2022年3月15日火曜日

矯正歯科におけるセカンドオピニオン



今後の治療方針やこれまでの経過について第三者の医師、歯科医に意見を聞く、セコンドオピニオンは、患者の権利としてリスボン宣言でも認められており、多くの医学系学会の倫理規定でも、患者からセカンドオピニオンの申し出があれば、それに応じるようになっている。具体的にいえば、セカンドオピニオンをしたい患者は主治医にこれまでの検査結果、経過、レントゲンなどの資料を要求し、それをセコンドオピニオンの先生に渡して診断をしてもらう。先生は自分の意見を患者に説明し、主治医には返書を送る。これが一般的なセカンドオピニオンの流れであり、転医を目的にしたものではない。

 

ところが矯正歯科にセカンドオピニオンにくる患者のほとんどは、前医の治療に不満があり、いくら先生に言っても聞いてくれないというものである。具体的にいえば、インビザランによる治療を4年間しているが、未だ治らず、奥歯が噛んでいない、奥歯が開いているから、咬むようにしてほしいと言ってもこれ以上の治療はできないと断られる。そこで一度、診てほしいという電話が私のところに来る。もちろん、こちらでは患者から相談があれば、セカンドオピニオンをするのはやぶさかではないが、それでも資料は全くなければ、ある程度とはいえ、診断はできない。そこで患者に主治医に連絡して、資料をもらってほしいというと、できないと言われる。最初にいうようにセカンドオピニオンは患者の権利であり、基本的には医院側は断れないので、こうした場合は、患者にそうした旨を伝える。それでもダメな場合は、私の方から、学会の倫理委員会に申し立てるといえば、資格剥奪につながりかねないので、資料を送られる。ただあくまでこれは矯正歯科専門医でのことで、セカンドオピニオンを求められるのは圧倒的に一般歯科での矯正治療の場合が多い。

 

この場合は、患者あるいはこちらから資料を請求しても、そもそもまともな資料、セファロをとっていないところもあり、この時点で治療自体はアウトとなる。相談にくる患者の治療結果は多くの場合、矯正歯科における標準治療とはかけ離れたもので、中立的に見ても患者の言い分が正しく、どうするものか非常に悩む。一般的なセカンドオピニオンの感覚からすれば、標準の治療法の中にも色々な治療法があり、そのメリット、デメリットを説明、今の治療法は間違っていないから、主治医を信頼して治療を続けるようにとアドバイスできれば、患者、主治医にとっても一番望ましいし、それがセカンドオピニオンの目的である。

 

ところが矯正歯科の場合は、セカンドオピニオンにくる患者の多くは、転医目的で、こちらとしても、そのまま患者の意向に合わせて転医すれば、今までの先生から患者を奪ったことになり、それも同業者の倫理観に背く。結局、主治医とよく相談し、こちらに転医希望があれば、主治医から紹介状を書いてもらうことにしている。治療の中断、中止、あるいは転医も患者の権利であり、法律上でも認められ、全体の治療費を前払いしている場合は、治療の進行度合いで料金の清算をしなくてはいけない。これも歯科医側の認識不足で、患者が一方的にやめる場合は清算する必要がないと思っているが、これは法律上間違っている。この場合は、面倒であるが、消費者センターあるいは弁護士に相談すべきであるが、額が少ない場合、弁護士に頼ると着手金と成功報酬によりほとんど返金は消える。

 

結局、どこで治療するかが一番重要であり、私のところに来る患者さんにも、一軒で決めるのではなく、矯正歯科をしている数件の歯科医院で相談してから、検査を受けるように言っている。確かに相談料として3000円くらいかかるが、それでもいろんな歯科医院で、大まかな治療法や期間、あるいは転医システム、さらにはセカンドオピニオンなどもできるか、などを聞くことは、治療の動機がはっきりするし、治療方法についても理解が深まる。

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