2019年2月22日金曜日

インビザライン

インビザラインに白いアタッチメントをつけている


 アメリカでは、インビザラインあるいはSmile Direct Clubのようなマウスピースを用いた矯正治療が流行っている。これにはアメリカの民間保険会社も加担しており、歯科の医療保険に入っていると、例えばSmile Direct Clibの例で言えば、1850ドルの治療費のうち保険会社が1100ドル負担するため、実質の負担額は750ドルとなる。詳しくは知らないが、保険会社の負担額1100ドルは他の治療法を選択しても同じあると思われ、アメリカでの平均矯正治療費は6000-8000ドルくらいなので、実際の負担は4900-6900ドルとなる。それを考えれば、Smile Directはかなり安いし、それにつられて元祖のインビザラインも少し安くなっている。

 こうしたマウスピースによる矯正治療の適用は、わずかな叢生、でこぼこであったが、その後、抜歯ケースにも歯に突起物をつけて直すことができるようになったし、大臼歯の遠心異動による難しい治療ケースなども専門誌で見るようになった。かなり適用範囲が広がったようである。それでも歯にブラケットをつけてワイヤーやゴムの力で歯を動かす従来型の治療法に比べて、かなり不利な点がある。まずマウスピース型のものはソフトプラスティックから加わる力を矯正力としているが、有効に力がかかっているとは思えず、かなりロスがある。特に抜歯ケースでは歯ごと動かす歯体移動が必要なため、歯に有効な力を与えるためには歯に突起物(アッタチメント)をつける必要があり、これではブラケットと同じになる。さらに歯の移動には、終日、ゆっくりした力を歯にかけ続けなくてはいけないので、基本的にはインビザランでも終日使用が原則となる。また可撤式矯正装置なので、使ってくれないと効果はない。一番大きな問題点は、実際の患者さんの治療では計画通り治療が進まないことがある。経過よく、きちんと治療が進む場合もあれば、同じ治療をしてもなかなか歯が動いてくれない場合がある。そうした場合は他の治療法を変えることも多いが、インビザラインでは治療変更は可能ではあるが、難しい。

 数年前、近医でインビザラインによる治療を受けている患者がセカンドオピニオンで来院したことがある。骨格性反対咬合で、オトガイの偏位や叢生もある。場合によっては外科的症例と考えたが、抜歯して歯の移動による代償的な治療でもかなり難しい。おそらくインビザライン社に発注すると自動的に最後までの装置が作られるが、それはただ今の状態から最終状態までを分割しただけのもので、とても治りそうにない。患者へのセカンドオピニオンとして、自分はインビザラインをしていないが、この症例は難しいのではないかと言った。インビザラインだけで完全に直せば学会報告ものだが、単純にマウスピースを交換するだけでは難しく、アタッチメントをつけたり、部分的にブラケットをつけたり、ゴムも使わなくてはいけないだろう。
 
 ただこのケースで救われるのは、担当医が一応、認定医の先生なので最悪の場合は、通常の矯正治療に変更すれば何とかなる。一方、こうしたマウスピースによる矯正治療は一般歯科で行われることがある。その場合、うまく治療できない場合は、それで終了となる。これ以上は無理ですと言われて。あるいは患者が装置を使わない場合は、あなたの責任ですと言われ、これで終了となる。マウスピース矯正を行う場合は、少なくとも、治療がうまくいかず、他の治療法に変更になった場合の費用、あるいは何らかの理由で装置を使わなくなった場合のこともきちんと聞いておいた方が良い。治療終了後の後戻りの再治療についても、費用も含めて聞いておくように。また見えない矯正装置とはいえ、プラスティックのピカピカ感はあるし、異物感、発音障害も多少はあるので、見えないという点では舌側矯正の方が良いし、適用もはるかに広いし、期間も短いと思う。

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