2007年2月25日日曜日

ブラケット3(セルフライゲーションブラケット)



ブラケットが歯に直接接着することができるようになると次々と新しいブラケットが出てきました。セルフライゲーションブラケット、リンガルブラケット、審美ブラケットなどがそうです。ここでは順を追って説明したいと思います。
アングル先生によりブラケットの基本的な形態が開発されましたが、ワイヤーとブラケットを結ぶのは、もっぱら細い金属のワイヤーでしばっていました。合成ゴムの発明に伴い、細い輪ゴムのようなものも使われますが、基本的には現在もリガチャーワイヤーという細い針金で縛っています。これは取ったり、つけたりするのは時間がかかり、また切った先が口の中を傷つけたり、ドクターの指にささったりします。そのため早くから縛らないで、ふたをするようなブラケットが考案されました。これをセルフライゲーションブラケットと呼びます。一番最初の製品はRussell Lockと呼ばれるもので早くも1935年に発表されています。現物は知りません。その後、Edgelok(オームコ 写真上)が1972年に発売されました。このブラケットは丸い型をしたもので、特殊な器具を用いて上半分が開くようになっています。私がいた鹿児島大学でも早くからこのブラケットを使っていたようで、私がいた頃はすべてこのブラケットで治療していました。取り外しが非常に簡単で、いいブラケットですが、出現が早すぎたのでしょうか、日本でも鹿児島大学以外は全く使用していなかったと思います。丸くてちょっとかっこ悪く、またメタルのため患者からはあまり評判はよくなかったと思います。その後、Mobil-Lock(Forestadent 1980),これはねじで開閉をするものや、Activa(A-Company 1996)、最近ではDamon2(オームコ 2000)などが発売されました。いずれもドアあるいは窓のような構造で溝に入ったワイヤーを閉めるものでした。
一方、これとは少し異なるセルフライゲションブラケットがカナダのメーカーから発売されました。Speed ブラケット(1980 写真下)は単に窓のようなもので閉めるだけでなく、この窓自体が力を発揮するような仕組みになっています。前に述べたように幅の狭いシングルブラケットは歯の捻転をとるのが非常に難しいのですが、このブラケットはブラケット自体の力で捻転を取ることができるため非常に小さいものになっています。写真のものは旧型ですが、最新のものはバネが超弾性のものを使用しており、サイズもさらに小さくなっています。メーカーは小さな機械が入ったブラケットと宣伝していますが、画期的なものと思います。おそらく世界最小のもので、ブラケット周囲の歯磨きも大変しやすくなっています。現在、日本で取り扱い業者がないこと、従来と異なる治療概念、価格が高いこと、審美ブラケットには見た目は劣ること、開発者のハンソン先生が飛行機嫌いで講演がアメリカ、カナダに限られることなどから日本での普及度は低いようです。十和田のタカヒロ矯正歯科の佐々木先生は直接、ハンソンのところに教えをこいに出かけ、このブラケットを積極的に使っています。症例数は日本でも屈指と思います。
セルフライゲーションブラケットは、前者(Edgelok,Damon)のようなふたを閉めただけで力のかからないpassive (静的)タイプと後者(Speed)のようなactive(動的)タイプに分かれます。

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