2007年2月19日月曜日

ブラケット1




最新の矯正治療を理解するためには、装置についてある程度知っておく必要があります。今回は歯の表面につける矯正装置、ブラケットについて説明したいと思います。10年ほど前に開業医の先生向けの行った講演会の資料に基づいていますので、やや内容は難しいかもしれません。できるだけやさしく説明します。
 エドワード・アングル先生の名前を知らない矯正歯科医はいません。アングル先生は現在の矯正治療のほとんどの基礎を作ったひとで、現在の装置の多くは、その発展型と言ってもよいと思います。彼は歯1本ごとに動かすさまざまな装置を研究しました。最初作ったPin and Tube 装置は、貴金属合金のワイヤーに垂直のワイヤーを鑞着し(バーナーで熱して金属同士を引っ付ける)、それを歯につけたチューブに差し込み、歯を動かすものでした。0.1mm単位の高度な鑞着技術が必要で、実際アングル先生以外は数多くの弟子、誰もできなかったようです。その後、リボンアーチ装置を作りましたが、これは後にオーストラリアのベッグ先生により発展しました。現在は主流となっていません。1920年代半ばには最終的なエッジワイズ装置を発表しました。これが現在の矯正装置の主流になっています。この装置の特色は長方形の溝をもつことで、これにワイヤーを入れることで歯の位置はそのままで歯根を動かすトルクを入れられることです。矯正治療ではこのトルクが非常に重要です。まず金属のバンドを歯にまき、それにこの装置を鑞着しました。貴金属合金、金、白金、パナジウム合金でできたワイヤーをこの溝に差し込み、結紮します。欠点としてはブラケットの幅が狭く(シングルブラケット)のため歯のねじれをとるのは難しいと思います。後日、この装置に羽根を延ばしたようなものを作り、その欠点を直そうとしています。
 当時はワイヤーはほとんど弾性がないものでしたから、歯の少しのぐらつきを利用して、こまめにワイヤーや結紮で調整したようです。そのため患者さんには1週間に1回くらい調整にきてもらいました。それでもアングル先生はよほど器用な臨床医だったのでしょう、仕上がりは現在の目でみてもりっぱなものですし、治療期間も今と変わらない1年半から2年です。
名女優グレタガルボがスウェーデンからアメリカにきた時にまず矯正治療を受けて、それからハリウッドに進出したようです。彼女もこんな矯正装置をつけていたのでしょう。

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