2021年5月26日水曜日

矯正治療を勧めにくい患者さん

 




1.     軽度の不正咬合

わずかな歯のデコボコや出っ歯を主訴として来院される患者さんがいます。最初、診察してどこが問題なのかと思い、患者さんに聞くと前歯のわずかなズレ、ねじれ、出っ歯を気にされる方がいます。ブラケットをつけて治すのは本当に簡単なのですが、今後十年のことを考えると後戻りが心配です。上の歯並びは比較的安定しますが、下の前歯については上の前歯が被っていること、奥歯で噛む力が歯を前方に動かす力となること、20歳過ぎても下顎のわずかな成長、形態変化が起こることなどから、下の前歯はデコボコになりやすく、矯正していなくても年齢とともに少しずつデコボコしてきます。それゆえ元々の不正度が50(100点満点)の場合は、矯正治療後に95点になり、保定終了後5年度、80点くらいなら矯正治療した価値はありますが、元々が90点の場合は、95点にしても容易に90点になります。

 

2.     本人に治療の希望がない場合

そもそも治療は本人が治したいという希望があってするものですが、子供の場合は親の気持ち、子供の歯並びを良くしたいということから始める場合が多いようです。小学生くらいであれば、親の管理で何とかなりますが、中高校生になるとあくまで歯磨きやゴム掛けなどは本人まかせとなります。ひどいケースになると、矯正装置を入れても歯磨きをきちんとしてくれないため、多数の虫歯ができた症例もあります。また指定されたゴムをきちんと使ってくれないため治療がうまくいかないこともあります。それゆえ、マルチブラケット装置に治療をする場合は、必ず患者さん本人に治療の覚悟を聞き、あまり治療に積極的でなければ治療はしません。矯正治療の場合は、緊急性はありませんので、成人になってからも治療はできるからです。

 

3.     治療計画を自分で立てる人

こちらは矯正歯科の専門医で40年近い経験と知識があります。ただ患者さんによってはこちらの治療方針を信用せず、自分で調べてきた治療法を求める人がいます。矯正治療には色々な方法があり、どれがベストという方法はないのですが、それでも専門医試験官などを経験するとある程度、治療法は収束していきます。拡大装置やインビザラインなどによる非抜歯治療は、口元の出ている日本人、アジア人では適用は少なく、個人的な意見ですが、適用は20-40%程度と思われます。また成人患者さんの場合、かみ合わせの逆の反対咬合では半分くらいが外科矯正の適用で、逆の上顎前突では10%が外科矯正の適用と思われます。歯は抜きたくない、手術もしたくない、こうした患者さんは、5名の矯正歯科医から抜歯が必要と言われても、抜歯が必要ないという一般歯科医で矯正治療を受けたりします。もちろんうまく治療はできません。

 

矯正治療は、緊急性がないので、いろんな歯科医院で話を聞く、インターネットで情報を集めるのは大事なことです。ただ生体を扱うだけに必ずしも100%満足のいく結果は得られず、私のところでも、非常にうまく仕上がったのは20%、まあまあというのが60%ですが、うまく仕上がらなかったというのが20%くらいあります。もちろんこの“うまくいかなかった”という状態は先生によりますが、この割合は多くの矯正歯科医の偽らざらない感覚です。例えば前歯を中に入れるような力系をしていても、前歯がほとんど入らずに奥歯ばかりが前にいく症例があります。舌を前歯に強く当てる癖がそうしているのですが、治療するまでわかりません。また歯が骨と引っ付く骨性癒着が起こることがあります。全く歯が動きません。矯正治療はこうしたリスクがあることを十分に理解していただく必要があります。


5/22の朝の文化放送で、横浜市長の林文子さんが”須藤かく”のことを取り上げてくれました。「横濱流儀 ハマスタイル」という6.7分の番組ですが、要領よくまとめて、わかりやすい内容になっています。5/27まで聞くことができますので、興味のある方はお聞きください。

https://radiko.jp/#!/ts/QRR/20210522065000


 


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