2021年7月7日水曜日

患者紹介について


 

 今と違い、2030年前まで、矯正歯科に来る患者の多くは、一般歯科から紹介されて来た。多いところでは、年間に10名以上紹介してくれるところもあったが、近年は、そうしたことも少なくなり、患者からの紹介、あるいはインターネットをみて来る患者が多くなった。

 

 もともと矯正歯科はアメリカのシステムを取り入れているために、日本人からすれば、そこまでするのかということも多い。例えば、アメリカでは、従業員にも名刺を持たせ、知り合いや友人に自院での矯正治療を勧め、もしその患者が実際に治療することになると、治療費の一部をボーナスにする方法をとるところがあった。そのため、従業員を雇う時には、交際範囲の広い、人脈の多い人を雇い、給料よりボーナスの方が多いこともあった。これの発展型が、患者にも、別の患者を紹介してくれた場合には、プレゼントする、子供の場合はおもちゃをあげる、ようなことをするところもあった。また紹介してくれる一般歯科医院のスタッフと先生を高級レストランのランチに招待するようなこともよく耳にした。資本主義国、アメリカでは、歯科も一種の商売で、特に医療という制限は少なかったからである。


 一方、ヨーロッパはどうかというと、ここまで商業化はしていないが、飛び込み患者は少なく、ほぼほとんどの患者が一般歯科医よりの紹介という場合が多い。そのため、矯正歯科医のオフィースは、玄関に名前のプレートがあるだけの普通のビルや民家で、誰も歯科医院があるとがわからないようになっている。こうした場合は、よく紹介してくれる歯科医院には、連絡を密にする意味もあるが、頻回に訪れ、お菓子や食べ物の差し入れをしたり、家のパーティーに招く。


 それでは、日本はどうかというと、30年くらい前まで、一人の患者を紹介すると、そのバックマージンを紹介元の歯科医院に戻すようなこともあった。ただこれはあまりに倫理的に問題があることと、医療法に触れるので、今はそうしたことは一切ない。ただ常識の範囲内で、お中元やお歳暮を贈ることはある。それでも以前は、新患のほぼ90%は一般歯科医よりの紹介であったが、最近では、虫歯も少なく、特に若い人はかかりつけ歯科医がいないので、インターネットや友人に聞いて来院することが多く、一般歯科医からの紹介も20%以下になっている。そのため、勢い日本でも、広告に力を入れる矯正歯科が多くなっており、中には広告法に違反するような問題のあるところもある。


 こうした一般歯科医よりの紹介が少なくなり、インターネットにより選んで来院するとなると、どうしても矯正歯科のHPの良し悪しに左右されがちとなる。そのため各医院も自院のHPに力を入れる。ただ2018年より医療広告ガイドラインができ、様々な規制ができた。そして、日本矯正歯科学会でも、今度できる日本矯正歯科専門医機構でも、認定医や専門医の更新の際に、HPをチェックして、少しでも違反があれば修正も求めるようになっている。一方、こうした学会に入っていない歯科医院でも、あまり広告ガイドラインを遵守しておらず、かなり問題となっているケースも多々ある。ただ患者からすれば、こうした広告ガイドラインなどは知らないため、良いことばかりを強調している歯科医院に行くこととなる。


 そういう意味では、一般歯科医は、地域の問題のある歯科医院を知っており、もし問題のある矯正歯科に紹介すれば、結局は紹介したところの責任も出ているために、基本的には信頼の置ける矯正歯科医院を紹介する。患者さんの中には、どうしてそんなところばかり行くのかと思うほど、問題のあるところばかり、行く患者がいる。まずかかりつけ、あるいは知人に聞いて評判にいい歯科医院を訪れ、そこから紹介してもらいのが、やはり一番良いように思える。あとは、院長の履歴を見て、大学病院の矯正歯科学講座に勤務経験がなければ、いくら調子の良いことを言っても、こと矯正については素人と言える。やめた方が良い。


 

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