2018年4月12日木曜日

ホームページと矯正歯科料金


 最新の医療広告のガイドラインによれば、矯正歯科のような自由診療を広告する場合、“公的医療保険が適用されない旨と標準的な費用の併記が必要”となっており、さらに“標準的な費用は、窓口で実際に支払う費用の総額がわかるように記載”となっている。他より安い、半額といった費用を強調した品位を損ねる内容のものは厳に慎むべきとしている一方、費用に関する事項は患者にとって有益な情報であるので、必ず記載しなくてはいけない。ここでいう標準的な費用というのは、その地区、東京での平均の値段ではなく、その医院の平均的な費用のことを指す。治療法によって費用が違う場合は、例えば唇側矯正治療はいくら、舌側矯正治療はいくらとおおまかな費用を記載する。実際の治療に入って、ホームページあるいは説明時と費用が違うと患者は困るため、そうしたことがないように標準的な費用をきちんと記載する。

 さらに今年二月に発表された指針では“自由診療は保険診療として実施されるものとは異なり、その内容や費用が医療機関ごとに大きく異なり得るため、その内容を明確化し、料金等に関するトラブルを防止する観点から、当該医療機関で実施している治療等を紹介する場合には、治療等の名称や最低限の治療内容・費用だけを紹介することにより国民や患者を誤認させ不当に誘引すべきではなく、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数を掲載し、国民や患者に対して適切かつ十分な情報を分かりやすく提供すること。標準的な費用が明確でない場合には、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む。)までの範囲を示すなどして可能な限り分かりやすく示すこと。また、当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用しないこと。”となっている。

 全く知らないレストランや飲み屋で料金表がないとどうであろうか。相当、不安になるであろう。最近ではインターネットなどで大体の値段を知ってから店に行くので、それほど料金で不安になることはないが、昔は旅先で、食べる、飲む場合、知らない店の暖簾をくぐるのは大変勇気がいった。

 保険治療は全国共通で、なおかつ3割負担であり、その費用をいちいち患者に説明する、あるいはHPに記載する必要はないが、自費診療の費用については、レストラン、飲み屋の料金表と同じく、医院によってかなり違い、さらに患者にとっても最も関心のあるところであり、厚労省もインターネット広告では必要な情報と認知している。もっと言うなら、歯科ではインプラント、矯正治療をホームページで宣伝する場合は、必ず標準的な費用を明示すべきとしている。患者にとって矯正治療にいくらくらいかかるかは、ホームページから得られる最も重要な情報であると言ってよい。ところが実際に歯科医院のホームページに標準的な矯正料金を記載しているところは多くない。

 個人的には矯正治療を普及させるためには、ことに料金的なトラブルはできるだけ減らしたい。そのためにはホームページ上には標準的な料金表は必ず載せるような歯科医師会などで指導すべきであるし、転医、中断の場合の料金の清算、再治療の料金無料、低額などについても、どこの歯科医院で矯正治療を受けても普通になってほしい。歯科医院によっては、矯正治療は難度や治療法によって費用が違い、それをすべて記載するのは難しいというが、実際、治療を始める前に患者には料金の説明をするのだから、大まかな費用は書けるはずである。多くの矯正歯科医院の料金体系では、相談料、検査診断料、基本治療費、保定装置料、調整、観察料なので、2、3年間の治療費の総額は大体、決まる。一期、二期にわける場合は、中には一期のみで終了する場合もあるが、それでも一期、二期のそれぞれの基本治療費は記載できる。さらに調整料、観察料をとらない一括料金制をとっているところは、舌側矯正、インビザラインなど特殊な治療法の加算以外は、患者、期間によって変わらない同一料金となる。問題は装置別の料金をとっているところである。この場合、総額を提示するのは非常に難しく、個々の装置の費用を掲載することになる。そもそもこうした料金体系は患者に最終的にいくらかかかるかわからないため、あまり良い方法ではなく、大学病院でも私立の歯科大学の多くは一括料金になっている。残念なことに国立大学では未だに装置別のところが多いが、それでも成人、子供、治療法による平均治療費は簡単にでるし、細かく言えば平均と最小、最大、標準偏差は出るので、むしろそうした数値をホームページに載せるべきであろう。

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