2008年5月5日月曜日

歯科の専門医制度



5月1日に厚労省から広告可能な専門医についての発表があり、医科では整形外科専門医、眼科専門医や総合内科専門医など50の専門医が、また看護師ではがん看護専門看護師、小児看護専門看護師など26の専門医が告示できるようになった。

一方、歯科では口腔外科専門医、歯周病専門医、歯科麻酔専門医、小児歯科専門医のわずか4つのみである。矯正歯科専門医もまだ広告可能になっていない。もちろん20年以上前より歯科でも各学会は、認定医や指導医のシステムを作り、専門医制度への取り組みを行っていた。ところが歯科補綴専門医(入れ歯や冠をかぶせる)や歯科保存専門医(歯の神経の治療)は日本歯科医師会の反対で、告示ができない。その理由として、別にこれらの科目は歯科医なら誰でもやっていることで、とくに専門医が必要でないということである。また矯正歯科専門医は3つの団体の足の引っ張り合いで意見調整がなされていないのが現状である。歯科で公示可能な専門医数が少ないのは結局は内部の足の引っ張り合いによるものであろう。

歯科はもともとそんなに細かく専門を作る必要はないと意見も多いが、日本看護学会のそれをみると、病院経営者がそれら専門性を持った看護師を雇うことでより診療の内容を高めようとする意図が見える。すなわち専門性の資格があることで、看護師の臨床能力や知識の評価の指標とする。またこれらの専門性をもつ看護師をより専門性を発揮できる領域に配置でき、結果的には病院自体の診療内容の向上が図られる。当然、給与などの差も生じよう。

アメリカではボードという制度が古くからあり(1929年創立)、矯正歯科ではペーパー試験以外に、数種類の症例を前もって選択して、治療終了後にそれを得点で評価する臨床試験に合格すれば、ABO(american board of orthodontist)というボードが得られる。これは名誉職のようなもので、それがなければ矯正専門で開業できないといったものではないし、患者にもABOの存在を強く公表している訳ではない。通常、矯正歯科医は専門開業して次の目標としてこのボードを狙う。ヨーロッパでも数年前から同じようなボードができている(european board of orthodontist)。

今度の医療広告のガイドラインでは、標榜科名は原則的には2つ以内になり、現状の標榜科名の氾濫に何らかの歯止めとなろう。そして医科の多くの診療所では、総合科プラス専門になってくるであろう。すなわち内科・循環器を標榜する先生は、必ず循環器専門医の資格をもつと思われる。同様に歯科でも小児歯科、口腔外科の標榜名は今後、専門医でなければ出せなくなる可能性もある。もうひとつの標榜科である矯正歯科は、内部の混乱でいまだ専門医の告示はできず、我々も歯科という標榜しかできなくなることもありうる。一刻も早い解決を願いたい。

一方、もう少し、グローバルな考えをすれば、欧米ではボード制度が確立されており、アジアでもアジアボードの確立を期待したい。鹿児島大学にいた頃から恩師伊藤学而先生にも折にふれ話したし、伊藤先生も日本矯正歯科学会会長や日本学士院の会員の時には、尽力されたと聞く。おそらく矯正の分野では日本と韓国、台湾が主導をとると思うし、この3国の交流は政治とは違い活発で、十分協力関係は築かれるが、オーストラリアと中国の関係が難しい。オーストラリアはアジアより欧米に目がいっているため、中国は台湾との関係があるため、まとまりが難しい。とくに中国は学術の話にも政治が介入するため、アジア矯正歯科学会のメンバーとしては台湾の名はない。伊藤先生は「日本矯正歯科学会雑誌」をアジアの連携を目指す試みのひとつとして雑誌名を「Orthodontic Wave」という英文名に変え、次第に和文誌から英文誌への脱皮を図った。現在、アジアー太平洋矯正歯科学会大会も6回目を迎えた。地道な努力でアジアボードの確立に向けて進んでほしい。

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