2007年12月16日日曜日

インプラント矯正


歯を動かす場合、動かしたい歯だけでなく、動かしたくない歯も動きます。抜歯をして、前歯を中に入れたいと思っても、奥歯も前に動きます。このことを固定といって、奥歯をどれだけ動かさないようにするかで、最大固定、最小固定などと呼ばれます。とくに問題になるのは、いわゆる出っ歯(上顎前突)の症例で、多くの場合、上の奥歯を動かさないようにして前歯を最大限後ろに送るように計画されます。

従来は、ヘッドギアーと呼ばれる、ベルトや帽子のような装置を10時間程度使用してもらい、奥歯が前に寄らないようにしていましたが、なかなか大変で、とくに成人にその装置の使用を勧めるのには抵抗がありました。

10年ほど前から一部矯正医がインプラントを固定源にして歯を動かす試みをするようになりました。歯が無くて、そこにインプラントを入れる症例などに限り、それを利用して歯を動かしていました。その後、矯正用として小さなネジタイプのインプランやチタンのプレートを用いたより強固な固定のできるものが登場しました。この分野での韓国の企業の躍進はすさまじく、ここ数年は数多くの矯正用のインプラントが登場しました。現在では一般の歯科インプラントと区別してTAD(テンポラリーアンカレッジデバイス)と呼ばれています。矯正期間中の1、2年くっついてくれればいいからです。

当院でも2,3年前から利用し、ようやく終了患者も出てきました。固定がきっちりできるため、かなり計画通り治療ができ、助かっています。一方、脱落するケースも多く、特に骨の未成熟な成長期の患者さんへの使用は禁忌となっています。成人、20歳以降の患者さんのみ限り用いています。ヘッドギアーのような装置を使わなくて楽だと思うのですが、患者さんによっては手術が怖いのか、拒否されるひともいます。当院では矯正治療で抜歯する際に、口腔外科の先生に頼んで一緒にインプラントを入れてもらうようにしています。

矯正用インプラントは、上顎前突の多いアメリカでは今最も脚光を浴びており、専門誌でもその特集ばかりの1年でした。ただ矯正用インプラントが登場したからといって矯正自体の基本は変わるものではありませんし、小児の治療には使えません。

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