2026年10月21日水曜日

歯科の闇


 


以前、専門外であるが保険業の闇について、少し考えを述べたが、専門の歯科の闇について述べないのかと言われそうなので、少し述べてみる。

 

まず私の背景を言うと、父親は歯科医で私が生まれる前の昭和27年頃から兵庫県尼崎市で歯科医院をしていた。85歳まで50年以上は歯科医をしていたし、その間の歯科環境の変遷もよく知っている。兄も西宮市で開業し、私も昨年まで青森県弘前市で矯正歯科として開業していた。親子三人が歯科医ということになる。

 

国民皆保険制が完成したのは私が生まれた時くらいで、それまでは歯科は基本的に自費であった。庶民は歯が痛くなっても、歯が抜けても、治療費が高くてなかなか歯科医院にいけないという状態であった。そこに健康保険が登場した。月々、収入に応じた保険料を納めることで、通常の治療の0割から半分の費用で済むことになった。もう少し詳しくいうと、被保険者本人は0割負担、つまり治療費はかからず、家族は半分、これも最終的には3割となった。つまりこれまで10000円だったものが、いきなり全商品、50% 、70%、100%引となった。患者は一気に医院に押し寄せ、この頃になると朝、医院を開ける前に患者が行列という状態になった。

 

ここで歯科医の闇としては、本人負担が0%ということはどれだけ治療をしても本人の窓口の支払いはない。少なくとも金額に関するクレームはなくなった。そのため、新規で来院した患者、特に本人に対する治療は基本的に全てやり直しとなった。さらに今と違い、明細書を出す必要がなかったため、架空診療が横行した。パントモ写真を撮り、頭の中でとれる治療計画を立て、治療をしたことにして請求するというものであった。古い商習慣が残っていたのか、当時は月末、年末にまとめて治療費を払うという人も多くいたし、本人の場合は負担0なので、こうした架空診療であっても見つからない。医科より歯科の方がこうした架空請求は横行していた。

 

また感染対策が杜撰で、ミラー、ピンセット、などの基本セットもアルコール綿で拭くだけ、抜歯に使う器具以外は、バー、トレー、金属コップなどもほとんど洗うだけという感じだったし、だれ一人手袋など使用しなかった。ある先生はミラーが曇ると自分のネクタイで拭いて使っていた。今では麻酔もディスポのカートリッジを使うが、昔はボトルから注射器で直接、麻酔液を吸って使っていた。汚染もあったろう。

 

本人はその後、1割負担、家族は3割負担となり、今は基本的には3割負担で、70歳以上は2割、75歳以上は1割となっている。それでも定価の70%の割引で商売しているといえよう。わずか数%の利益率しかないコンビニや他の商売から見たらこれほど美味しい商売はないと思うだろう。ところが歯科医はこの意識はほとんどない。10000円の治療はその30%、3000円どころが、点数で1000点、300点、300円の治療と勘違いする。つまり10000円の治療でも窓口負担は300点、3000円どころが、歯科医はつい300円と勘違いする。さらに政府は保険治療のコストを低く設定していて、アメリカの治療費に比べて比べても保険の点数、料金は安すぎるという。一方、患者は70%の割引をしてもらいながら高いといっている。おかしなことである。

 

最近の歯科の闇は、インプラント、矯正歯科など自由診療への誘導である。70%引きで売っていても収入は少ないと考える歯科医院はより利益率の高い、矯正歯科、インプラント患者を増やそうとする。保険診療の利益率を30%くらいとすると、矯正治療では技術費が大きいため、利益率は60%以上となる(インビザラインは除く、通常のワイヤー矯正の場合)。そのため、ほとんど経験したこともない矯正治療をしようとする。子供の矯正治療の場合、結果の良否が漠然としている。子供の矯正治療しかしないという歯科医院もあるが、子供の治療だけできれいに治るケースは少なく、中学生以降にマルチブラケット装置による仕上げの治療をする必要性があるのは矯正歯科では常識である。そのため子供だけの矯正治療というのはあり得ず、通常は一期(子供の矯正治療)、そして二期(仕上げ)という流れ以外はない。


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