2020年2月7日金曜日

ベルンド・フリーベリの大型ボウル

 


 Berndt Friberg1889-1981)といえば北欧を代表する陶芸家で、その作品の優れた造形と色彩で多くのファンを持つ。特に10cm以下のミニチュアの作品群は、大きさの割には圧倒的な存在感があり、また収納にも場所を取らないために、その収集をするコレクターが多い。ただ値段も高く、小さな作品でも10万円以上する作品も多い。とても手が出る値段ではなく、これまで諦めていたが、先日、あるコレクターがヤフーオークションで数十のフリーベリの作品をかなり安く出品していた。数が多かったせいか、落札者も分散され、どれも市販価格の1/4程度の落札価格であった。今回落札したのは、フリーベリの作品にしては、珍しく大きさが18cmもあり、ちょっとしたラーメンどんぶりくらいある。茶色の流れるような釉薬がかけられ、美しい。ただこれだけ大きいと、フリーベリといえばミニチュアと考える人にとっては、興味はないだろうし、展示棚にも飾れない。要するに大きすぎるのである。当初、オークションで写真を見たときは、それほど大きいとは思わなかったが、実際に送られてきた実物を見ると驚くほど大きい。フリーベリのミニチュアはものすごく小さいのに写真では大きく見えるが、この作品は逆に写真では小さく見えるが、実物が大きい。フリーベリは作品の裏には、彼のサインと制作年度を示すマークがある。この作品には”A”に小さな丸が一つついており、これは1956年の作品で、私の生まれた年である。

 フリーベリは、曽祖父、祖父、叔父も陶工だったせいか、13歳から製陶工場で働き始めた。その後、あちこちの工場で働き、35歳のとき(1934年)にグスタフスベリ製陶所に入る。当時、ここではスウェーデンを代表するヴィルヘルム・コーゲがアートディレクターとして活躍しており、その轆轤をひく職人としてフルーベリは雇われた。同時期、スウェーデンの王室ご用達の製陶所、ロールストランド(Rorstrand)にはグンナル・ニールンド(Gunnar Nylund)がいた。彼は最初、ナタリー・クレブス(Nathalie Krebs)と一緒にサクスボー(Saxbo)を立ち上げたが、その後はロールストランドで活躍した。フリーベリのこうした同時期のスウェーデンの陶芸家に影響され、次第に職人から自分の作品を発表する陶芸家になっていった。そのため、フリーベリの作品には、コーゲよりはニールンドやサクスボー製陶所の影響が強く、噴霧器で器の表面に釉薬を薄く吹き付け、それが垂れてマットで表面に兎の毛のような細い筋が浮かぶ模様となっている。ただフリーベリは長らく轆轤職人として働いた経験があるため、大きな体で器用に轆轤を回し、わずか数センチの作品も見事なフォルムを作り出した。

 写真左の小さな徳利のようなベースは、RorstrandCarl-Harry Stalhane(
1920-1990)で、彼はニールンドとともにRorstrandの黄金時代を築いた。その横のベースはEva Staehr-Nielsen(1911-1978)Saxbo製陶社で作ったもので、モデル名67と記されている。その隣の明るい茶色の茶碗のようなボウルはGunnar Nylund(1904-1989)のもので、彼は直接、轆轤を廻すことはなく、全体のアレンジや色つけなどをしたが、彼にしては珍しい薄手のスタディオものに近い仕上がりになっている。4つの作品を見ると同じような釉薬で色彩は近いが、それでも器のファルムはフリーベリが抜きん出ており、また釉薬も器の中の釉薬が外より濃い茶色になっており、縁取りが薄い色となっているのとマッチして、重厚な仕上がりとなっている。この大きさでは流石に茶道具として使えないが、せめてNylundの器並みの大きさであれば、本当に良い茶器になったであろう。それでもフリーベリは高くてなかなか手に入らなかったが、安く手に入り喜んでいる。全体的にはフリーベリの作品も含めて北欧陶器の値崩れが少し起こっているようである。以前より安くなっている。


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