2014年11月28日金曜日

高倉健さん 八甲田山



高倉健さんが亡くなった。200本以上の映画に出演したというが、あまり監督には恵まれず、名作は少ない。脇役では「飢餓海峡」のような名作もあるが、主役で言えば、「新幹線大爆破」、「幸せの黄色いハンカチ」、「動乱」と「八甲田山」くらいであろう。「鉄道員」、「夜叉」、「駅」などもいい作品ではあるが、いわゆる佳作というもので、名画ではない。一方、原節子さんなどは、監督に恵まれ、小津作品の「東京物語」や「麦秋」などの映画は、世界の名画の一つに挙げられ、100年経っても映画史に残り、その主演女優の原節子さんの名は永遠である。

一方、高倉健さんの場合、「新幹線大爆破」の監督は、佐藤純弥、他の作品には「人間の証明」や「男たちの大和」があるが、国内向きに監督で、海外ではほとんど知られていない。「幸せの黄色いハンカチ」の監督は山田洋次で、国際的には多少知られた監督ではあるが、「動乱」、「八甲田山」の森谷司郎監督は全く知られていない。そのため、高倉健主演の映画の中で、海外で知られているのは、「ブラックレイン」くらいで、この映画についてもむしろ松田優作の方が名前としては知られている。ちなみに知人のアメリカ人に高倉健について聞くと、見たことがあるが、名前は知らない、ただの日本人の俳優と言っていた。中国では「君よ憤怒の河を渉れ」が大ヒットしたため、日本の人気俳優であるが、それ以外の国ではあまり知られていない。日本に限定した偉大な俳優なのだろう。個人的には、一緒に写真を撮る、サインがほしかった数少ない俳優で、他に誰がいるかと考えると吉永小百合さんくらいか。今の時代、こういった大俳優はいなくなった。
 最近の邦画は、海外からの買い付けもあり、字幕で上映されることもあるし、小津や溝口など有名監督はよく回顧上映会がある。宮崎駿の作品はすべて海外でも上映されているし、最近の日本映画の多くは英語字幕付きでDVDで売られている。
 高倉健の作品のうち、海外で最も上映、あるいはテレビで放送されているのは、「新幹線大爆破」で、これを参考にした作品も多い。次は「幸せの黄色いハンカチ」で、こういった泣かせる映画は海外でも人気があり、リメークもされている。それに比べて「八甲田山」や「動乱」などは軍隊映画のせいか、ほとんど海外での放映はないと思う。実にもったいない。
 とくに「八甲田山」は、今と違い、全くCGが使われていない、生の撮影で、これだけ迫力のある作品は日本には他にないし、世界的にも珍しい。「ポセイドンアドベンチャー」、「ベンハー」などもシーンによってはすごいところもあり、何度みても面白いが、同じような実写特有の面白さが「八甲田山」にはある。すでに5回ほど見たが、八甲田山がある青森県の真冬に見ると、かなりリアルで外の吹雪いている景色と対比することで、寒さが倍増する。これは是非とも、英語、中国語の字幕をつけて、海外で売り出すべきである。配給会社からすれば今更と思うかもしれないが、こういった隠れた名作は昨今の日本ブームに乗り、どんどん海外へ紹介すべきだし、これを見て青森県を訪れる観光客もいるかもしれない。


 私としては、名優高倉健の最高傑作で、海外でも十分に通用する超大作として「八甲田山」を挙げたい。昔、黒部ダムを見学した時、石原裕次郎の「黒部の太陽」のビデオをずっと流していた。一度、弘前ロータリークラブの懇親会で、旧弘前偕行社を使った時がある。ここは「八甲田山」の舞台になった場所で、そこでバック映像として映画「八甲田山」を流したことがあった。現実と映画がミックスされ面白かった。できれば、青森を海外で紹介する場合は、「飢餓海峡」、「海峡」、「竹山ひとり旅」、「田園に死す」、「八甲田山」の英語字幕付きで上映してほしいものである。変なPR動画よりはよほど効果がある。青森の冬に見る「八甲田山」は最高である。是非、正月休みにはレンタルして見て下さい。

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