2007年2月20日火曜日
ブラケット2
1940,50年ころからば、貴金属合金のワイヤーはあまりの高価なので、次第にステンレスやニッケルコバルト合金のワイヤーが使われるようになりました。アングルが発明した幅に狭いシングルブラケットは歯のねじれをとるのが非常に難しく、その頃から幅の広いツインブラケットが多くなりました。ブラケットの幅が広いと中心からの距離が長くなり、それだけ弱い、持続した力をかけることができます。一方、ツインブラケットはブラケットとブラケットの間の距離が長くなり、今度は歯と歯のずれをとるのが難しくなります。ステンレスやニッケルコバルトのワイヤーは自由に曲げることができるため、各種のループを曲げて、より弱い力が持続的にかかるように工夫されました。最新のワイヤーは弱い、持続した力を出すことができますが、ループを用いた方法はこれら最新のワイヤーより歯を容易に動かせるため結構今でも多用します。最新のツインブラケットもほぼ1950年ころのものと基本は同じです。
一番違うのは、それまで歯に金属のバンドを巻いていたのが、現在では歯に直接ブラケットをつけれるようになったことです。ダイレクトボンディング法というのは歯の表面に弱い酸ででこぼこを作り、それを支持としてブラケットを接着剤にて直接つける方法です。この方法によって一本一本バンドをまくという大変な手間と技術が軽減されただけでなく、虫歯の発生も減少しました。何より見た目が大幅に改善されました。透明あるい歯と同じ色の審美的ブラケットや舌側ブラケットなどもこの技術がなければ出現しなかったと思われます。実はこの矯正歯科における画期的な方法を発明したのは、日本人で、東京医科歯科大学の三浦不二夫教授です。1971年?のセントルイスでの全米矯正歯科学会で実演講演が行われました。非常な衝撃を与えたようです。さらにすごいのは、プラスティックでできた世界で初めての透明な審美ブラケットを同時に作り、この実演に用いたようです。その後、この方法は急速に普及し、現在、バンドを巻くのは奥歯くらいになっています。私が大学にいた80年代にはバンドを使うことはなく、当時、九州歯科大学が新人教育の一環としてバンドを使うと聞いてびっくりした記憶があります。さらに2、3年前の矯正専門誌の症例発表でバンドが使われている症例をみたことがあり、まだこんな方法をしているところがあるのかとあらためて驚きました。
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