私が対処しますの一点張りで、結局、上の人にこうしたクレームがありましたと伝えて欲しいと言って電話を切った。せいぜい20-30名の小規模会社で、よほど電話をとる人と社長の間に距離があるのかと思った。常々、受付に、少しでも問題があるような電話は決して自分で対応しないように言っているが、受付、あるいは下の社員とトップとの風通しの悪い会社は、経験上、大きな問題が出る。知人で日本のトップの銀行、10万人以上の社員がいる銀行の役員がいるが、彼は俺が高給をもらっているのは、人に頭を下げる、謝るからで、部下の失態があれば、すぐに謝りに行くと言っていた。同じクレームでの上の人が謝りにくれば、それで済む場合が多い。外資系の会社、EMSだけでなく、カボ、シーメンス、デンツプライ、と言っても別に社長が外人ではないだろうが、どうも日本のメーカーとやり方と違い、私のような古い人間にはついていけない。ただ矯正機材の多くは、50年前から外資系会社であったが、非常にユーザーと長年、良好な関係を築いていたことから、外資系会社に問題があるわけでない。こうした外資系歯科機材の会社は、トップが歯科畑の人ではなく、他の分野の商法を歯科に持ち込もうとしているように思える。歯科用ユニットのプランメカもそうだが、最近はどうも日本のメーカーに任せず、本社が直接にタッチするようになってきたが、こうした傾向がうまくいけばいいのだが、心配である。医療系の会社は、物を売り、金を稼ぐだけでなく、ユーザーの向こうに患者がいるのを忘れないでは欲しい。そのため、利益が少なくても、それを利用する患者がいる限り、継続することも必要となる。会社の財務表を見て、利益の少ない部門を廃止し、成長する部門に集中するのは、確かに経営的にはいいのかもしれないが、同時に医療メーカーとして責任も忘れないで欲しい。特に外資系の社長の多くは、海外の大学出身者であり、こうした古い日本式の商慣習を知らないようだが、とても大事なことと思える。


 最近、カボもプランメカの傘下に入った。これまでのカボのやり方、CTの被ばく線量はパントモ以下として売る、故障すれば高い修理費がかかるので、月々のメンテナンス費を払った方がお得といったやり方は問題あるのはこのブログでも度々指摘した。前者は欧米のガイドラインに違反した販売法であり、後者は自分の会社のユニットは故障を起こしやすいと自分で言っているようなもので、売上だけを考えた浅はかで、ばかな戦略である。おそらくこれまでOEM

で売っていたCT、顎運動装置や、場合によっては歯科ユニットも、プランメカ製品と競合するため、販売の見直しが行われるだろう。


2021年12月10日金曜日

中国製エンジン

 



以前、青森発、羽田空港行の飛行機に乗ったところ、離陸して1.2分後に後方部でドカンという音がして、その後、機長から、片方のエンジンの故障にために、青森空港に引き返すというアナウンスがあった。あまりに急な展開に全くわからないまま、急旋回して無事に青森空港に着陸した。どうも鳥がエンジンに入ってしまうバードストライクによるものだと思われた。こうした事故はちょくちょくあるが、今の飛行機は片肺でも十分に飛行できるために大きな問題とならない。ところがこれが国際線の飛行機で、成田発、ニューヨーク便で、太平洋上で故障すれば、流石に片肺で、そのまま飛行を続けるのは厳しく、太平洋上のどこかの島に緊急着陸するだろうが、そうした事故はほとんど聞いたことはない。

 

旅客機のエンジンは、馬力や燃費だけでなく、故障をしない信頼性が最も重要となる。もちろん普段の整備点検も大事であるが、エンジンそのものが故障してもらっては困る。そうしたこともあり、軍用機と違い、旅客機のエンジンの多くは、アメリカのゼネラルエレクトリック、プラットアンドホイットニーか、イギリスのロールスロイスの3社しか提供していない。旧ソ連や中国など共産主義国では、米英からのエンジン供給が難しかったので、自国で開発したエンジンを使っていたが、近年では上記3社のエンジンを使うことが多い。ただ英米のエンジンメーカーの寡占を嫌い、ロシアはフランスと手を組み、パワージェットと言う会社を設立し、パワージェットSaM146という小型エンジンを開発し、スホーイ・スーパジェットと言う100座席以下の近距離空路用旅客機に使われている。同様に中国でも新型旅客機C919のための国産エンジンCJ-1000Aをフランスと一緒に研究しているが、現在はGEとフランスが共同開発したエンジンを使っている。おそらく設計図面などエンジンの構造は、不正取得して全て中国は把握しているのであろうが、実際の耐久性の問題がなかなか解決できないのであろう。

 

もともと軍用機エンジンについてもロシア製はアメリカ製の1/8くらいの耐久性しかなく、ロシア製エンジンのコピー、中国製のエンジンの耐久性はそさらに低いとされている。例えばアメリカのF15のエンジンは1万時間以上の耐久性があるのに対して、ロシア製のSu-27のエンジンでは2000時間以下、中国製のJ-11のエンジンは800時間しかないとされている。これは設計思想が耐久性を重視していないためで、周辺産業もそれに倣ったのだろう。

 

こうした旧ソ連、中国の航空エンジンは耐久性がもともと低く、旅客機用の耐久性が重視されるエンジンは作れないのであろう。このことは船舶用エンジン、自動車エンジンにも当てはまり、欧米に匹敵するものが作れてもその耐久性は劣っている。中国では、いまだに軍艦用の純粋なガスタービンエンジンは作れない。戦前の日本は、ドイツのダイムラーベンツ液冷航空エンジンを最後までまともに製造できず、現在の中国のような状況であった。エンジンは治金など工学技術の結集したものであり、信頼性のある旅客用の中国製航空エンジンが欧米のエンジンに勝つようになれば、中国の工業技術は本物になったといえよう。ただ中国人の現世主義、拝金主義から考えれば、利益につながらない耐久性に努力するのは、もっとも苦手な点かもしれない。

2021年12月9日木曜日

日本の歯科臨床教育の問題点

 



最近、検査を行った患者さんの治療を見て驚いた。上下左右の第一大臼歯にレジン充填されており、それ自体は問題ない。他の歯にう蝕なく、この4本の第一大臼歯に咬合面の2/3以上のレジン充填がなされ、すべての歯のレジンの一部が欠けてそこから二次カリエスとなっている。乳臼歯では、レジンを詰めた後、指で押したような治療は年配の歯科医では昔、見たことがあるが、永久歯では初めてだ。患者に聞くと一年前に治療されたと言う。もちろん、これほど歯質崩壊が大きい場合は、アンレーがフルクラウンの適用となり、レジン充填の適用ではない。ケースによっては、レジンアンレーやポーセレンにすることがあっても、流石に充填で済ますことはない。

 

患者にかなり年配の先生で治療されたのですかと聞くと、最近開業した30歳代の先生という。これには2度驚いた。一瞬、コア形成のためのレジン充填かと思ったが、治療はそれで終了と言われたという。若い時の記憶では、昔はこうしたひどい治療は年配の先生のところでした治療だった。というのは、大学六年の患者実習では、補綴、保存の先生が厳しく指導し、たとえ手が動かなくても、時間がかかっても大学での臨床レベルが常に頭にあった。そのため、卒業後に勤務した歯科医院で、そこの先生の治療を批判する先生もいたほどだ。ただ当時、青森県の先生は、1日に一人で100名以上の患者をみる先生もいて、そうした治療も無理からぬ事情もあった。

 

歯科医の治療技術が後退した時期が2つある。一つは国家試験から実習試験がなくなった時である。当時の補綴、保存の先生も国家試験から実技がなくなった結果、医局で改めて実習訓練をしなくてはと嘆いていた。実習試験のあった時は、模型を使った実技であったが、何度も何度も練習するため、医局に入ってからさらにリファインするだけでよかった。それでも6年生の臨床実習があったので、それほど臨床レベルが落ちることはなかった。

 

若手の臨床レベルが決定的に落ちたのは、歯科研修医が義務化されて時である。6年生は臨床実習をせず、国家試験勉強をすることになった。これにより患者の治療を行う臨床実習は、歯科大学卒業後、研修医になってから始めることになる。ここで問題なのは、かっての歯科大学の6年生の臨床実習と、研修医の臨床実習がどちらが中身が濃いかと言うことだ。結論から言えば、研修機関による差が大きすぎ、たとえば、弘前大学の歯科口腔外科で研修すると抜歯や全身管理はある程度できるようになるが、一般歯科の研修はそれ以外の研修機関で行う。まず一般歯科では、かっての歯科大学附属病院のように懇切丁寧に指導することは時間的に難しく、また自院の患者を見させるのは抵抗があるために、もっぱら見学のみというところも多い。同様に歯科大学附属病院でもかっての6年生ほど全部床、インレー、フルクラウンが何ケースといったケース制を取っていないところが多い。

 

アメリカの歯科大学では、開業医の半分から1/3の治療費で患者を集め、多くの患者を学生に配当している。翻って日本では、なかなか学生や研修医に見させる患者が集まらず、学生の教育に協力する患者も減っている。この点を何とかし、少なくともケース制を研修医制度に導入すべきである。現行の研修医制度では、学生の評価はあるものの、こうしたケース数が反映されることはない。最初の述べたような若手の先生は、特に例外的ではなく、よほど研修医卒業後にいい先生のところに勤めて鍛えられた先生以外は、臨床レベルはかなり低い。本来制度とは従来の制度より全体、平均レベルを上げることであり、その目的は優れた臨床診断、治療ができる歯科医の養成である。少なくとも研修医制度のなかった時代より臨床レベルを上げるためには、研修医の基本研修機関は歯科大学、歯学部附属病院が中心で、それに付随するような形で一般歯科、医学部歯科口腔外科などの研修を加える。そして全国的に標準のケース、たとえば全部床は印象から技工、装着、調整までのケースを2症例、エンド処置は抜髄、感染根菅治療を10症例、インレー、クラウンを形成、技工、装着まで10症例、抜歯も10症例など、最低症例数を決めて、研修期間内に達成するようにする。達成できない場合は、研修未終了とする。

 

こうした研修医制度へのケース制は、現行の歯科大学、研修機関からすれば、とてもできないというかもしれないが、世界中の歯科医はこうした教育を受けており、日本の歯科教育ほど臨床経験が少ない国はない。国民に良質な医療を受けさせるためには、まず歯科医が優れた臨床技術を持つ必要がある。こと歯科医師養成教育としては、世界でも最低水準であることは、誠に恥ずかしいことであろう。こうしたことを書くと、非難も多いが、それでは世界各国の歯科大学の卒業生と日本に歯科大学の卒業生、あるいは研修医修了生に、実際に患者の治療をさせて、比較すればよい。おそらく中国、韓国、台湾などアジア諸国やインドの卒業生より臨床技術は劣ると思われる。


PS; 歯質の欠損が大きく、明らかにアンレーやクラウンの適用症例にレジン充填するのは、金パラなどの金属が高いせいだという意見もあった。確かに保険治療では実質的に赤字になるかもしれないが、もしそれが原因でレジン充填をしたなら、これはこれで歯科医失格と思う。




2021年12月2日木曜日

矯正治療費 平均賃金から考える

 



矯正治療費は、国により違い、かなり高い国から安い国まであるが、基本的には平均所得とほぼ相関関係があるように思える。2020年度の国別の平均賃金トップはアメリカで69000ドル、続いてカナダが55000ドル、ドイツ53000ドル、イギリス47000ドルとなり、日本はG7で下から二番目の38000ドル、イタリアが37000ドルで最下位となる。1990年の統計では、アメリカが47000ドルに対して日本は4番目で37000ドルであったが、その後、日本の賃金の増加がほとんどなく、こうした結果となった。

 

アメリカの矯正治療費は、現在、5000から7000ドルくらいで、1990年頃から1000ドルくらいは高くなったが、医療保険で半分くらいカバーできるので、賃金の割に矯正治療費は安くなったことになる。平均賃金2位のカナダでほぼ矯正治療費はアメリカと同じくらいである。3位ドイツ、4位イギリスは、いずれも18歳以下の子供の矯正治療は健康保険が適用され、成人矯正でも民間の健康保険で30%くらいはカバーされる。調べる限りにおいては60-80万円くらいで、実際の支払いはこれの70%となる。

 

成人矯正の治療費は主要国では大体60-80万円くらいで、日本はこれよりやや高いか同じくらいとなる。お隣の韓国は、最近、平均賃金が日本を上回るようになったが、韓国の矯正治療費は日本より安くで40-60万円くらい。台湾の平均賃金は日本の約半分、200万円くらいで、矯正治療費は日本の約半分、30-40万円くらいとなる。フィリッピンの平均賃金は約50万円、日本の1/8位となるが、矯正治療費は15万円くらいで、収入に比して高額となる。インドでの平均賃金は160-180万円くらいで、矯正治療費は10-30万円と安い。アジアでは、日本と韓国の平均賃金、矯正治療費が高い。

 

日本の平均賃金はおよそ400万円になるが、地域格差が大きく、東京の平均賃金が約600万円に対して、私が住む青森県は367万円と2/3以下となる。もちろん青森県の方が老人人口が多く、一人当たりの平均賃金は東京が多くなるが、それでも感覚として賃金は2/3くらいと思われる。ちなみに青森県の平均賃金367万円はドル換算で31900ドルとなり、ポーランド、チェコ並みとなる。逆に東京の平均賃金は52000ドルくらいとなり、ベルギー、ドイツ並みとなる。ポーランドで矯正治療をした人のブログでは、総治療費は394000円で、日本よりはかなり安い。単純な平均賃金からみた矯正治療からすれば、東京の治療費は主要国並みの60-90万円くらいが相場と言えるが、青森、沖縄県のような所得の低いところでは、ポーランドあるいは韓国並みの40-60万円くらいが相場となりそうである。

 

ついでに言うと、家電や車などは全国同一値段であるが、アパート代、家賃、土地代などは地域によりかなり違うし、美容院代などサービス業に近い値段も違う。例えば、美容院でのカット料金(2020)は、東京が9位で4024円だが、これには地方ではあまり存在しない格安店も含まれているので、1位の新潟市より安いことはない。少なくとも1位の新潟市の4643円を超えることは間違いない。逆に安い都市、一位は那覇市で2133円、青森市は2900円で、4643円のおよそ60%となる。消費実態調査を見ると、一世帯当たりの1ヶ月の消費支出は。東京都が343000円、青森県が268000円、東京の78%であるが、一世帯人数が東京では1.99、青森では2.48であるので、一人当たりの消費支出は、東京が172000円、青森が108000円、63%となる。

 

給与、消費支出から見る限り、青森県は東京の2/3位となり、そうした意味では美容院のカット代が東京の2/3であるのは理にかなっている。確かに矯正治療においても材料費は全国共通の価格であるが、人件費、家賃は東京の2/3であることを考えると、矯正治療費は東京の2/3くらい、すなわち40-60万円くらいが適切といえよう。ただ多くの矯正歯科医は、こうした観点から自院の矯正治療費を設定することは少なく、治療費の地域差が少なく、東京に比べて地方では相対的に高く、治療を受けにくい状況となっている。

2021年11月23日火曜日

もし日本共産党が政権をとったら

 


日本の知識人と呼ばれる人々は、共産党などの左翼政党を支持する人が多い。政権与党、自由民主党の政策やスキャンダルに過剰な反応を起こし、日本の自由を侵すものだと批判する。例えば、日本学術会議の問題では、推薦した会員候補の一部を政府が任命しなかったということで、学問の自由を侵害する大きな問題だと騒ぎを起こしている。他にも安倍首相時代の加計学園をめぐる問題、獣医学部新設に便宜を図った問題で、民間人と政府の癒着を激しく攻撃している。

 

 こうした左翼、それを支持するマスコミ、学者は、基本的にはマルクス・レーニン主義による共産主義を支持しているが、上記のような問題は、中国、北朝鮮や旧ソビエトのような社会主義国では起こらなかったのかというと、日本以上に露骨に、規模を大きく行われており、さらにそれに対する批判も完全に禁止される。つまり日本の左翼が支持する社会主義国では、彼らが批判する日本の政治をはるかに上回る問題が日常的に起きている。

 

 もちろん左翼を支持する人々は、中国、北朝鮮、旧ソビエトの社会主義は間違ったものであり、我々が目指す社会主義国はそうしたものと全く違うものだというだろう。ただ彼らが目指すような社会主義国が実際に存在したかというと、100年以上の社会主義の歴史を見ても、多くの社会主義国は最終的には一党独裁、全体主義となり、個人の自由を制限する方向性を持つ。つまりこれまで100年の社会主義理論の実践経験から、オリジナルのマルクス・レーニン主義、共産主義自体に内包する大きな問題ということになる。

 

 例えば、立教大学の井上周八名誉教授は、中国の文化大革命を支持し、北朝鮮を死ぬまで社会主義による理想郷とし、また北朝鮮による拉致事件をでっち上げと否定した。こうした学者は、最近ではさすがに少なくはなっているが、それでも1970年代、中国の文化大革命を支持した学者は驚くほど多く、むしろ中国の当時の実情をしっかりと把握していた学者は少なかった。その後も左派とよばれる学者では、共産主義、社会主義体制に強い憧れを持つ者は多い。

 

 こうした前提で、日本共産党が、日本の政権をとり、議席数で過半数、あるいは2/3以上の議席を取った場合を考える。まず彼らは、悲願である天皇制の解体を目指すであろう。皇居始め、天皇家の資産を全て没収し、完全に民間人にすることで、天皇制を廃止する。戦後の華族廃止した方法で進めていく。現在の秋篠宮家問題のようなゴシップが続くと、天皇家に対する国民の批判も高まり、将来的には天皇家の廃止も案外すんなり出来るかもしれない。日本共産党の綱領には、アメリカからの経済的、軍事的依存からの離脱と、第九条の完全実施、自衛隊の解消が書かれており、軍事同盟がなく、軍隊を持たない国家を目指している。もし中国から攻められれば、話し合いで解決すると言うのだろう。このことは自動的に中国への隷属を意味する。すなわち、日本から米軍が撤退し、経済関係も悪化すれば、その間隙に入るのは、間違いなく中国であり、そのまま中国の傀儡国家になっていくのだろう。

 

そしてこれも彼らの最重要課題、自衛隊の廃止と日米安保条約の破棄である。ただ軍隊は、旧ソビエト、中国、北朝鮮の例を持ち出すまでもなく、権力維持のために必要であり、何か問題があれば、強力な軍隊を出動して鎮圧する。そのため、自衛隊は残すか、逆に日本軍として、より強力な存在に格上げする可能性もある。もちろん日米安保条約の破棄は、隣国、中国の望むところであり、急速に日中間の距離が近くなる。日米安保条約に代わって、アメリカからの脅威に対する日中安保条約が結ばれ、米軍基地の後に中国軍が進駐する可能性がある。こうした動きは、中国の傀儡国となる第一歩であり、政権が長期化すれば、自由選挙の廃止、学問の自由の廃止など、現在の中国のような状況となっていく。

 

 もちろんこんなことが実際に起こることはないだろうが、それでも日本共産党は存在するし、それを支持する人がいるわけで、彼らは、日本共産党はこれまで地球上に存在した共産党とは全く違う、自民党政権下の日本以上に自由に発言できる政党であると主張するだろう。ただこれは「共産党」という概念とは別物の政党であり、論理的に考えるなら、共産党を名乗るメリットは少ない。党名を変えるべきであり、それをしない限り、この党を信頼することはできないし、支持する人々も信頼できない。

 

英国共産党党員775人、フランス共産党20000人、ドイツ共産党 解散、イタリア共産党 解党、スペイン共産党 党員35000人、アメリカ共産党 党員 5000-10000人、に対して、日本共産党 党員270.000人で、衆議院で10名、参議院で13名の議席を持ち、資本主義国の中で最大の勢力である。ある意味、日本は一種の理想的な社会主義国なのかもしれない。





2021年11月19日金曜日

私がアライナー矯正をしない理由



世界的にインビザラインなどのアライナー矯正、マウスピース矯正が流行っている。インビザライン社によるとすでに1000万人以上の人々がインビザラインによる治療を行なっているという。インビザラインによる治療を進める先生方は、将来的には今のワイヤー矯正に代わってインビザランによる治療が主流になると宣言している。ただ矯正治療の主たる治療者に当たる矯正歯科専門医、あるいは日本矯正歯科学会は、こうしたアライナー治療に関しては否定的で、将来的にもワイヤー矯正の地位は揺るがないと考えている。

 

歯を動かすためには、弱い力を持続的に歯に伝える必要がある。ワイヤー矯正では、歯に接着したブラケットにワイヤーやゴムを介して歯を動かす力を伝える。ブラケットは歯の唇側、あるいは舌側につけるため、歯に対する力としては、前後、上下はもちろん、四角形のスロットと角ワイヤーによるトルクという二次元的な力をかけることもできる。理論的にはゴムを併用すれば、ほとんどの方向に歯の移動は可能となる。こうしたシステムはアメリカの矯正歯科医、アングルが考案したもので、すでに100年以上の歴史を持ち、多くの論文でその欠点、利点などが解明されており、トータルでいえば一億人以上の患者で使用したと思われる。

 

一方、アライナー矯正について、マウスピースのようなものを咬ませて歯を動かす方法はすでに50年以上の歴史を持つが、今のようなコンピューターを用いて、少しずつ歯を動かすインビザラインのようなマウスピース矯正が始まったのはここ20年くらいである。当初は、簡単なデコボコや隙間が開いた症例など限られた症例に用いられてきたが、最近では抜歯ケースも含み、ほぼ全ての症例で用いられてきた。ただ、その仕上がりには未だ大きな問題があり、ワイヤー矯正のレベルには達していない。

 

一つの理由として、アライナー矯正では、アライナー本体が歯を覆う際の力を利用するので、いったいどれくらいの力がかかっているかわからないことと、たとえアタッチメントなどの突起物をつけても、取り外し式タイプである限り、どうしても力が直接かからず、ロスがある。特に捻転などの解消は不向きである。例えばワイヤー矯正であれば、3、4ヶ月で治る30°以上の捻転も、一年以上かけても治らないことがある。また上下にゴムをつけるのも制限があり、トルクもかけにくい。昔の日本矯正歯科学会の専門医試験では、10のカテゴリーがあって、多くは抜歯ケースであるが、合否はその治療前後の資料などから判定される。以前、舌側矯正を主としている先生が全ての症例、舌側矯正で治して、この試験に提出した。見事、合格し、その先生の臨床能力の高さを証明したが、未だに舌側矯正でこのレベルになるには相当難しい。それでは将来的に、インビザラインでこのレベルに達することができるかというと、ほとんど不可能であろう。実際、日本で一番、インビザランをしている先生に、この10のカテゴリーの症例を出して、審査を受けてもらってもまず不合格となろう。

 

インビザラインなどのアライナー矯正を行うのはほとんど成人患者である。こうした患者は非常に要求が厳しく、肉眼ではわからないほどの段差やねじれを気にする。また治療期間についてもシビアで、最初に2年間と言われると、治療期間が2年を過ぎるとかなり批判される。また治療後も後戻りがあると、すぐに再治療を要求される。一番、多いのは口元の突出感が気になる患者さんで、私のところでも当初は歯を抜くのを嫌がり、非抜歯で治療したものの、口元の突出感が気になり、小臼歯を抜歯して治療した患者は数十名に及ぶ。中には一旦、非抜歯で治療を終了し、数年後に再度、抜歯して治療し直した症例も5例ほどある。アライナー矯正の多くは、非抜歯で治療するので、感覚的には半分以上の患者からこうしたクレームがきそうである。全ての患者がこうした厳しい患者ではないにしても、子供の患者に比べて相当、神経を使う。それでもワイヤー矯正であれば、簡単なワイヤーベンディングや抜歯などで対処でき、治療後、数年たっての再治療もそれほど気にならない。ある意味、患者のわがままと言えるような要求に対しても何とかカバーできるし、そうしないと患者は満足しない。

 

現在、日本矯正歯科学会では、医療広告法を遵守させるために、会員、特に認定医、臨床指導医の診療所のHPをチェックし、広告法に違反があれば、訂正を求め、従わない場合は資格を与えない、更新させない。それ故、認定医、臨床指導医の矯正歯科医院ではインビザラインの宣伝が実質できず、それ以外の一般歯科医院が派手な宣伝をして、多くの患者がそちらで治療をする。結果、治らないケースはお手上げとなり、費用と期間の無駄となる。日本臨床矯正歯科医会では、「歯科矯正何でも相談」という患者さんからの問い合わせコーナーを行なっており、このまとめが毎年送られてくるが、年々、報告書は厚くなり、インビザランなどのアライナー矯正のクレームも倍増している。おそらく今のままのペースで進めば、消費者センターへの苦情も増え、矯正歯科、とりわけアライナー矯正については特定商法取引法の適用になるかもしれない。ここまで状況が悪化すると、私個人としては、是非、特定商法取引法の適用になった方が、患者のためになるように思える。


 

2021年11月18日木曜日

日本人の雑食性

 



今朝の朝ごはんは、納豆、味噌汁、シャケにご飯といった純日本食であったが、昼は昨日食べた鶏のトマトソース煮込み(イタリア風)が入った弁当、そして夜は麻婆豆腐であった。和食、中華、洋食が日によって、混ざって食べることは日本人にとっては、特に不思議なことではなく、むしろ、毎食、和食という家庭は少ないであろう。

 

ところが隣国の韓国、台湾、中国を見てみよう。確かに日本食やイタリアレストランが増えて、日曜日や記念日に、こうしたレストランで外食することはあっても、基本的には韓国人はキムチを中心とした朝鮮料理を食べ、中国人、台湾人は中華料理を食べる。単純に割合で言えるようのものではないが、日本人は、和食1/3、洋食1/3、中華料理が1/3ぐらいと思うが、韓国人は90%が朝鮮料理、同様に台湾、中国人も90%が中華料理となる。それ以外の料理を自宅で食べることは少なく、食べる場合は外食となる。

 

それで他の国はどうかというと、タイは当然、タイ料理が主力であり、インドはインド料理、フランスはフランス料理がメインの料理であり、食べる割合も自国の料理が圧倒的に高い。アメリカはどうかというと、この国は、そもそも家で料理を作ることがなくなり、三食ともレクルト、冷凍食品という国となっている。それでもよく食べるのは冷凍ラザニアやパスタ、ハンバーガー、鶏料理などのいわゆる西洋料理が基本である。自宅で中華料理屋日本料理を作ることはほぼない。

 

明治になるまでの、日本人の食事は、ご飯、味噌汁、漬物、魚あるいは煮物といったものであったが、とりわけご飯の消費量は今の感覚からすれば信じられない量で、1日に五合は食べていた。その後、明治になっても、こうした和食を中心とした食事が続き、たまにすき焼きやカレーライスを家で作ったり、食べにいったりした。大正八年生まれの父親も、外ではカレーライスや中華料理、西洋料理が好きだったが、家では最後まで和食であった。お袋は、いろんな料理を作るのが好きで、テレビの料理番組や、本などを見ていろんな料理を作ったが、親父の食べるものは別メニューであった。母に実家のある徳島の脇町に行くと、そこでは毎日、毎日、和食で、子供心にも料理に不満があった。

 

おそらく明治になると、西洋料理や中華料理が日本に入り、少しずつお店もできて、昭和になると、外食としてそうした料理を食べることはそれほど珍しくなくなった。ただ家での食事に中に和食以外の料理が登場するのは、戦後も昭和30年以降のことで、NHKの「きょうの料理」が放送されたのが昭和32年である。この番組が家庭での洋食、中華料理の導入に大きな力を果たしているのは間違いない。実際、我が家もこの番組で紹介された料理をよく母親が作っていた。さらに学校給食でも、ご飯の代わりにコッペパンが主食で、それに牛乳やおかずが添えられた。おかずは主食がパンであるため、鯨の竜田揚げなど和食といえば和食であるが、洋食に近いものがでた。さらに近所の市場の肉屋ではコロッケやメンチカツが売られ、それらにキャベツを添えた料理が家でも出ることとなり、またインスタントラーメンの普及は、家庭でも中華料理の普及に連動したように思える。

 

根本的には、日本人の好奇心の強さと、移り身の速さ、すぐに新しいものに慣れてしまう、が関係しているが、こうした日本人の食の雑食性は、世界でも珍しいものであり、それもあって、世界的に有名な日本人のフランス料理、イタリア料理、中華料理シェフが多くいて、また東京には世界中の料理の店がある。おそらくこの日本人の雑食性によるのか、テレビ番組でも料理番組が非常に多く、また料理メニューを載せた雑誌も数多く、こうしたことも世界でも珍しいと思う。


2021年11月14日日曜日

コロナ下の日本矯正歯科学会大会

 


 今年の日本矯正歯科学会は、学会の臨床指導医資格sの更新のためだけに参加した。コロナ対策のため、今回の更新では、症例の模型などの資料は宅急便で送る方法も可能となった。ただ審査後の修正時間に会場に来ないで、もし修正箇所があった場合は、自動的に不合格となる。そのため、その日の朝10時の修正時間に行けるように前日に横浜に行き、次の日の結果を見てから帰る計画をした。結果は見事合格で、修正箇所はなかった。ただ隣の知人の先生は修正があったようなので、結構、修正が必要な症例もあったのかもしれない。昨年の更新はなかっただけに、今年、更新できなくなれば、資格が失効となるだけに、修正にこられなかった先生はどういう対応をするのであろうか。

 

 そうしたこともあり、学会自体は参加しないで、昨日と今日、オンラインで講演を聞いた。特に関心があったのは、記念シンポジウム、「アライナー矯正の光と影確」の講演で、座長の槙先生が言っていたように、演者にはアライナー矯正の失敗ケースを出して欲しいと要望したが、あまりそうしたケースの提示がなかった。特別講演では予五沢先生がアライナー矯正を完全に否定していたので、学会としてももう少し、アライナー矯正の問題点を提示して欲しかったに違いない。外国人の演者の中にはかなりアバウトな人もいて、よく見ると問題がある症例を平気でうまく治ったと自慢する先生がいる。今回の先生もこうした傾向がある先生がいて、これなら槙先生の症例を提示してくれた方が良かったと思う。予五沢先生も言っていたが、うまく治った症例ばかり見せるのは無意味であり、ことに今回、シンポジウムで提示された症例はたまたまうまく治った症例であろう。流石に演者も自覚しているようで、同じような症例でもこのようにうまく治らないと言っていたが、ワイヤー矯正では、抜歯あるいは抜歯部位を追加する、あるいは外科的矯正で対応すれば、確実に治せるが、アライナー治療だけで治せない症例は数多い。結論からすれば、アライナー矯正だけで確実に治せる症例は限定されており、ワイヤー矯正にするかアライナー矯正にするかを診断できる先生は、そもそもアライナー矯正を勧めない。逆にいえば、アライナー矯正を勧める先生はワイヤー矯正をできないといえよう。当然、これからもこの問題は増えよう。

 

 他にはJOSフォーラムも関心があった。特に昨年、試験を受けた日本矯正歯科学会、日本矯正歯科協会、日本成人矯正歯科学会の統一試験後の動向が気になっていた。昨年、症例審査とペーパー試験を受けたが、一年経ったにも関わらず、まだ確定していない。もともと日本矯正歯科学会単独であれば、何の問題もなく、そのまま日本歯科専門医機構の審査にパスしたはずだが、厚労省から三団体で十分に話し合った結論を出すよう指示があった。どうも政治力のある先生がいて、こうした結果となった。そのため、十数年前からこの三団体で話し合いが行われ、ようやく昨年、統一試験が実施されたが、ここにきて、日本矯正歯科学会以外のある団体の認定医の受験資格が日本歯科専門医機構の条件に合致していないことがわかった。このままではせっかく行った統一試験も白紙に戻りそうで、まだまだ矯正専門医の道は厳しい。一方、今後、厚労省の認めた日本歯科専門医機構の矯正歯科専門医しか、広告に載せられないようなので、もし、うまく進み矯正専門医が認められると、今度はこれまでHPで載せていた日本矯正歯科学会認定医、あるいは臨床指導医の名前は載せられなくなり、学会としては日本矯正歯科学会認定医の記載削除を求めることになる。認定医は矯正歯科専門医をとるための前提であるが、臨床指導医の意味が全くなくなることとなり、いずれ廃止となるかもしれない。

 

 私自身、そろそろ引退も視野に入る年齢なので、こうした学会、あるいは専門医に関しては、あまり関係がないが、それでも将来の矯正歯科臨床を考えると、きちんとした専門医制度ができ、国民にとって安心して矯正治療を受ける仕組みになってほしい。マルチブラケット装置による治療は、かなり経験と知識、あるいは習得に時間がかかり、矯正治療は専門医でという流れができたが、再び、アライナーの登場で、一般歯科医で治療されるようになり、トラブルも増えてきた。また小児の矯正治療の健康保険化もようやく端緒に尽き、個人的には若者の健康保険離れを防ぐ意味からも将来的には健康保険化を望みたいが、そうした折も矯正歯科の専門医制度が必要となろう。

2021年11月11日木曜日

マイ ブーム 台湾

兄弟、親子同士の口げんかがすごい

パッケージはいまいちだが、味はベリーグー


 最近、台湾にはまっている。まず小説、呉明益の「自転車泥棒」(文春文庫、2018)が面白く、新刊の「歩道橋の魔術師」を購入、また「味の台湾」(焦桐、みすず書房、2021)を今読んでいる。これは台湾の文学者で、美食家の焦桐さんが、台湾各地で食した台湾料理を語ったもので、何しろこの焦さんは美食家でありながら、大食漢である。サバヒーという台湾を代表する魚の料理が好きで、毎朝六時に13キロ離れた店まで食べに行って、そのあまりの熱意に奥さんから浮気を疑われたという。この店に行くと乾煎魚腸を1皿、魚皮湯を二杯、食べ終わると魚粥を一杯、さらん魚頭湯を一杯頼むという。全てサバヒーという魚を使った料理である。この本には台湾各地の美味しい料理と店が紹介されているが、文章がうまく、ゆくゆくは行きたい友人のいる苗栗、台中市の店には鉛筆で全て印をつけてネットでチェックしている。なかなか読み進まない。

 

 次に映画、これは十数年前から、候孝賢監督の「非情城市」に感激し、そこ頃入っていたツタヤのレンタルでほぼ全ての作品を見て、さらに「クーリンチェ少年殺人事件」などの台湾ニューシネマも見るようになり、次第にツタヤの「台湾映画」で検索できる映画をほとんど見るようになった。流石に台湾ドラマまで見ることはなかったが、1ヶ月前にネットフリックスの台湾ドラマ「一千回のおやすみ」にハマり、その後、「ひとつの太陽」、「弱くて強い女たち」、「君が最後の初恋」などの映画や、「返校」、「同級生マイナス」、「ダーダオチェンの夢」、「双城故事」などのドラマも見たが、それほど面白くはない。ただ研修医に来ている台湾の先生のおすすめ「お花畑から来た少年」というふざけたタイトルだが、これは台湾の変わった習慣がわかって楽しい。今は「時をかける愛」を見ている。

 

 さらに昔見た台湾映画をもう一度、見ようと思い、録画していた「恋恋風塵」、「ステキな彼女」、「童年往時」などの候監督のDVDを見ようとするも、新しい機械では読み取れず断念し、昔買った「非情城市」、「ヤンヤンの夏の思い出」、「ミレニアム・マンボ」、「百年恋歌」などのDVDをこれから見ようと思う。個人的には「あの頃、君を追っかけた」、「セデック・パレ」、「恋恋風塵」、「若葉のころ」、「言えない秘密」などのDVDやブルーレイを買いたいところだが、これがどういうわけが中古のものでも高い。例えば、タイムスリップものの名作、「言えない秘密」の中古DVDでも2万円くらいしている。「若葉のころ」もレンタル用のかなり使い込まれたものでも、新品価格より高く売られている。一種の台湾映画ブームが起こっているのだろうか。これだけネット動画が普及しているが、全体的にDVD価格は高くなっている。見たい映画をすぐに観るにはDVD、ブルーレイの方が便利なためであろう。うちの家内は、韓国ドラマにはまっており、私も時々韓国ドラマを見るが、台湾ドラマは韓国ドラマ以上に出演者が被り、同じ俳優がいろんな番組に出てくる。

 

 さらに台湾スイーツといえば、あれほど流行したタピオカティーも下火になったが、個人的にはパイナップルケーキーとタロイモパイは捨てがたい。パイナップルケーキーで有名なのはサニーヒルズのもので、日本でも東京の表参道でも売られ、おしゃれなパッケージなので、贈答用でも喜ばれる。ネットでも購入することができるので時々、購入している。最近、いただいたのがタロイモを使ったスイーツ、芋頭酥で、これはアンコの中に餅が入っていて、台湾のスイーツだが、日本の味がして全く抵抗感がない。アマゾンでも買えるようなので、一度注文してみようと思うが、もらったのは台中市の躉泰という会社のもので、台中市のお土産として有名なものらしい。台湾と日本は近いので、こうしたお店の直販店も是非、作って欲しい。

 

 先日も台湾から来た研修生と自宅で、「お花畑から来た少年」を見ていたが、台湾語と北京語がドラマの中で、混ざって使われており、最近では、若者は台湾語をあまり使わず、中国語しかわからない人も出ているらしい。本屋、雑誌など全て中国語で書かれており、台湾語は会話にのみ使われる言語となり、将来的には消滅する可能性もある。苗栗県の客人が多く、ここの料理は味が恋だとか、台湾の中でも料理が一番うまいのは台南で、全体的に甘いといったことがこのドラマでもわかり、台湾のこの先生も私にマイブーム、台湾に驚いていた、

2021年11月9日火曜日

植野食堂 技術の継承

 


 面白くない番組しかないときに、よく見るのがBSフジの「植野食堂」である。「dancyu」の編集長、植野広生がよく行く普通の食堂の名物料理、人気料理の作り方を教授してもらい、それを認定してもらい、そのレシピをテレビで公開している。全く同じ材料を使い、隣に食堂の主人がいて指導しても、その店のいつもの味にはならず、ちょっとした茹で時間、炒め方法で味が全く違うというのがよくわかる。最後にレシピを紹介しているが、おそらく紹介された店と同じ味になることはないだろう。

 

 ただ同じ人が、その店の厨房に入って、3ヶ月、特訓すれば、どうであろうか。かなりの確率で、その店の味を習得することはできるだろう。レシピ、動画+経験が必要で、これが揃うことで、料理の継承が可能になるのだろう。一方、店主の高齢化と後継者がいないことから、お客がいても閉店を余儀なくされる店が多い。中には常連客や息子が、後継者として店を継続することもあるが、多くは馴染みの客に惜しまれて閉店することになる。

 

 こうした店は一度、閉店すると2度と復活することがない。ここでは料理店について述べたが、近所にリンゴ用の脚立を作っているところがあったが、最近は閉まったままだし、隣にはアケビ細工の店があり、ここは幸いにもかろうじて後継者ができて、製作している。こうした伝統品の製作まで含めれば、数多くのものが、後継者がおらず、そのままなくなる。惜しいことである。

 

 ここで提案したいのが、技術継承会社、機関の創立である。おそらく料理分野、伝統工芸分野のほか、農業分野などがあるように思われる。料理分野では、高齢のために閉店する人気店で、その名物料理のレシピ、作り方をマスターする。もちろん、集客性の高いレシピには店主に高い金額を払う。技術継承会社のスタッフが数ヶ月、ここでバイトしてその作り方をマスターする。もしその料理を、自分の店のメニューに加えたい人には、会社に料金を払い、担当者が同じ味になるまで指導する。伝統工芸分野は会社としては採算がとりにくい、習得に時間がかかるため、会社として扱うのは難しいかもしれない。むしろ国、県、市町村などが経費を出し合って、若手に継承させた方が良いかもしれない。例えば、刃物作りは最近では人気が出て若手も、その継承する場合もあるが、鍬などの農機具、大工道具などとなると継承者は少ないであろう。弘前では伝統工芸品、津軽塗はこうした補助を行って技術の継承を行なっているが、リンゴ籠や、リンゴ用の脚立など、伝統工芸品と呼ばれないものは、こうしたシステムもない。農業分野についても、古い種類の地場野菜あるいは海外の変わった野菜の種と栽培法を生産者から習い、それを希望者に料金を取って教える。ただ古い地場野菜、果物は育てるのが難しく、その割に価格が低く、販路も限られ、消滅するものもあると聞く、そうした絶滅しそうな品種を育て継承する、あるいはすでに絶滅した野菜、果実を復活するような試みは民間では難しく、公的機関で行なって欲しい。

 

  他にも高齢のために技術の継承が途絶えるものは、色々あると思う。少なくとも、市町村がそうした仕事を把握し、全国に公表して、誰か継承者を探すような仕組みを持って欲しい。場合によっては金銭のやりとりがあってもいいが、市役所内に地域の技術継承を相談するセクションがあり、もし病気などで閉店する場合は、そこに連絡するようにシステムが欲しい。


2021年11月7日日曜日

男女の相性2

 


 昔といっても、私の姉の時代、1970年代までは結婚はお見合い結婚でする場合が多かった。確率で言えば、50%がお見合いで、50%が恋愛結婚で、姉は見合い、兄も見合い、私が恋愛結婚であった。母や父の時代、昭和20年代で言えば、ほぼ90%が見合い結婚で、残り10%が恋愛結婚であった。

 

 母親の実家の徳島県脇町で言えば、中継ぎの婆さんがいて、町内に好きな人がいると、その婆さんに両家の間を持ってもらう。無事、結婚すれば、婆さんに仲介料が出るようなシステムがあった。これなど恋愛と見合いをミックスしたようなものであるが、両家の家柄があまりに違う場合は、この婆さんが結婚は無理だと断っていたようだ。

 

 お見合い結婚といえば、まずお互い写真だけで選び、お見合いをして、せいぜい3、4ヶ月、付き合って結婚する。もちろん通常、その間、肉体関係はない。普通、考えれば、お互い愛し合って結婚する恋愛結婚の方が、知らないまま結婚する見合い結婚より離婚は少ないように思えるが、周りを見渡してもそういうことはなく、むしろ恋愛結婚の方が離婚率が高いように思える。

 

 吉村昭さんの小説「落日の宴」は、徳川幕府の幕臣、川路聖謨の一生を描いた名著であるが、川路はその生涯四人の妻を持った。勘定奉行という幕臣の中でもトップに近いポジションであり、日露和親条約などに大きな業績を上げた人物であるが、性格は極めて真面目で、鍛錬を欠かさず、カゴに乗れる身分でありながら、徒歩による移動を好んだ。性格も素晴らしい。

 

 最初に妻、エツと結婚したのが、川路19歳の時で、エツは2年後に病死した。その後、22歳の時に、二番目の妻、やすと結婚し、長男、長女、次女を生み、穏やかな生活が続いた。ところが川路の昇進につれ、もともと男勝りのやすは、川路の公務を補佐する用人に厳しい命令をするようになり、川路もこうした妻の態度をたしなめたが、言うことを聞かない。次第に家の中の雰囲気が暗くなり、用人、中間が次々と辞める事態になると、堪りかねて離縁した。その後、結婚はこりごりと感じたが、さすがに四人の子供の世話を実母に任せるのは困難となり、今度は温和な性格の女性を、と望み、三番目の妻、カネと結婚する。ところがカネは口数が極端に少なく、一日中、庭を眺めているような性格で、多くの雇い人に指示することもなく、父母、子供の世話もしない。流石にこれはダメだと、またもや離縁する。度重なる結婚の失敗は自分に非があると考えたが、家のあまりの状況に見かねて知人が紹介して結婚したのが、サト(佐登)である。この最後の妻、サトとは生涯、最愛の仲の良い夫婦となった、川路が奈良奉行の時に、女が夫以外の男と関係を持ち、そのもつれで女が夫を殺すという事件があった。川路がどんな美女かと想像していると、白州に現れた女はまれなほどの醜女であった。自宅に帰ると、川路は妻に前に座り、何度も有難や、有難やと頭を下げ、頭が狂ったかと皆に思われたが、川路曰く、美しいサトと妻にしているのがもったいないとさらに頭を下げつづけた。用人はじめ、皆のものが大声で笑ったというエピソードがある。旅先からはまめに妻に手紙を最後まで出し続けた、

 

 川路のように四人の妻を持つことはまれなことであるが、最終的に、本当に相思相愛の仲の良い夫婦になったのはそのうちの一人であった。おそらく恋愛結婚で、激しい恋をしたとしても、最後まで仲睦まじく添い遂げるのは四人に一人くらいで、これだけは運の良し悪しで、相性としか言いようがない。全く生まれも育ちも違う者同士が、死ぬまで相思相愛でいるのは相性が本当に良かったのだろう。


2021年11月4日木曜日

古書店を騙った違法中国サイト



 

   須藤かくと阿部はながアメリカのイリノイ州で撮った写真のオリジナルが最近見つかった。「Brown Books」という古書店で1250ドルというとんでもない価格で売られていた。こんなものを買うのは、須藤かくの研究者の私くらいのものだと思い、自分では思い切って800ドルなら買うとこの古書店にメールをした。ところが古書店のオーナーは強気で、20%オフなら売るという。およそ1000ドルで、キャビネ版の小さな写真にしてはこれでもかなり高い。そこでさらに30%オフなら、即刻に買うと返答すると、そうした駆け引きはしないとピシリと断られた。まずこんな馬鹿げた価格で買う人はいないだろうとタカをくくっていたところ、しばらくするとsold となっていた。驚いた、私以外にこのような高い値段で、ほどんど無名の肖像写真を買う人がいたのか。おそらく博物館や大学ではこうした価格で買うわけはなく、個人のコレクターが買った可能性がある。

 

 ただ、この場になっても、売れていないのに売れたように見せかけたとのだと勝手に思っていた。その心の隙間に入り込むように「Fanbety」というサイトが見つかった。1250ドルのこの写真を70ドルで大幅に値引きするという。もともと、この写真の正当な価格は70ドルがいいところだと考えていたので、1250ドルでは全く売れないので、ここで70ドルで売ったのだろうと解釈した。すぐに買うと返事をし、そのままカード決済した。

 

 

 ここまではラッキーと考えていたが、買ったにも関わらず、制限時間の表示を消えない。メール直後にこの会社から登録がなされたとの折り返しメールが来ていたが、どうも怪しい。ここで青森中央学院大学の北原先生のフェイスブックを思い出した。欲しかった本が日本の古書店で安く売っていたので買ったが、この書店は違法サイトで、騙されたとの記事である。まさか古書店でこうした違法サイトがあるとは知らなかったが、インターネットで調べると、違法サイトは、アドレスの最後が、「.top」であることが多いとなっており、このサイトも中国の違法サイトと断定した。

 

 すぐにカード会社に調べてもらったが70ドルは引き出され、回収は難しいという。カード決済を中止し、預けていた通帳からすべての金を引き出した。そして番号を変えて新しいカードを作ることにした。

 

 ダイソンの掃除機が2万円、ロレックの時計が3万円などのメールが時々来るが、こんなの違法サイトに決まっている、買う奴がいるのかと嘲っていた自分がまんまと騙された。おそらく後日、Brown bookedHPに載っている写真をコピーして送ってくると思うが、他の古書店の販売実績を調べて、高い価格で売れた実績のある古書の写真と説明をコピーして自分のHPに載せているのだろう。巧みである。中国人は本当に騙しの天才である。

 


こうして騙されたわけであるが、それでもいまだに誰が買ったのか非常に気になる。私の場合はもし買えれば、横浜共立学園か、横浜の海外移住資料館に寄贈しようと思っていたが、少なくとも死蔵して欲しくない。 

2021年10月20日水曜日

六甲学院 音楽の本田先生の名曲イントロ試験

カンカン奏曲 タータラタララー



タータタン タ タタタタター 11分過ぎ


              左卜伝 やめてけれ 5分過ぎ


 六甲学院の音楽の本田周司先生は、数ある先生のうちでも、とりわけ変わった先生で、生徒には絶大な人気があった。音楽才能の豊かな先生で、六甲学院の第二校歌に位置付けられる六甲学院賛歌など30曲近い歌を収めた歌集があるが、そのほとんどを本田先生が作曲した。また吹奏楽部の顧問として神戸市、兵庫県でも多くの賞を獲得し、さらに六甲学院創立五十年を記念して長崎で処刑された日本二十六聖人をテーマとした「交響的序曲 長崎への道 第三番」という五十分もの大作を作った。本田先生の影響で音楽の道に進んだ卒業生も多い。

 

 記憶では、高校生になっても本田先生に音楽を習ったと思っていたが、どうやら間違いで音楽は中学3年生までであった。その中学3年生の時に行なったのが、名曲イントロ試験である。授業内容はだいぶ忘れたが、数回の授業で、本田先生が選曲した30 曲ほどの名作曲の一部を一曲、30秒から1分ほどテープで流し、その作曲者名と曲名を覚えさせた。そして後日、その中から20問ほど聞かせて答える試験である。今なら後で、You-tubeで調べれば、簡単に覚えられるが、当時はそうしたものもなく、曲のポイントをノートに記入して覚えていく。スコアーでも書ければ、楽であろうが、そうした才能もなく、例えば、「セルビアの理髪師 序曲」は、当時、流行っていた左卜伝の「老人と子供のボルカ」から“やめてけれ、やめてけれ”と覚えたし、ビゼーの「カルメン 間奏曲」は、“カンカン奏曲、タータララララー”と覚えた。またハイドンの「トランペット協奏曲」に至っては“タータタン タ タタタタター”という暗号のようなもので記載され、家に帰って見ても全くわからない。当時、ソニーレコードからクラシック名曲100選という名曲のさわりだけをまとめたレコードがあり、購入したものの、本田先生の選曲にはあまり有名でない曲もあり、こうしたレコードに入っていない。

 

 それでも何とか覚えて、本番の試験はかなりいい成績であったと思う。その後、何かの折に、この時に覚えた曲が脳裏によぎり、なかなか忘れない。大学に入って、一時、音大の女学生と付き合ったことがあるが、曲を覚えているために、全くクラシックを聴いたことがない私でも話が通じたし、弘前に来ても流れている音楽を聴いて題名を当てたことから弘前交響楽団のメンバーから感心されたこともある。

 

 今回、こうしたこうもあり、32期のフェイスブックで本田先生の名曲イントロ試験にでた曲を同級生に聞いたところ、いっぱい出てきた。他の同級生も50年以上経つのに未だに覚えているのだろう。一応、未確定のものも含めて下に挙げてみる。

 

 

1.     シャブリエ 「狂詩曲 スペイン」

2.     プロコフィエス 交響曲「キージェ中尉」

3.     ロッシーニ  歌劇「セビリアの理髪師」序曲

4.     ビゼー 「カルメン」間奏曲

5。 ハイドン 「トランペット協奏曲」

6.     コダーイ 組曲「ハーリ・ヤーノシュ」II, 音楽時計

7.     ドボルザーク 交響曲「新世界」

8.     サラサーテ 「チゴネルワイゼン」

9.     スメタナ  「わが祖国  モルドワ」

10.モーツアルト 歌劇「フィガロの結婚」序曲

11.バッハ 「G線上のアリア」?

12.チャイコフスキー 「1812年」序曲?

13.シューベルト ピアノ五重奏「ます」?

14、 サン・サーンス 交響詩「死の舞踏」

 

 手元にある中学1年、2年、3年の通知簿を見てみると、3学期の音楽の成績は99点、100点、100点と信じられない点数がついていて、おそらく本田先生のこと、全生徒に99から100点をつけたのだろう。優れた教育とは、生徒の記憶に残る教育であり、こうして50年経っても今だに忘れていない試験は、優れた教育であり、本田先生は優れた教師なのだろう。

 

これ以外にも本田先生の名曲イントロ試験の曲があると思うので、是非、お教えください。


ps:10/30   歯磨きをしていて急に思い出しました。「タタータタータタータ」、サン・サーンス「死の舞踏」。この曲など、まずこの試験以外でほとんど聞いたことがない。今、人気のある韓国ドラマ「イカゲーム」に出てくる参加者の起床時のテーマ曲は、ハイドンの「トランペット協奏曲」である。