2018年9月4日火曜日

絵画コレクションの勧め

土屋嶺雪、最晩年の作品、主題が凡庸で、内容は薄い

戦後の作品。よく描けている、着物の線が美しい


 絵画コレクターというのは、一つは同じ作家のものを集める人(これが一般的である)と色んなジャンルのものを幅広く集める人がいる。私の場合は、同じ作家のものを集め、最終的にはどこかの美術館などに寄付することを目的にしている。今現在、集まったのは“土屋嶺雪”の作品が7点、近藤翠石のものが画帳も含めて8点ある。他には土佐光貞(偽物)、あとはお袋の作品が十点ほどあるだけでコレクションとしては非常にお粗末である。

 こうして同じ作品を集めていくと、落款、印章は違っていても画風が、何となくわかるし、年齢による変化も理解できるようになる。土屋嶺雪について言えば、若者〜壮年にかけては野心作が多く、かなり気合いを入れて描いているが、年齢を重ねるにつれ、どうも下手になっている。これは絵に対する情熱が少なくなったのか、いわゆる世間に認められようと思わなくなったからかもしれない。土屋嶺雪は橋本関雪に師事したと言われ、若い頃の画風はそうした傾向があるものの、師の関雪は歳をとるにつれ、作品に深みが出たのに対して、嶺雪はどちらかというと世俗的となっていてつまらない。これまで集めた7点の作品のうち、まともなのは“唐美人”、“楠木正成”、“大石内蔵助”のような人物画で、他の作品はあまり良くない。コレクターであるから買うがそうでなければ多分買わないだろう。

 一方、近藤翠石について言えば、この作家は山水しか書かないこともあり、作品のアベレージは高い。まあ70点くらいと言えるのか。ただ南画というジャンルは今では全く人気はなく、高名な画家でも評価は低く、近藤翠石のような70点作家は全く顧みられない。ほとんどの作品を1万円前後で買ったが、おそらく評価もそんなもので、池大雅、浦上玉堂、富岡鉄斎などのS級画家、あるいは松林桂月、小室翠雲などのA級作家を除く、近藤翠石などのB級作家は一点10万円以上になることはないし、今後はもっと安くなることはあっても、高くなることはない。むしろ絵の投資としてもう少し古い江戸期の画家の価値が上がるかもしれない。

 こうした同じ作家の作品をコレクションできるのは、まさしくデジタル社会の恩恵である。インターネットのなかった時代であれば、全国各地の画廊を訪れ、仮にあっても店主にコレクターであることが見透かされば、言い値で買うことになるし、7点とはいえ、こうしたマイナーな作者の絵を集めるとなると大変な期間を要する。素人、金のないコレクターにとっては、本当にいい時代なのだろう。ただインターネット時代とはグローバル時代を意味し、コンデションがよく、時代がそこそこある、江戸、明治、大正、昭和戦前の絵画は、一部の海外のマニアが買っている。中国人の中には投資目的で買う人もいるが、かなり熱心に日本絵画を研究し、集めている人もいる。かって根付は、日本ではそれほど人気がなく、海外での人気が沸騰して、再上陸した経緯がある。はっきり言って、明治、大正、昭和戦前の洋画は、欧米人からすれば、全く自分たちの絵画の模倣であり、価値を認めないであろう。また日本での人気作家、例えば東山魁夷の版画を20万円で買うなら、江戸後期の日本画を購入するであろう。

 絵に興味がある人なら、是非、ヤフーオークションをのぞいてほしい。その中で作者名の、全く知られていない作品が穴場で、偽物も少ないし、値段も安い。




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