2021年10月2日土曜日

youtube で動画をアップする先生


 暇なのでyoutubeで公開されている歯科矯正関係の動画をよく見ています。大きな特徴があるので説明します。

 

1.     矯正専門医が登場することが少ない

 矯正治療を紹介する多くの動画、ことにインビザラインを紹介する先生は、いわゆる矯正専門医ではありません。多くは一般歯科治療もする一般歯科医です。もちろん矯正歯科専門医でないと矯正治療をしてはダメだと言うことはありません。ただ動画で説明する内容に関しては、矯正歯科専門医からすれば少し問題があるのは事実です。実際、知人のベテランの矯正歯科医で、you-tubeに動画を挙げている先生はいません。矯正歯科専門医の多くは、大学の矯正科の医局で、多くの文献を読み、研究を行い、先輩から指導されて矯正治療を学びます。少なくとも日本矯正歯科学会の認定医を持っていますので、七年以上はこうした指導機関で学んだことになります。

 普通に考えれば、精神科の医局、病院で専門教育を受けていない、学会にも入っていない内科医が、動画でうつ病、統合失調症の説明をしているようなものです。それもこの薬、この体操をすれば治るといったエビデンスのない内容です。

 

2.     矯正治療をした患者さんの動画では最後まで終了しない

 矯正治療始めましたとyou-tubeに動画を載せたり、ブログに掲載したりする患者さんがいますが、どういうわけか途中で更新が終わっている場合があります。おそらく治療内容に問題があったり、他の人から指摘があったのでやめたのでしょう。歯科医側からの紹介はうまくいった症例を出せばいいのですが、患者側からの動画は、必ずしもうまくいくわけではありません。中にはうまく治療が成功したと報告しているものもありますが、おそらく模型、レントゲンを用いた評価では、いくつかの問題点が見つかると思います。インビザラインの症例では、セファロ写真や模型も取らないところが多いので、治療前後の評価もできません。ことに口腔写真からの評価は非常に難しく、一見、小臼歯、大臼歯部が横からの写真では綺麗にかんでいるように見えても、舌側から模型を見れば舌側咬頭が全くかんでない症例があります。これは失敗症例です。

 

3.     動画の多くは広告、あるいは院長が目立ちたい

 あたり前のことですが、こうした治療法を紹介する動画を作る目的は集客です。動画を見て、自分の診療所に来てもらいために動画を作っています。実際の治療は、地味なもので、成人の矯正で言えば、小臼歯の抜歯ケースが多く、唇側、舌側にブラケットをつけて約2年間の治療を要します。その間、月に一回の通院が必要で、治療後も保定が必要です。また舌側矯正に関しては、唇側矯正より難しく、先生による力量の差があります。また症例による両者の得意不得意は多少ありますが、全ての症例が適用となります。一方、インビザラインについてはかなり適用が広がってとはいえ、まだまだこの治療法では治らない症例があります。また小児を対象とした床矯正治療は、この装置だけで理想的な咬合を得ることは難しいと思います。

 なぜ矯正治療を紹介する動画の多くが広告かと言うと、日本でもトップクラスの矯正歯科医は、患者が多くで捌き切れないのが現実で、実際に患者制限をしているところもあります。また年齢のため、あまり多くの患者を見たくないと言う先生もいますし、先生によっては医院のホームページも作っていない先生もいます。Youtubeに動画をあげる必要が全くないし、場合によっては学会で動画内容をチェックされ、認定医、指導医の資格剥奪となります。予約の取れないレストランが広告しないのと同じですし、黙っていても売れるロレックスが宣伝しないのも同じです。

 

 患者さんによっては、こうしたyou-tubeでしっかりと知識を溜め込んで、来院され、細かく質問する方がいます。特に厄介なのは、不正咬合あるいはかみ合わせと顎関節症の関係を強調する歯科医の動画です。こうしたことをいう歯科医は、ほぼデタラメの歯科医で、言うだけです。実際に重症な顎関節症患者が来れば、矯正治療も含めて色々な治療をして、莫大な治療費を請求しますが、治らなくても全く責任を持ちません。同様に昔は小児の床矯正、今は成人のインビザライン治療が、You-tubeなどの動画やホームページで宣伝され、それにつられて治療したがうまくいかなかった患者が増えています。ぜひ、you-tubeで動画をみて治療したくなっても、その医院のホームページを見て、ドクターの経歴を見てください。大学の矯正学講座に在籍していない、認定医の資格を持っていない先生は注意です。そもそも経験も技術もある矯正専門医を差し置いて、若い先生がこうした動画を流すこと自体、傲慢な行為で、ある意味、変な自信過剰、鈍感な人なのでしょう。普通の先生であれば、恥ずかしくて動画をアップできないでしょうし、また何かあれば、例えば、正中を合わす、かみ合わせが重要だと動画で言えば、それを達成できなければ、嘘をいったことになり、のちにクレームとなります。途中で動画をやめても、患者はその動画をコピーしており、後で訴訟になった時はどうするのでしょうか。おそらくこうした動画をアップする先生は、視聴回数が増えると有名になったように思い、それによるリスクについては何も考えていないのでしょう。

 

現在、インビザラインのようなマウスピース型の矯正治療を行なった患者は急速に増えており、ある報告では矯正治療経験者の29%を占めているといいます。1/3近くの患者さんがマウスピース矯正をしていることになります。日本臨床矯正歯科医会の「矯正歯科何でも相談」のクレームを見ても、年々相談件数が増え、その中でもマウスピース型装置によるクレームが急速に増えています。こうした現状から、本ブログでも再三、マウスピース型矯正装置による治療の問題点を何度も書いてきました。本当に気をつけてください。


 

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