2013年1月21日月曜日

鳩山由紀夫、国賊?




 鳩山由紀夫元首相が中国を訪問し、尖閣諸島を係争地と言ってみたり、南京大虐殺記念館を訪問したことについて批判の声が強く、小野寺防衛相は「国賊という言葉が一瞬、頭をよぎった」と発言している。

 鳩山氏は今では議員でもなく、民主党との関連も薄いので、訪中しても中国政府としては元首相という以外、興味のない人物であるが、今回の訪中に際しては中国政府要人との面談始め、現地マスコミの取り上げも大きい。これに対して日本の新聞、マスコミでは中国政府の宣伝にうまく使われた、またおかしな行動を行ったと99%非難されている。

 この周りから非難が集中している状況が、やや気になる。元首相で、その影響は大きいのだから、言動には注意してほしいということだろうが、本人は確信犯的に行動しており、これは彼自身のポリシーなのであろう。いわば大アジア主義の復活である。日本の右翼は、戦前は反米であったが、戦後はいつのまにか親米となり、かってのアジア主義は右翼からも左翼からも相手にされない状況になっている。アジア主義とは、簡単に言えば、欧米を中心とした白人至上主義を拒否し、アジア人で団結し、白人と決別する思想である。実際は、日中が協力して、欧米、とくにアメリカと対抗したアジアの連帯を作ることをさす。大川周明、北一輝など戦前の右翼思想の流れである。どうして人種が近い、アジア人同士が喧嘩し、差別する白人の奴隷となるのか。日本人は白人並みと扱われているが、白人は裏ではばかにしている。日中、日韓の軋轢は、アメリカの思惑通りである。ECのようなアジア共同体を作ろう。こういった考えは、中国が共産主義国家ということを除けば別におかしな考えでもないし、対米協調外交とは逆の立場であるが、議論すべき内容でもある。

 尖閣諸島を係争地でなく、何ら話し合う必要もないのであれば、どうして戦闘になる可能性を騒ぎ立てるのであろうか。問題がないと主張し続ける限り、双方の話し合いはない。話し合いのないまま、中国空軍、これは過去の事例からすれば、パイロットの命令違反があることから、挑発行為、自衛隊機との交戦の可能性はある。もともと大同小異のために、尖閣諸島は棚上げされてきたが、それを再び、問題化したのは石原元都知事で、日中間の騒ぎを起こした張本人としての責任は鳩山元首相より大きい。

 孫文の神戸での有名な講演で、「貴方がた、日本民族は既に一面欧米の覇道の文化を取入れると共に、他面アジアの王道文化の本質をも持って居るのであります。今後日本が世界文化の前途に対 し、西洋覇道の鷹犬となるか、或は東洋王道の干城となるか、それは日本国民の詳密な考慮と慎重な採択にかかるものであります。」の言葉の意味は大きい。

 安部首相がベトナム、タイ、インドネシアを訪問したが、アジア外交を重視する姿勢は評価される。ただ中国包囲網としてこれらの国を考えるのはおかしい。先の太平洋戦争に至った原因についても、何度も和平のチャンスがあったが、国民感情に流されて対米戦争に踏み切った。最後の日米交渉、ハルノートにおいても、アメリカ側の主張は満州、朝鮮の日本の権益は認める、中国からの撤退、三国同盟からの離脱であり、元々中国との戦争は陸軍も望んでいないことであり、三国同盟を離脱しても日本の損益には全く関係のないことであり、十分に飲める話であった。ただ国民が何よりも戦争を望んでいた。その結果があれだ。国民の好戦的感情を煽った朝日新聞、はじめ大新聞の責任は大きい。また珍田捨巳のようなアメリカを知る優秀な外交官がいなかったことも大きい。これは現在、北京大学を卒業し、実際に中国で長年生活したきた外交官がいないのと同じである。

 尖閣列島問題についても、あの島のために、すべてを犠牲にして開戦をする覚悟がなければ、これ以上こじらせるのは日中双方とも無意味であろう。日本の外交的な方向は、現在の中国を台湾のような親日、民主国家になってもらうことで、そのためには環境問題、福祉、医療問題など日本が協力できる役割は大きく、一方では民主化を支持する立場をとってほしい。
  
 安部首相は、在野にいた時に、台湾の忠烈祠を訪問し、係員から日本人で唯一祭られている山田良政の説明を受けた。日中、日台を結ぶ人物として山田良政の存在は大きく、対中国、台湾へのアクションとして谷中にある山田良政の墓参を行ってほしい。菅直人元首相が諸般の事情で中止した行事である。こういったアクションを行い、中国側の対応を見るのもまた外交的手法であると考える。

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