2024年3月13日水曜日

最近思うこと 若い歯科医へ

 





先日、腕の痛みがあったので、近所の整形外科に行くと、来週から工事のために休診となり、4月から新しい先生による医院になりますが、患者さんはそのまま治療を継続できると言われた。年配の先生で、体調も一時悪かったこともあったので、後継者ができて良かったと思った。次の日、お尻のできものが出て痛くて座れなかったので、少し遠方にあるが、以前、お世話になった皮膚科を受診した。処置してもらって一気に楽になったが、ここも4月からこれまで副院長であった若い女医さんが院長になって、名称も変わるが、スタッフもそのままするので、心配入りませんとのアナウンスを受けた。二軒訪れた医院、両方が年配の先生が引退し、若い先生が後継者になった。家に帰って家内に話すと、家内がその日に行ったレディースクリニックも同じようの4月から先生が変わり、診療所名も変わるという。偶然とはいえ、どこも後継者がいて、患者さんにとっては何よりである。

 

それに引き換え、歯科医院でも昨年は3件閉院したが、2軒はすっかりなくなり更地に、もう一軒は診療所を改築して自宅になった。今年も何軒か閉院するが、どこも後継者はいない。また二軒は院長が病気のために長期の閉院状態だが、どうなるかわかっていない。診療所の受付の横の壁には15年ほど前に作られた歯科医院の場所を示す地図を貼ってある。閉院した歯科医院については、その都度、マジックで消しているが、すでに20軒以上がなくなっている。地区によっては、弘前市内でも歩いていける距離に歯科医院がないエリアが出てきている。

 

歯科医院の場合、患者さんは歯が痛くなる頻度はそれほどではないので、歯が痛くて久しぶりにいつも行く歯科医院に予約しようとするとすでに閉院していたという話はよく聞く。弘前歯科医師会も10年くらい前が診療所数ではピークで、その後は、新たに開業する歯科医院より閉院する歯科医院の方が多い状況が続いている。今のままのペースが続けば、後10年で、2010年頃の半分くらいになる。残念ながら、前述したように子供以外の先生が後を継いだケースはこれまで一軒もなく、子供を歯科医にしても親の後を継ぐのは半分くらいしかない。

 

さらにこれは私らの世代と若い世代の差であるが、今の若い先生は患者さんが来てもいきなり治療することはない。昔であれば、歯が痛くて歯科医院に行くと、レントゲンなどの検査をして、その日に神経を抜いたり、あるは抜歯したりしたが、今の先生は、当日には検査はするが、処置までしない場合が多い。もちろん理想的には、まず検査をして治療方針を立てて、それに沿って治療をしていくのが正しいが、患者が痛がっているのであれば、まずそこを治し、それから全体的な治療方針を立てるべきである。ただ今の若い先生は治療のスピードが遅いので、一回、間を空けて治療をしたいのだろう。先日、患者の大臼歯のレジン充填が破折していたので、新しくできた歯科医に紹介したが、初回はデンタルレントゲン写真一枚撮り1ヶ月後にレジン充填ということになったという。昔の先生であれば、2回の予約をするなら、一回で全て終わろうとしたし、その方が効率的である。40年前、鹿児島大学歯学部病院小児歯科では、小児の治療を4ブロックに分けて治療をしていた。ほとんどの歯が虫歯の子供いたとしよう。まずレントゲン検査をして、ざっと軟象をとり、ユージノールセメントでカリエスコントロールをする。次回からはCD Eにラバーダムを装着し、麻酔をして生活歯髄切断をして乳歯冠、あるいはレジン充填、次回は別の1/4ブロック、4回目に治療が終わると上顎乳切歯にサホライドを塗って終了となる。上下左右のDE全て、生切、乳歯冠ということも普通にある。もちろんここまでひどくなければ、1回、2回で終了する。障害児では、全麻下で、一気に10本以上の歯を治すこともある。多分、若い先生は、一本ずつ治すのであろう。

 

歯科医の能力の一つには治療の速さが求められる。昔、宮崎医科大学の歯科口腔外科にいたころ、そこの助教授(のちに教授、学長)は抜歯の名人でほとんどの埋伏歯を15分以内で抜いていた。腫れ、痛みも少ない。一方、若い先生は同じような症例で1時間以上かかりこともあり、腫れも大きい。矯正歯科においても、私自身の経験で、大学病院のいたときに比べて診療時間は1/4以下になったが、診療レベルは逆に高くなった。つまり臨床というのは遅くて下手から、早くてうまいになるのが普通なのである。患者数を見て治療スピードを上げるのも重要であり、元気な若い先生はもっとどしどし治療をしてほしいものである。


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