2016年2月18日木曜日

東京好み



 青森に来て戸惑うのは、いまだに東京好みの傾向があります。東京が一番で、地方はだめだという考え方です。患者さんの中には、一般歯科で矯正治療を受けていたが、東京から来る先生が月に一度しか来ず、なかなかスケジュールが立たないため、かわりたいという方がいます。そうはいっても矯正治療を請負制度なので、すでに料金を払っているなら、そちらで治療を継続するようにアドバイスします。その際、どうしてそこで治療しようと思ったのですかと聞くと、東京から矯正の先生が来て、見てくれるからと言います。先生の名前を聞き、インターネットで調べると、認定医のそこそこのキャリアを持つ先生ですが、敢えてその先生にみてもらうほどのものではありませんが、患者さんにとって東京からという響きがいいのでしょう。

 確かに東京には素晴らしい先生がいます。見えない裏側からの矯正治療、リンガル矯正においても、ほぼ外側からの矯正治療と同レベルの先生が十数名いますし、またインブザラインなどのスペシャリストもいます。ただこういった先生のところには全国から患者さんが集まり、実際の治療は若手の先生が行うこともありますし、また著名な先生が月に一度でも地方の一般歯科医のところに来る必要もないし、暇もありません。矯正歯科の場合、一人の治療には最低2年間、月に一度、見なくてはいけませんので、専門医までとっている先生で、東京から地方へバイトに来る先生は少ないでしょう。

 かって医科の分野でも、東京、それも東京大学医学部附属病院が最高という認識がありましたが、台湾の李登輝元総統が心臓病の治療のためにわざわざ、岡山、倉敷中央病院に来たあたりから、地方にも名医がいることがわかってきました。さらに天皇陛下の心臓バイパス手術を順天堂大学の天野教授が執刀したことから、東大神話もなくなり、最近では岡山大学の大藤教授の肺移植など、むしろ地方の大学病院のドクターの方が有名になっています。

 むかし小児歯科にいたころ、宮城県郡部の一般歯科でバイトに行っていましたが、そこの病院にはでかでかと“東北大学歯学部附属病院 小児歯科の先生が治療しています”と書かれたことには閉口しました。こちらは入局して2年目で、とてもまともな治療ができないのに。

 それでも都会の先生、特に東京の中心で開業している先生は、競争が激しいのか、サービス面や設備は素晴らしい。ある患者さん(未治療)を東京の先生のところに紹介すると、まるでエステのようで、ドギマギしたと言っていました。受付、衛生士、ドクターとも洗練されユニフォームを着て、患者さんには十分な説明をし、きれいなパンフレットを渡すのでしょう。私のところでは手作りのカラーコピーなのだが。東京での治療が高いのではなく、こうしたサービス、環境とも高額な治療費に見合ったものでなくては、患者はこないのでしょう。内容、治療の質だけでなく、雰囲気も大事で、こうした点では大阪は東京に比べて疎いし、さらに田舎では劣ります。昔、東京大学駒場近くの旧知の絨毯屋に行った折、大学教官と思われる紳士とその奥様が、「失礼ですが、この絨毯はいかほどするのですか」と店主に聞いていました。その横で、私は何枚も重ねられた絨毯をめくって、懸命に値札を見ていました。お恥ずかしい次第ですが、関西人はこうしたもので、高級感の質が違うように思えます。

 写真上はcelebrity dentistというアプリで、有名人そっくりのアニメの歯の治療をするというゲームです。下は写真アプリで、好きな矯正装置を付けた口元に加工できます。

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