2009年1月25日日曜日

世界に誇るべき国産機



 海上自衛隊のUS-2の量産型である3号機がロールアウトされた。正式塗装はF2と同様の群青色で、精悍さが増している。改良型のUS-2の最大の特徴はエンジン出力がまし、キャビネットも与圧化されたことであり、これにより天候が悪くても高度を上げることで最短距離で目的地に行くことができる。与圧がなかった旧機では悪天候を回避して迂回する必要があった。

 飛行艇は、大戦前から日本の得意分野で、太平洋の各地に散らばる基地間の輸送のため、多くの飛行艇、水上機が開発された。戦中これほど多くの機種が作られた国はない。そしてその集大成が二式大艇である。性能は当時の世界の飛行艇を断トツに凌駕し、日本の技術の高さを証明した。戦後もその技術は明和工業に受け継がれ、それがUS-1飛行艇となった。もともと飛行艇は軍事上あまり必要ではないと判断されたためか、アメリカをはじめ、各国とも関心は低く、唯一ロシアと日本くらいが戦後も開発を続けた。

 飛行艇の最大の特徴は、当たり前だが、滑走路がいらない点であり、またヘリコプターに比べて高速で、また航続距離も非常に長い。真珠湾攻撃に際しては、二式大艇を使い、直接攻撃を行ったこともある(途中、潜水艦より給油)。そのため外海でも近場であれば、ヘリコプターによる救助も可能だが、遠くになると飛行艇しか不可能であり、アメリカ空軍機が太平洋上で遭難した時などは、アメリカ軍のすべての機種でも救助が不可能で、自衛隊に要請がきて、US-1でパイロットを救助したという事例もある。

 このUS飛行艇の特徴は波高3mでも運行可能な点である。波高といっても漁師さん以外あまり関心はないであろうが、以前鹿児島十島村の巡回歯科診療でトカラ列島に行っていたことがある。島への上陸は今では港ができて、以前の艀に比べては格段によくなったものの、波高が3Mを超えると、定期船が止まらない。そうすると1週間島にかんづめにされることになる。かなり天気がよくてもけっこう波が高いこともあり、NHKの天気予報で波高をチェックしていた。外洋では2.5-3mといった波高は多く、凪しか運行できないようではかなり出動機会は減るが、3mまで可能ならよほど悪天候以外は可能であることを意味する。この性能を支えるのは、極めて低い着陸速度とSTOL性能で、着陸速度はゼロ戦以下の!00km程度で、これはセスナ機並みであり、また離着陸も300m程度の滑走距離しかいらない。すごい性能である。これで思い出しのはドイツのシュトルヒという連絡機で、この機体のSTOL性能は今でも驚異的で、テニスコートくらいの広さで離着陸ができる?と言われている。当時のフィルムをみてもよく失速しないと思われる低速度、おそらく50-70kmくらいの着陸速度であろう。


 飛行艇のもうひとつの活用は、消防用に使うことで、それまでもカナダなどでは山林火災に飛行艇が使われていたが、阪神震災の時の火災に対して何ら有効な手を打てなかった反省から消火用飛行艇の構想が浮かんできた。当時、神戸市内は瓦礫の山となり、消防車も入れず、また水の確保もできず、ほとんど有効な防火ができなかった。すぐそこに海があり、これを汲んで防火すればといった発想は多くのひとがもった。とくに新明和工業では、お膝元の神戸の町、自分の工場に対して、何ら防火活動ができない経験からUS-1を改良した消防用飛行艇が試作され、一回当たり15トンの放水が可能で、またくみ上げも20秒で可能な好結果が得られた。特に日本のような回りが海で囲まれた国では、このような消防用飛行艇は大規模火災に有効な手段として考えられるが、予算的な問題でまだ採用にはなっていない。万が一ということを考えると一台くらいこのような高価な消防車?があってもよいのではなかろうか。近隣アジア各国の災害にも活用が期待できる。いずれにしてもこの機体は、極めて特殊な分野ではあるが、世界に誇るべき国産機であろう。

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