2017年9月23日土曜日

映画 ダンケルク 




戦争末期の日本陸軍の装備

戦争初期の英国空軍の装備


 今週、家内と近所のデパートにショッピングに行った折、映画館の前を通るとダンケルクのポスター。一度、見たいと思っていた映画なので、家内にも一緒に見ようと誘うも断られ、一人で見た。まあミリタリー好きでなければ、それほど面白くはないと思うが、飛行機好きの私には見応えのある作品であった。
CG全盛の時代になったが、この作品では現存する飛行機が多く使われている。昔の映画「空軍大戦略」も実機が多数使われていたが、それに比べて数は少ないが、操縦席の描き方がよりリアルで空戦気分に浸れるし、エンジン音や機銃音などの実機のそれを再現している。

 ダンケルクには、ドイツ空軍もイギリス軍の撤退を阻止しようと攻撃をかけてくる。そのひとつにJu87シュトゥーカがある。この機体の急降下時に発生する空気を切り裂くサイレン音は爆撃される兵士には非常に恐れられたという記述は多数あるが、この映画でもそうした兵士の恐怖を映画の中で体験できる。爆弾による攻撃も怖いが、機銃掃射による攻撃は並んでいる兵士をなぎ倒し、逃げる間もない。

 スピットファイアは英国空軍を代表する機種であるが、本当にコクピットは狭く、後ろはバックミラーを使わないと全く見えない。日本の陸海軍では水滴風防でない飛燕でももっと広い。確かスピットファイアはコクピットの下が開くようになって出入りはそこからしたような記憶がある。パイロット一人がぎりぎり入るF1カーのような構造となっている。さらに面白かったのは、三機編隊でダンケルクに向かうが、すでに機内無線による僚機と連絡を取合っていた。音量が小さいのか、ヘルメットとマスクをしっかりしている。日本陸海軍で僚機と無線連絡がきちんと行われるようになったのは、終戦近く、例えば松山の343部隊であったと聞いたことがある。その4、5年前にはイギリス空軍は完全に無線による連絡を取合って攻撃していたことになる。性能的にはスピットファイアも零戦も大きな違いがなくても、こうした細かな点での遅れは大きな問題となる。

 零戦の無線機は九六式空一号無線と呼ばれ、性能的にはそこそこのものであったが、雑音がひどく戦闘中はほとんど使えなかったという。手信号などで僚機と連絡した。日本では超短波(VHF)の実用化が遅れ、そのために最後まで航空機無線が実戦に使えなかったと言われるが、実際はもっと細かい問題、例えばアースの不備やエンジン点火系のノイズ処理、絶縁テープがなかったなどであった。アースの問題は、アメリカ軍の捕獲機を参考にして改善されたようだが、いずれも本気で対策を検討すればもっと早く解決できたであろう。

 映画「ダンケルク」でもスピットファイアのパイロットは、送受信用のマイク、レシーバーを内蔵する帽子をきちんと着けていた。それに比べて太平洋戦争初期の零戦のパイロットは、そうした装置を全く着けていない。着用が面倒だという意識が強くあったのであろう。パイロットにすれば、雑音で聞けないような無線はいらないと考えていたが、上層部は航空無線の価値を十分に知り、一刻も早く実用化すべきだった。1896年にマルコーニが無線を発表したが、その7年後には国産の無線機を開発し、1905年には無線搭載した哨戒船「信濃丸」がバルチック艦隊を発見、通報した当時の日本の合理的な考えがもはや太平洋戦争ではなくなったのか。


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