2025年7月2日水曜日

矯正治療が高いのは技術料

amazonで売っているブラケット、メタル製で1症例用
6.99ドル、約1000円、もちろんこれでも普通に治せる。技術とはそういうものである。



矯正治療費は高いというのは皆知っているが、なぜ高いということになるとよくわかっていない。歯科医院によっては金属のブラケットと白いブラケットで値段が違うことがあるが、私にいわせれば、差をつけるほど大きなちがいはない。例えば金属製のブラケットが一つ250円くらい、強化ブラスティックの白いブラケットが500円くらい、さらにセラミックのブラケットで1200円くらい、一番高いもので2500円くらいである。抜歯症例でいうと第一、第二大臼歯、第二小臼歯の計12本でメタルのチューブは一個500円×126千円、犬歯、切歯の12本を一番高いセラミックでも2500円×123万円となり、ブラケット代だけなら、せいぜい4万円以下である。さらにワイヤー代もピンキリだが、一般的によく使うステンレススチールのもので200円くらい、超弾性ワイヤーなど使っても2年間の治療期間で3万円以下となる。つまりマルチブラケット装置に材料費はどんなにがんばっても8万円以下、私の診療所でいうならブラケットとチューブで1症例が14200円、ワイヤーはよく交換する方だが、それでも2年間で30回交換したとしてもおおよそ15000円、他のゴムや結紮線、フックなどが5000円くらいで、34200円くらいとなる。もちろんこれ以外にも、人件費、テナント料、光熱費さまざまな費用はかかったが、これは保険診療でも同じである。

 

一方、私のところの基本治療費は40万円なので、40万円マイナス34200円が材料費を除くもうけとなる。また調整料の3000円のうち、ワイヤーや結紮線、ゴムの費用など600円くらいが材料費となり、残りがもうけとなる。材料費はうちの場合、基本治療費で8.6%、調整料で20%となる。もうけはそれぞれ91.4%80%となる。これが基本治療、80万円の場合、もうけは95.3%、調整料が5000円の場合、88%となる。

 

それではこの80-90%のもうけは何の値段かというと、多くは技術料といえる。もちろん銀座で開業すれば、テナント料、人件費、あるいは広告費もかなり高いが、処置としては技術料が大きいと考えて良い。手術を例にすればよくわかるが、ブラックジャックはそのすぐれた手術技術で高い手術料を請求している。日本は極めて特殊な国で、ブラックジャックに手術してもらっても新卒のペイペイに手術しても手術点数は同じであるが、本来技術料というのは、経験、知識、技術の差によって異なるものである。であるなら若手の先生で経験、知識、技術がなければ、ベテランの専門医で同じ技術料を取るのはおかしなことになるし、本来ならそういうことはありえない。若手の外科医がブラックジャックの料金をとっても誰も手術を受けないからである。

なのに患者はどうして一般歯科医で矯正治療を受けるのだろうか。不思議なことである。私自身、それほど器用な方ではないとしても、年間100-150症例、30年間では3000-4500症例、大学で治療したケースも含めれば、優に5000症例は治療した。ところが一般歯科医であれば、普通年間に多くて10症例、30年間で300症例、このうち、マルチブラケット装置での治療と2年間の保定という症例はもっと少なく、さすがに技術的な違いがあろう。ましてやインビザラインしかしない先生など論外であり、さしずめ外科治療もしたことないのに、内視鏡手術をいきなりするようなもので、危険この上もない。

 

矯正治療の値段は、ほとんど技術代ということを述べたが、それでは何をみて判断するかである。まず日本矯正歯科学会の認定医以上の資格を持つ先生のいる歯科医院がよい。さらにいうならその上の資格、臨床矯正指導医、あるいは昨今できた日本歯科専門医機構、矯正歯科専門医の資格を持つ先生がさらによい。また先生の履歴をみて、大学病院矯正歯科、あるいは矯正歯科専門医に勤務したことはない先生はまずマルチブラケット装置による治療はできないとみた方がよい。最近は、暇なのでYouTubeをよくみるが、私がよく知っているあるいは学会でも有名な先生は誰一人でていない。まず認定医の資格すら持っていない先生がほとんどで、少し情けない気もする。美容外科のチャンネルも多いが、少なくとも彼らは正式な形成外科の医局で勉強した先生が多い。それに対してYouTubeで歯科矯正を発信している先生は、私からいわせればほとんど素人で、本当に恥ずかしい。優秀な矯正歯科医のところは、患者が多くて、YouTubeなどしている暇もないし、これ以上患者が来られるときちんとした治療ができないとそもそもホームページすら作っていない先生もいる。


 

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