2009年9月6日日曜日
顎顔面矯正治療
鹿児島市で開業しているくろえ矯正歯科の黒江和斗先生の「顎顔面矯正治療のすすめ」の講義を8月2日(日曜日)に青森県歯科医師会館(青森市)で受けてきました。
ちょうどねぶたの時期で、大阪から母親が来ていたため、講演後の黒江先生の懇親会に出られず残念でした。
黒江先生は、私が鹿児島大学歯学部矯正歯科学講座にいた時の指導教官で、私にとってはいわばお師匠様になるわけで、何でも言うことを聞かないといけません。黒江先生とはそれ以外にもねずみの実験、十島村歯科巡回診療、ヨットなどでもお世話になり大変感謝しています。典型的な薩摩勇人で、小さいことにはくよくよせず、誠実な性格で、歯科医より戦国の武将の方がよかったかもしれません。ご自身も飛行機が好きで、ライセンスを持ち、友人の飛行機であちこち行っていました。一度、アメリカから来たウイリアムソンという矯正医を飛行機に乗せて、大学病院を周回したことがあります。医局員は診療中でしたが、それに気づき、診療をやめ、窓から手を振ると、それに答えて黒江先生の飛行機も病院前の空でウイングを振ってくれました。確か、お父様も戦時中は輸送機のパイロットで、あの有名な陸軍トップエースの黒江保少佐も親類だと聞きました。血が空を飛ぶのが好きなのでしょう。また素潜りも得意で、海中をそれこそ20、30M、2分間くらい潜ります。すごいものです。
今回の講演会では、主として急速拡大装置による上あごの拡大による治療方法の説明でした。大変きれいな症例で、よく非抜歯でなおったなあという症例が何症例かありました。改めて人間の適用能力に驚きます。
上あごについては、正中口蓋縫合が癒合していなければ、かなり拡大は可能です。急速に拡大することでこの縫合部が開き、その状態で置くと、同部の骨化が起こるため、安定しています。問題は下あごの拡大です。黒江先生も下あごの拡大は直立といっていましたが、拡大されることであくまで歯が直立するわけで、歯槽骨は拡大しません。ウイルソンカーブという正面から見て、左右の奥歯の咬む面を結んだカーブはあごが狭い人では急で、あごの広いひとでは緩くなっています。ゴリラなどではほぼ平行になっているようです。つまり下あごの拡大は最高で下の奥歯を平行にするのが限界だということです。それ以上に拡大して奥歯の咬む面が外を向くような状態はあり得ません。また骨による拡大でないため、頬からの圧力、舌の圧力などの平衡関係によって安定性が決定してきます。広げても頬の圧が強いと再び狭くなります。上あごはかなり拡大するし、安定もするが、下あごの拡大には限界があり、不安定だと言えると思います。
拡大するのか、歯を抜くのか、この判断は相当難しく、一種のひらめきで決めてしまいます。黒江先生なら拡大を、私なら抜歯という選択の分かれが出るかもしれませんが、矯正専門医ではこの診断の幅、治療の仕上がりなどはある程度の範囲に収まっています。ある程度拡げても戻ってしまうようなら、抜歯にすればよいだけですが、あまり非抜歯にこだわるととんでもない噛み合わせになってしまいます。
講義の中で、離乳期の発達過程として、離乳初期(5〜6か月)の舌の動きは前後的であるのに対して、離乳中期(7〜8か月)では舌を上下に運動させて食物を押しつぶすことが可能になり、哺乳期、離乳期の舌機能の発達不良が後の舌の突出癖や運動異常につながるようです。育児書を見ると、生後5,6,7か月用の離乳食はそれぞれ、これとほんとにきめ細かく離乳食のメニューが載っています。またベビーフードの種類も本当に多く、これほど手をかけないと赤ちゃんが育たないのかと考えさせられます。逆にあまり手がかけすぎることが舌機能の発達を阻害するのかもしれません。
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