2012年8月12日日曜日

中国の矛盾

 世界で最も過激な資本主義国は中国である。資本家が労働者を摂取するという露骨な、原初的な資本主義が現出し、大金持ちの高級車が貧乏人を蹴散らすような状態となっている。貧富の差が大きく、相続税や贈与税もないため、富は親から子へと受け継がれ、海外に留学する子供達は高級車を乗り回し、日々遊び回っている。貧困層への富の再分配、還元はなく、日本の生活保護のような制度や、医療保険も基本的にはない。教育にも非常に金がかかる。貧困層は日々食べるだけで、病気になったら、民間療法に頼るしかないという、社会主義の理想とは真反対の状況となっている。

 それでは、かってのようなすべての人民に食、住、医療、教育が保証されていた時代の方が国民は幸せだったかというと、どうも違うようで、少なくとも、家庭にテレビがあって、ごちそうを食べ、休日には遊びに行くという国民生活の質は、向上したように思える。あのまま社会主義を国是として自由経済に移行しなければ、未だに北朝鮮のような生活だったと思われる。そういった点では、社会主義下の資本主義経済という絶対矛盾を断行した鄧小平のやり方は、国民の生活向上の点では間違っていない。

 さらに共産党一党独裁の体制は、幹部の汚職の負の面があるが、あれだけ広い領土をまとめるためには、権力の集中はある程度必要であろう。もし民主主義的な選挙が行われ、多数党による政治が行われていたら、相当な混乱があり、国としてはまとまらず、分裂していた可能性がある。一時、中国共産党は、戦後長く続いた日本の自民党の55年体制を研究した。同じ政党が事実上、ほぼ独占して政権を38年間保持した。この期間、すなわち昭和30年から平成6年までの期間、日本は経済的に大きく発展し、国民の幸福にも繋がった。現在、中国は毛沢東のような絶対的な指導者は益より害が多く、集団的な指導体制を行っているが、市町村レベルでは汚職の温床となるため、民主的選挙により指導者を選んだ方がよいだろう。見合い結婚より恋愛結婚の方が幸せかというと決してそうではなく、革新を謳った民主党の体たらくを見るにつれ、アジア諸国においては、ある程度中央集権的な政治状況がいいのかもしれない。

 ただ現状の中国の現状は、非常に脆く、インターネット、マスコミをいくら規制しようとしても、貧富の極度の差、汚職は国民の大きな不満になるのは確実であろう。日本でも大正から昭和の時期、こういった不満の声が結局は515事件、226事件、その後の日中戦争、太平洋戦争に至ったことを考えると、中国でもナショナリズムの台頭と軍部の拡大に繋がる可能性はある。国内の不満のはけ口を外部に求める。ここは日本をモデルに、まず内需の拡大、一番いい方法は、医療、年金など社会主義的な政策をとることであろう。現在、種々の試みがなされているが、未だに医療の皆保険制度は確立されておらず、また年金制度も崩壊したままとなっている。先進国に仲間入りするためには、金はかかるが、これに手を付けざるを得ない。所得、贈与、相続税の累進課税、かって日本では高額所得者では実に70%の税率がかけられた。日本でもこういった社会主義的な政策がなされたことを考えると、本家の社会主義国ができないことはない。金持ちからの富の再分配は国民の不満を解消する唯一の方法であろう。さらには、軍備への過大な支出は、旧ソビエトを例に出すまでもなく、国家財政には大きな負担となる。周恩来はかって覇権国家を目指さないと言ったが、最近の中国の軍部の動きはこれと逆行している。

 中国の経済発展はここにきて停滞傾向を示しているが、外需から内需への転換、および医療、年金、福祉、教育などへの社会主義的な政策への回帰、市町村レベルの民主主義化が今後の大きな課題となろうし、実際そういった政策に着手している。日本はその点、大きなモデルとなろう。

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