2024年4月14日日曜日

当院における外科的矯正 2

 

近所で鷹を見ました。カラスに攻撃されていました



鹿児島大学では、主としてファイシャルダイアグラムを用いて分析していた。この分析法の素晴らしい点は、視覚的に骨格性、歯槽性の異常、上下顎骨のずれ、上下切歯の傾斜、下顎骨のパターン(ハイアングルなど)が一発でわかる。他の矯正歯科の先生には

理解するのは不可能であるが、鹿児島大学では、半年ごとに検査をしてセファロ(ラテラル、PA)、パントモ写真、模型を撮る。まず朝10時に患者が外来に来ると、10台くらいあるチェアーに適当に座り、入局1、2年の先生が検査をする。まず口腔内、顔面写真をとり、そして印象を取って、放射線科にオーダーしてレントゲンを撮ってもらう。その間に印象に超硬石膏に塩を入れて模型を作る。大まかにトリミングでして、レントゲンができるのを待つ。レントゲンができると、すぐにファイシャルダイアグラムをレントゲンに直接、セロテープで貼り付けて、分析する。分析時間は10分。治療中の患者は、これまでの治療経過も見ながら、今後の治療計画を作る。そこに教授と先輩が来て、治療経過と今後の治療計画を説明し、絞られる。これを午前中に2名行う。ただ新患を、この時間で診断、分析をするのは難しく、慣れれば一般矯正患者はこれでも何とか診断できるが、外科的矯正にあたると、矯正回診でカンファランスと言われ、後日の夕方に治療計画をたて、医局員全員分のコピーをしてカンファランスに提出する。ここでもかなり叩かれ、疑問に答えられないと、再度提出となる。多い月にはこうしたカンファランス症例が67症例あり、さらに外科的矯正では、医局のカンファランスの後に口腔外科との合同カンファランスがある。そして手術になると、フック立てやスプリントシーネを作るだけでなく、手術当日は実際にオペ室に入り、助手として手術介助と顎間固定を行う。さらに入院中にも何度か、顎間固定の状態を確認する。また助手になると1年間、宮崎医科大学附属病院歯科口腔外科に出向し、ここで矯正歯科を担当する。担当する矯正歯科患者の抜歯、埋伏抜歯も全て矯正歯科医が行うし、病棟の注射や点滴も行う。私の場合は、大学の友人がここの医局長をしていたので、顎変形症の手術だけでなく、教授の口唇、口蓋裂の全ての手術の助手に入ったし、週に1回あるいは2回の当直もしていた。

 

こうした経験があったので、外科矯正自体については、矯正歯科だけでなく、口腔外科についてもある程度理解していた。1994年にこちらに来ると、弘前大学医学部病院の歯科口腔外科の教授に東北大学の先輩が就任したため、すぐに非常勤講師として採用してもらい、さらには形成外科の先生との親しくしてもらい、外科的矯正、口蓋裂の患者が増えていった。当時、弘前大学医学部歯科口腔外科ではあまり外科的矯正の症例がなく、年間1、2名であったが、今では20-30症例となっている。こうした場合にもフェイシャルダイヤグラムを使った分析やCDS分析は、口腔外科医や形成外科医にもわかりやすく重宝している。

 

これまで外科的矯正でうまくいかなったことを少し、挙げてみる

1.計画通りの移動されていない  これが一番多く、術後の位置決めはスプリントシーネで指定しているが、術後大きく変化することがある。近位骨片の位置決めの問題で、骨片をチタンプレートで固定するときに、下顎を前に持ってきて止めてしまうからである。反対咬合では、術後矯正で何とかなるが、非対称や上顎前突では、どうしようもなく、術後矯正でリカバリーできないことがある。10mm下顎を前に出したが、結局5mmしか出ていない場合や、上下の正中が一歯分ずれて固定された場合などである。後者の場合は、強い顎間ゴムを使用すると、固定していたネジが折れて結果的に正中が合ってくることもある。

2.上下の幅径が合わない  通常、反対咬合の場合、術前矯正では上顎歯列を狭窄させるケースが多いが、大臼歯部の咬合の緊密な場合は、なかなか上顎歯列を狭くできない。この場合は、術後矯正で修正した方がいい場合もある。私は018サイズのブラケットを使っているが、022ブラケットの方が合わせやすいのかもしれない。

3.前歯が中に入らない 術前矯正では、上顎切歯を舌側に移動して、後退量をかせぐために一時的に反対咬合を大きくするが、中には舌で上顎切歯を前に押すために入らないケースがある。力系ではそうしたことはないはずだが、舌突出癖のために上顎切歯が全く動かず、大臼歯ばかりが前に動いてしまう。こうした症例も術後矯正で治した方がよく、サージカルファーストはこうした症例では有効であろう。

4.術後の後戻り  術後の変化の多くは1の固定での問題に起因が、稀に保定に入って変化することがある。特に上顎前突の症例では、筋肉や皮膚組織のテンションから前に出した下顎を後ろに動かそうという力が後戻りに影響する。前方移動量が5-7mmを超えると後戻りが多いと言われるが、やってみないとわからない。       

 


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