2017年9月4日月曜日

昔の津軽の冬 2


新潟、十日町


 前回の続きです。「新ひょうたんなまず」からです。

ベンジャ
 ベンジャは日本式スケートで底が三角な下駄に鉄を打ち付けたもの。この鉄はスケート同様なまのだった。ベンジャの乗りかたは、いまのスケートと同じで、速さを競うばかりでなく、「いっぽ」といって片足ですべるものもあった。また「がに」といって横すべりもした。腰をおろし。股をひろげ、ベンジャを横に一直線にするのである。映画でみるとスケートの妙技には驚嘆するが、下駄すけ^ともなかなか見事な芸をやったものである。ベンジャの鉄の高さは、はじめは一分か二分のをはくが、大きな子供は八分だの一寸だのをはいた。(略)ソリすべりは、一人のりから五・六人のりまであったが、なるべく小さいのを用いた。先の一人はベンジャでカジをとる。そのうしろの乗り手もベンジャをはいて両足をひらいている。一番うしろに乗る人は、はじめ押して走り、勢いのついたところで飛び乗り立ったまま滑行する。

ベンジャとは下駄スケートのことで、下駄の底に鉄製の刃をつけたもので、明治39年に長野県下諏訪町の河西準乃助が発明したという。足袋の上からヒモで縛って下駄と固定した。今のスケート靴、フィギア〜ホッケー〜スピードのように、刃の長さがいろいろあった。

雪なだれ
「十日午後一時ころ中郡岩木村宮地の岳陽保育所で屋根雪が落ち、下で遊んでいたこどもが下敷きとなり、二名は直ちに救出されたが、残りの二名は死亡するという事件が起こった」(東奥日報)主任保母さんは「暖かくなったので、軒下で遊ばないように、こどもに注意し、きょうも屋外にでたこどもを、つれもどししていたのに」とくやんでいた。この場所には雪のカマコが作られてあったので、四人のこどもはそこに入って遊んだらしい。この日の屋根雪は五、六寸しかなかったが、ぬれ雪が二丈五尺の高さからおちたのでこどもの力でぬけだせなかった。

かまくらと言えば、秋田が有名であるが、青森県も雪が多いところで、子供達の冬の楽しみとしてカマコ(かまくら)を作ったのだろう。冬でも子供達は遊ぶことが好きで、坂やカマコ、雪だるまを作ったり、雪ぶつけ(雪合戦)、ソリ、ベンジャで遊んだ。

アマゲン
アマゲンは「雨返し」で、冬、雨が降るとそのあと嵐になって吹雪くのをいう。きょうの吹雪はそのアマゲンであった。フギドリは「吹雪倒れ」、吹雪に人命をうばわれるのをいう。きょう私らが自動車がフギドリして、あやうく助かったのであった。アマゲンやフキドリは、関東から南のほうの人には口で説明したくらいではとてもわかってもらえない。

雨返しとは“冬の寒さが緩んで雨が降った後、吹雪となることをいいます。寒さが緩んで雨となるのは、低気圧が接近して暖気が入ってくるからで、この低気圧が通過すると、冬型の気圧配置となって吹雪となります。日本海を進んだ低気圧が発達しながら北海道付近を通過するときに雨返しが顕著に現れます”となっている。

おば雪
「オバゆきふれば、猿のケツ、まっかだ」灰のような粉雪が、目もあけられぬほど、吹きすさみときは、大人も子供も家の中に閉じこもるほかにない。兎も猿もふるえながら、木の洞穴かなにかにじっとひそんでいるにちがいない。(略)オバ雪はノソノソと降るのは、雪遊びを楽しむ子供にとっては、とてもうれしい.山のお猿さんも、オバ雪が降ると、だまっていられなくなって、おシリをまっかにして、とびまわることだろう。綿をちぎったようなオバ雪が、すぐ先もみえないほどふりしきるのを、窓ガラス越しに、じっと見つめていると、自分の体が天にのぼってゆくような錯覚をおこす。

 オバ雪とはぼたん雪、結晶の大きな雪のことで、粉雪は硬く、細かな雪のため傘をさいていても音がなるほど強く降るが、オバ雪となると、やさしく降る。一気に積もってしまうが、柔らかくて軽いので、子供達にとっては、扱いやすい雪なのであろう。


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