2024年3月22日金曜日

歯科医のイライラ



歯科医がイライラし、スタッフや患者に怒ることがある。私もそうである。診療中に怒り、スタッフに八つ当たりすることもあり、反省している。

 

どうした状況で、こうしたことになるか、例を挙げて説明しよう。例えば、矯正治療でいえば、ワイヤーを外し、調整し、そしてセットして本日の診療は終了、最後に上顎第二小臼歯を結紮しようとするとポロッとブラケットが外れる。ああとつぶやくがこれくらいではカッとはしない。諦めてもう一度、結紮線をカットしワイヤーを外し、新しいブラケットをつけて、ワイヤーを結紮すると、また外れることがある。ここらから少しイラッとなる。バンディングに切り替え、もう一度ワイヤーを外し、小臼歯バンドで同じことするが、今度は衛生士が間違えて下顎のブラケットを準備し、それをろう着した時点で気づく。ここで衛生士に怒る。当初、15分で終わることが30分以上かかり、次の患者が待っている。イライラしてカッとなるのはこうした状況である。

 

同じようなことは、抜歯の際、簡単に抜けると思ったのに歯根の先端が折れたとか、形成中に、急に患児が手を上に挙げて舌や頬粘膜を切ったとか、色々ある。さらに患者が多すぎて、次の患者がいっぱいいるときも、受付の予約の取り方にイラつきカッとなる。

 

なぜカッとなるか、最初に例で言えば、ブラケットが外れるのは不可抗力で、どうしよもない事象であり、いくら努力し、注意しても避けることができない。こうしたことが起こる時にカッとなりやすい。自動車を運転していて、後ろから追突されれば、カッとするだろう。コンピューターの急に壊れて、中のデーターも消失、これもよくあることだが、これもカッとなるだろう。

 

歯科の治療を、外科治療によく似ており、内科のように話だけで終わることはなく、何らかの処置を行う。外科手術の場合、同じような手術をしていても、相手は機械ではないので、それこそ人によって全く状況は異なり、あり得ない状況が起こることがある。優れた外科医の特色として、こうした予知しないことが起こった時に、いかに冷静に対処できるか、心に言い聞かせて、中から湧き起こるイライラを抑えていく。イライラして良い手術ができないとわかっているからだ。ただその場合、一旦、スタッフに八つ当たりしてガス抜きをする先生と、グッと飲み込み先生がいる。私の知っている歯科医の先生はグッと飲み込みすぎて、治療後に気分が悪くなりトイレで吐く先生もいる。

 

こうしたイライラ、怒りをなくす方法は、一つは、治療を中断する方法で、例えば、ブラケットが外れたなら、次の来院日に再装着すればいいし、抜歯で歯根を破折した場合も次回にもう一度トライし、無理なら前もって大学病院に紹介状を書いておけば良い。ほとんどはこの手でイライラ、怒りは治る。もう一つは、他の人にしてもらう。同じくブラケットが外れても、処置自体を全て歯科衛生士や助手にされているところは、そもそも先生はイライラも怒りもない。さらに患者数を減らす、処置を減らす(予防処置中心)などもイライラを少なくする方法である。さらに近年では、こうした治療自体によるイライラだけでなく、患者とのコミュニケーションも原因となる。例えば、延々と電話でクレームを話し続ける患者がいたり、これは聞いた話だが、補綴物の適合が悪くなり、その日に入らなかった時に、患者から交通費を請求されたという。これもかなりイラつく話ではあるが、その先生は流石にベテランで、平謝りして、2000円だか3000円高の交通費を払った。イラついて患者と論争するより早いという。

 

最近は、歯科医が患者に対してイラつくと、すぐにGoogle レビューなどに投稿され、厳しい意見を受けることが多いので、若い先生の中には、こうしたイライラを体に溜め込み、体を壊す先生もいて難儀な商売だと思う。もちろん基本的には先生の性格によるものが一番で、せっかちの性格の先生はイラつきやすく、気の長い性格の先生は怒りにくくが、これだけは性格なので治らず、私の場合もせっかちな性格なので、障害者用駐車場の平気で車をとめる人や歩行中に突っ込んでくる右折車にはつい注意をして、逆ギレされたりする。中でも一番イラつくのは、受付や衛生士に、口の利き方が悪いと怒鳴る親がいる。先生には何も言わないが、受付や衛生士に、この口に利き方は何だと怒鳴る。会話は全て聞いているので、明らかにおかしい場合、私は怒る。矯正歯科の場合は、途中でやめられないので、結局、その後は子供だけが治療し、親はバツが悪く駐車場で待つことになる。この話を4人の先生にすると全員、こちらの非を認め、従業員に謝らせると言っていた。医療はサービス業なので、イラついてはけない、怒ってはいけないということらしい。弁明になるが、歯科医がいつもイラついているのではなく、実際に患者に怒るのは年に1、2度のことだし、スタッフに強く当たった時はいつも後悔して落ち込む。


 

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