先日、リタイア後の生活として、漫画、アニメをもっと見たいというと、友人から「先生が漫画好きとは意外だ。そんなものには興味がないと思っていた」と言われた。私は大の漫画好きで、小学校1、2年生くらいから少年マガジン、サンデー、キングなどを読むようになり、高校卒業まではずっと週刊マガジンを購買していた。その後は、週刊誌は読まなくなったが、単行本はずっと読み、ここ30年くらいは年間で100冊は読んでいる。主としていわゆる青年誌というカテゴリーのもので、今、読んでいるのは「大乱 関ヶ原」、「Blue Giant」、「昭和天皇物語」、「絵師ムネチカ」、「平和の国の島崎へ」、「正直不動産」、「Dr.Egg’s」、「史記」などである。どうも女性漫画については、読み慣れていないせいか、ほとんど読んだことはなく、思いつくだけでも女性作家の漫画は「のだめのカンタービレ」、「ガラスの仮面」、「坂道のアポロン」、「テルマエ・ロマエ」、「ピアノの森」くらいしか思いつかない。
個人的には、女性漫画家の中で、もっとも気になるのは、神戸のことをオシャレに描いている西村しのぶさんである。なぜかというと、西村さんの作品には広瀬という名のキャラクターが複数存在する。まず処女作の「サードガール」では、広瀬和正という歯科医が登場する。さらに「メディックス」では広瀬浩一という医師が登場し、「RUSH」では住吉という矯正歯科医が登場する。また「サードガール」では、主人公の神崎川夜梨子は神戸市出身、聖K女学院中等部、高等部、短大とされているは、おそらく甲南女子中学、高校、大学短期大学部のことと思われる。ちなみに神崎川という名は、奇妙な名であるが、阪神尼崎に住む人から見ると、尼崎市と大阪市の境、淀川の支流、神崎川を思い出す。昔は汚い川で、主人公の名としては奇妙である。また夜梨子の彼氏、大沢悠也は神戸、六甲学院から京都大学という設定となっており、広瀬、六甲学院、歯科医、矯正歯科医という点でも、不思議に自分と一致する。実際、RUSHが出た当時、1993年頃は、まだ神戸市でも六甲学院の先輩の小島矯正歯科など、数軒しか矯正歯科医院はなく、この時代に矯正歯科医を作品に取り上げるのは珍しい。
昔、甲南女子中学校の子を好きになった。彼女は阪急塚口駅近くに住まいがあり、おそらく1960年か1961年の生まれ、神戸大学附属住吉小学校と甲南女子中学に通学していた。小学校から越境入学させるのは、医者かよほど教育熱心な家庭の出であろう。背の高い、綺麗な子だった。当初、西村しのぶさんかなあと思ったが、Wikipediaによれば西村しのぶさんは、1963年5月生まれ、宝塚市の出身、神戸市外国語大学在学中に小池一夫主宰の劇画塾に入りデビューしたとあり、年齢、住まいも違うので、全くの別人である。
ただ興味があるので西村しのぶさんの作品を、きちんと読もうかと、これまで何度か挑戦した。「サードガール」も一巻目を買って読んだが、二巻目には進めず、また「RUSH」も一巻目でギブアップ、「下山手ドレス」は二巻と三巻をかろうじて読んだが、どうも作品に入り込めない。時代、舞台とも私はよく知っている神戸なので、よくわかるはずであるが、どうも女性読者にはハマるが、男性読者には内容について行くのが難しい作品なのかもしれない。
本当に寡作な作者で、ごく稀に作品を発表するようで、最近では2021年に「砂とアイリス5」を発行したのが最後である。プロの漫画家、それも多くの人に支持されている作家は、天賦の才能を持つ人である。私の尊敬する女優、カトリーヌ・ドヌーブは、初期の「シェルブールの雨傘」以降も次々と作品を発表し、老年に至った今でも渋い演技を見せている。漫画家も若い時とは違った、私たちのような古いファンを対象にした作品を発表してほしい。島田順子さん、大橋歩さんなどのように80歳を過ぎてもデザイナーとして活躍している人もいる。西村しのぶさんはまだ62歳で、まだまだ若く、60歳代のおしゃれ、生き方、恋愛を、漫画を介して発表してほしい。才能のある人は、その才能を世間に出す義務があるように思える。コアのファン、多分40-60代からすれば、本当に新たなシリーズが発表されるのをずっと待ち望んでおり、そうした声にも応えなくてはいけない。






