2021年2月14日日曜日

韓国、中国には印象派、ゴッホ、ピカソの絵画がほとんどない、

 

韓国の私立美術館、澗松(カンソン)美術館

国立西洋美術館



  私は印象派の作品は好きで、東京に行く時には上野の国立西洋美術館によく行く。コルビジェの建物自体興味深いし、所蔵するルノワール、セザンヌ、モネの優れた作品をじかに見ることができ、楽しい。さらに岡山まで足を延ばすと、倉敷の大原美術館には、ゴーギャン、カンディンスキー、マティス、モディリアーニなどの作品が充実しており、何も欧米に行かなくても、国内だけで結構、西洋画の名品を見ることができる。

 

 実はこうしたことができるのは、アジアでは日本だけで、隣国の中国や韓国は近年多くの美術館ができたが、主として現代美術が中心で、印象派の作品やピカソなどの作品はほとんどない。韓国人の好きなゴッホの作品は、日本には20以上の作品があるのに対して、韓国では“横たわる牛”という個人蔵の作品が一つあるだけで、美術館の所蔵品はない。もちろんセザンヌやルノワールのような印象派の作品はなく、またピカソの作品も調べる限り油彩の作品は韓国にはない。中国や他のアジア諸国にもこうした西洋画の名品はなく、アジアでは日本が飛び抜けて多い。ある意味、アジアの美術好きの人にとっては、日本はたまらないところであろう。

 

 昔は、税金も安かったせいで、お金持ちは多くの金を残せたし、趣味にも多額の資金を回せた。大原美術館の例で言えば、倉敷の実業家の大原孫三郎は画家の児島虎次郎のヨーロッパ留学を支援し、彼にヨーロッパでの絵画収集を任せた。1920年頃のことで、児島を通じてモネ、マティス、ロートレックなどの名画を入手し、その後、1930年に美術館ができた後もルノアール、ピカソ、さらに戦後になってもコロー、ピカソなどの作品を購入した。ブリヂストン美術館は、もともとタイヤメーカーの石橋正二郎のコレクションをもとにしたもので、ここにもゴッホ始め、印象派の名品が多く存在する。また国立西洋美術館は戦前、ヨーロッパで多くのコレクションをした松方幸次郎の作品が中心で、ここにもゴッホ、ルノアール始め多くの印象派の優れた作品がある。

 

 ゴッホ、ピカソの作品は今や投機対象となり、作品によっては100億円以上となり、とても美術館では買えないものになっている。日本の個人コレクターが収集していた時期は戦前、あるいは1950年頃で、この当時はこうした作品もそれほど高くなく、多くの優れた名品が日本にやってきた。ところが韓国、中国が経済的に発展し、ようやく美術館を建てられるようになった2000年以降は、名品はもはや市場に出回らないし、出回ってもすごい金額で入手できなくなった。今、高額な価格で買えるのはカタールなどのオイルマネーの産油国だけになっている。

 

 一方、日本ではつい最近まで相続税がばかみたいに高く、相続額の70-80%が税金として取られた。多くの名画を持つ場合、相続税も大きくなり、場合によってはコレクションの一部を売らなければ相続税を払えず、そうした場合、美術館を作って、そこに寄贈した方がコレクションの分散を防げる。こうしたことから日本では多くの民間の美術館が登場した。西洋画のコレクションで言えば、ブリジストン美術館や大原美術館以外にもポーラ美術館、松岡美術館、日動美術館などは印象派の作品も充実している。また損保ジャパン美術館ではゴッホの代表作のひまわりを見ることができる。さらに日本美術については枚挙ないくらい多くの民間の美術館がある。こうした個人の美術館が多いのは、資本主義国家の象徴であり、個人の事業主がその莫大な富を美術品収集に注いだ結果であり、アメリカにこうした美術館が多い。アジアでは近年までアートコレクションをする実業家は少なく、唯一、韓国にある民間の澗松(カンソン)美術館が例外であろう。早稲田大学を卒業した朝鮮の大金持ち、チョン・ヒョンビルがその個人資産で収集した朝鮮の美術品を集めた美術館で、ここには韓国の国宝が12点ある。チョンは1938年にこの美術館を設立したが、留学先の日本で見た多くの日本人実業家の美術コレクターの存在がきっかけになったと思う。ただ相続税のために、同美術館が保有する仏像2体を最近、3億円で競売したが、高すぎる、贋作の可能性があることから、結局、誰も落札しなかったというオチもある。

 こうした美術館やそこの収蔵作品を見るだけでも、アジアでは日本が頭一つ近代化、西洋化の先頭に立っていることがよくわかり、急速に経済発展を遂げる中国、韓国、台湾なども西洋文化の歴史という点ではまだまだである。同じようなことは、科学の分野でもそうで、まだまだ韓国、中国のノーベル賞受賞者は日本に比べて圧倒的に少ない。

 


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