2023年9月12日火曜日

掛け軸をコレクションする

 



ヤフオクで掛け軸を集めだしたのが、2006年頃だから、17年目になる。母親が日本画をしていたこともきっかけの一つだが、家を新築したときに和室と床間を作った。床間というと掛け軸ということになり、実家にあった掛け軸を何本か持ってきた。その一つに近藤翠石のものがあった。翠石というと虎で有名な大橋翠石が浮かび、近藤翠石のことはほとんどわかっていない。少しずつ、ネットで調べていくと、森琴石の弟子の中に近藤翠石という人物がいることがわかり、安かったこともあり、4本くらいの掛け軸を集めた。今では翠石といっても、動物画の大橋翠石と南画の近藤翠石に分けられるようになった。ただ、この作家は頑固な人なのか、ひたすら南画しか描かずだんだん飽きてきた。ヤフオクで見ていると「唐美人とオウム」という作品を見つけ、落札価格も安かったので購入した。実物を見ると、なかなか魅力のある画家であるが、調べてもほとんど情報は出てこない。土屋嶺雪という大正から昭和にかけての日本画家であるが、東京生まれで、明石を中心に活躍した画家ということがわかった。ただ文展などの団体に全く入らない独立派の画家のために、全く情報が入らない。それでもヤフーオークションには時々出品され、ほとんど落札を競う人もいなかったので、数千円程度で、購入できた。少しずつ購入し、現在23点の作品を集めることができた。

 

あくまで生活のため、依頼者からの注文に沿って描いた絵なので、よそゆきの絵ではない。画家のほとんどは、展覧会などの出す大型の絵には全力を出して、かなり時間をかけて屏風などの絵を描く。普段、こうした大型の絵の注文は少なく、普通の掛け軸の売買が主体となる、展覧会で名を売り、掛け軸を売って生活していた。嶺雪の場合は、展覧会などにはほとんど出さなかったので、あくまで口コミで絵の依頼が入り、描いて生活費を稼いでいたのだろう。それでも彼の若い時から晩年を作品を見ると、作品の変遷を見ることができ、一人の日本画家の一生を顧みることができる。

 

これまで土屋嶺雪のまとまった展覧会は、2016年に加古川市立松風ギャラリーで行なわれた「播州ゆかりの日本画家3人展 福田眉仙、森月城、土屋嶺雪」くらいしかなく、ここでは屏風3点、掛け軸9点、額装2点の14点が展示された。そこで私が集めた作品も一度、展覧会の型で、それも弘前レンガ倉庫美術館の市民ギャラリーでの展示を思い立った。ただレンガ倉庫美術館というとどうも現代美術のイメージが強く、掛け軸のそれも個人コレクションの展示はいいものかと思い、8月の中頃に同館を訪れ、係の方に相談したところ、取り敢えず、企画書を出してくださいということになり、“掛け軸の楽しみ”というタイトルにして簡単にまとめて提出したところ、許可が出たので、12月の初め頃に個人的な展覧会をしようと思っている。

 

普通、展覧会というとお金持ちが財力に物を言わせて購入した作品を展示するものだが、今回の私の展示会はいずれの作品も1万円以下のそれほど高額でない作品ばかりである。お小遣いで購入できる額である。現在、昔の掛け軸は非常に安く、一部の有名な日本画家を除く、多くの作品は非常に安い。おそらく仲介業者はほとんどただの同然の価格で買った掛け軸をヤフオクに出しているようで、1万円以下で購入できる掛け軸が多い。こうしたこともあり、あまり知られていないが、日本の江戸、明治、大正、昭和時代の古い掛け軸が多く、中国、欧米の人にずいぶんと買われている。以前はヤフオクも日本での購入だけであったが、最近は海外からも購入できるようになり、海外からオークションに参加する人も多い。彼らからすれば、100年、200年前の優れた技法の絵が100ドル以下で購入でき、安いと思うようだ。もちろん日本人で骨董絵画が好きな人も多いが、どうしても名の知れた画家、円山応挙などを作品に惹かれるようで、私のような土屋嶺雪に興味がある人はほとんどいない。もし絵の好きな人であれば、それほどお金もかけずに自分のコレクションができることこの展覧会で知って欲しい。

 

今回の展覧会では、日本ではおそらく唯一の香川芳園の作品と最近、集めている山元春汀、田中蘭谷の作品も一緒に展示しようと思う。モダンな美術館の一角に25点の掛け軸が並ぶのは、また面白そうだと個人的には期待している。全く個人でしようと思っているので、一人で会場まで掛け軸をタクシーで持っていって飾り、一週間の会期が終われば撤退する予定である。美術館に来館する人の1/350歳以上だとされており、見るだけではなく、コレクターになるということも今であれば、費用的にも時間的にも難しくないことがわかってもらえればと思っている。

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