日本のサッパリ系のラーメンがアメリカの西海岸で人気のようである。ラーメンといえば海外ではとんこつというくらい、味のしっかりした、濃いスープのようなラーメンが人気があった。ところが、西海岸のロサンゼルスなどでは古くから日本式のラーメン店が多く、そうしたラーメンに飽きてきた客がサッパリ系のラーメンに向かったようだ。
私が20、30歳のころでも、寿司は外国人に人気はなかった。アメリカ人の多くは生ものを食べた経験がなく、どうも寿司は生臭くて食べられない、吐き出すような食べ物であった。ところが時代が変わり、体のためにいい、カロリーが少ないと無理して寿司を食べていくうちに寿司のうまさに気付き、それまでは寿司屋に行ってもカリフォルニア巻きなどしか食べられなかったお客がマグロの握りがうまいと思うようになる。要するに欧米人にとって日本食は食べず嫌いであったが、少しずつ食べていくと病みつきになってきたというのが実際であろう。
うちでも15年ほど前に二人のアメリカからの留学生を3ヶ月ほど預かったことがある。二人とも初めての外国が弘前で、他の国に行ったことはない。一人はサウスダコダ出身で、周りに日本人どころかアジア人も見たことがないという。もちろん日本にくるまで日本食を食べたことはない。最初はご飯ですらあまり得意でなかったが、それは次第に食べられるようになったし、カレーライスは大好物となった。とんかつ、ハンバーグ、鳥の唐揚げなどの肉料理は好きだったが、刺身や寿司のような生魚は結局、最後まで無理だった。もう一人の留学生は、ボストン出身で、多くの日本料理店が近くにあり、ボストンにいた時によく日本料理を食べていた。そのため、こちらにきてもほとんどの食事は大丈夫であった。
今日、多くの外国人はインバウンドで訪日して、日本のいろんな料理を楽しんでいる。それだけ母国でも日本料理がポピュラーになってきて、刺身や寿司などの生魚も大丈夫になってきているのだろう。そうなれば、日本ほど食に恵まれた国は世界でも珍しく、例えば弘前のような地方都市でも、中国人がうまいと思う中華料理屋があり、イタリア人がうまいと思うイタリア料理屋があり、フランス人がうまいというフランス料理がある。さすがにチェネジア料理店は潰れたが、インドネパール料理店は粘っているし、アジア創作料理店ではベトナム料理やタイ料理も楽しめる。もちろんラーメン屋から天ぷら、寿司、とんかつ、カレーから本格的な日本料理までレパートリーが広い。昔、50年前にネパールに旅行に行った時、カレーばかりの食事に飽きて、どうしても日本料理が食いたくなった。首都のカトマンズでも1軒しか日本料理店?がなく、そこでウドンと親子丼を食べたがうまかった。
今日のようにグローバリゼーションが進み、世界の情報が同時に共用できるような社会では、好き嫌いという点でも共通化が進んでいるのかもしれない。日本で流行っても世界では通用しないものが多かったが、今は、一億人という日本の商圏で流行るものは世界でも流行るという考えになっている。You tubeを見ていると、ブラジルのある家庭では手巻き寿司が子供の頃からの母親、家族の食事になっていた。日系ブラジル人ではない。おそらく日本のカレールーなどは世界中で使われ、日本式カレーが家庭料理の定番になってくるかもしれない。
ここ最近の海外からのインバウンド客の急激な増加を見ていると、日本の生活、習慣に世界中が慣れてきた、近づいてきたことに尽きる。ヤマハが発明した電動アシスト自転車、トヨタが開発したハイブリット車、ニンテンドウ、ソニーのゲーム機、日本アニメは欧米では普通になっているし、玄関で靴を脱ぐ習慣も、まず北欧で一般化し、次第に南下し、フランスでも靴を脱ぐ家が多くなっているし、知人のアメリカ人に聞くとアメリカでは普通になってきているようだ。家の中が汚れないので、急速に広まっている。海苔がブラックペーパーと言われていたのは数十年前のことだし、盆栽、生花、お茶、俳句、金魚も人気が高い。逆に日本人だって、パン食を好む老人が増えているし、私など、もはや畳で寝るのは苦痛で、ベッドのない旅館には泊まらない。
外国の方でも、子供の頃からアニメに親しみ、“ドラえもん”、“キャプテン翼”、“となりのトトロ”などで日本人の生活を知っている人は驚くほど多く、彼らにとっては私らの世代が“ルーシショー”や“奥様は魔女”などで知ったアメリカの生活を夢見たと同じ気持ちで日本に行きたいのだろう。アジアだけで40億の人口がいて、彼らが今後、日本に来る人たちであり、インバウンドは一過性の流行ではなく、日本の大きな産業となろう。
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