2009年7月16日木曜日

ローリー族のキリム




 ローリー族は、Lori,Luri,.lurと色々と表記されますが、イラン、西部から南西部に遊牧する民族です。紀元前7から8世紀のルリスタンブロンズと呼ばれる古い青銅製のブロンズ像、主として動物をモチーフにしたものが発掘され、有名ですが、イランの最も古い部族と考えられ、現在、300万人くらいいると思われます。イランでもかなり独立して集団でしたが、1940年以降は次第に国家集団に統合されていきます。

 ここのキリム、絨毯は、地面に杭を打った単純な水平の織り機で編まれます。古い写真を見ると、炎天下の野外で実に素朴な織り機でお母さん、おばあさん、子どもが羊、ヤギの粗い毛で編んでいます。塩を入れるバッグやサドルバックなどはかなり緻密に編まれており、じつにおしゃれですし、また絨毯も動物の独特なモチーフがあっておもしろいデザインです。

 私が12年前に初めて買ったキリムが、このローリー族のキリムです。250cmくらいの大きなもので、2枚を真ん中で合わせられています。ボーダーはチューリップ模様で、グランドは茶色で6つの大きなダイヤモンドが配置されています。

 ローリー族のキリムとカジュガイ族のキリムの鑑別は非常に難しく、このキリムがローリー族のものかは確定できません。この分野の第一人者のアートコアの竹原さんが言うのだからそうでしょう。鑑別点としては縦糸、横糸ともカシュガイに比べてヤギの糸が使われ、フリンジ部で見分けがつくとも言われていますが、このキリムはそうでもありません。色使いが少なく、色もdull(くすんだ)という言葉がよくでます。また糸もカシュガイに比べて粗く、太いため、どっしりしているようです。カシュガイの女の人たちはおしゃれで原色のスカートやスカーフをつけ、キリムも黄色や青などのカラフルな色使いをしますが、このキリムは白のコントラストがモダンですが、黄色もどちらといえば黄土色で、そういった点ではDullな色使いでローリーと言えるのかもしれません。両端のダイモンドを途中でぶっ切れており、グランドにある小さな模様もばらばらです。こういった点もローリーらしい感じがします。おそらく1950年ころのものと思われます。

 このキリムの好きな点は、土のイメージを感じさせ、とくに冬場、外に雪が積もっている時などは、じつに暖かい感じがします。イランの灼熱の暑さが放熱しているようです。イランの奥地で60年も前に遊牧民により作られたキリムがいったいどういった変遷により、日本の最北の青森にたどり着いたのかは、キリムに聞いてみないとわかりません。実にロマンチックな想いがします。

 一時は、キリムも日本でも流行りましたが、最近では元にもどった感じがします。キリムや絨毯を敷くと、生活感がでて居心地がよくなる反面、シンプルな空間を求めるひとの好みには合わないようです。日本の建築家は、どちらかというときれいで、美しい空間を設計する傾向があるようです。何にもない空間にシンプルな家具を配置するような写真がインテリア雑誌や建築雑誌に出ていますが、いったいどこでテレビをみて、スナック菓子を食べ、本を読むのか、見当がつかず、まるでショールームのようで生活感が感じられません。住み心地のいい家というと、白洲正子の家を思い出しますが、古い家具や骨董品が飾られているとともに、床にはキリムが敷かれています。

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