2022年4月2日土曜日

ウクライナ戦争から検討する

 

B-2爆撃機、一機2500億円、あまり高額なため戦闘に参加できない



北朝鮮のような貧乏国がよく核兵器開発をするなあという声がある。実は核兵器こそは最も安くて、効果のある兵器で、他国からの侵略に対する強い抑止力がある。もし北朝鮮に核兵器がなく、通常兵器のみ武装であれば、韓国軍単独でも1ヶ月あれば占領できる。それゆえ、北朝鮮は通常兵器の開発、配備を極力減らして、国家財政を総動員して核兵器の開発、保有を狙っている。究極の目的はアメリカ本土の攻撃できるICBMの配置であり、かなりのところまでいっている。

 

逆に言えば、通常兵器がものすごく高くなっている。現在、欧米で標準戦闘機になりつつあるF35の値段は一機で200億円、早期警戒機の価格は550億円、戦車だって安くはなく日本の10式戦車は一両、9.7億円となる。また弾道弾迎撃ミサイルの価格は最新鋭のSM-3ブロック2Aで一発40億円、空対空ミサイルでも一個、5000万円から1億円はする。第二次世界大戦の時の物価と比べて見ても、現代の兵器の価格は相当高く、数日の戦闘にかかる費用だけ見ても、莫大な費用が必要となる。

 

今回のウクライナ戦闘でも、こうした兵器価格の高騰が関係している。特に携帯用の地対空ミサイルや、対戦車ミサイル、大活躍のジャペリンと呼ばれる携帯用対戦車ミサイルは一発、2000万円であるが、それでも数億円以上はする戦車や10億円以上するヘリコプターがやられるなら、コスパは高く、ロシア側からすれば損失が大きく、うかうかと投入できない。特にロシア軍の新型戦闘機は、あまりに価格が高く、万一、低価格の地対空ミサイルで撃墜されれば全く割に合わないため、最近では戦闘に参加させなくなっている。さらに兵器自体も実際の戦闘に使ってみると、特に誘導ミサイルの故障はひどく、正確に攻撃できたのは40%程度であったとされ、恐らくは他の兵器も信頼性は低いと思われる。兵器は実際に使ってみないと、その信頼性は分からず、いくら高価な兵器であっても稼働率は低くければ、意味はない。

 

人的な被害を別にしても、現代の戦争は兵器の値段があまりに高くて、長期戦はできない構造となっている。もちろん第二次世界大戦のように国家総動員で戦争すれば、ある程度の長期戦に耐えられるが、その前に国民による反発を食らう。こうした点では、西側から贅沢な金の投入、限定されるとは言え携帯兵器を中心とした武器の供給がある限り、いずれロシアがギブアップせざるを得ない。

 

ウクライナ戦争の最も注目しているのが、隣国、中国で、仮に台湾侵攻した場合のシミュレーションをしているに違いない。かっての中国では、人の命はないに等しく、武器も安かった。ところが国民生活が豊かになり、人民解放軍兵士の命の値段も高くなり、武器価格も高騰している。経済大国、中国と言えども、無限大の高価な武器の使用はできず、やはり短期間の戦闘しか計画できず、陸続きでない台湾への侵攻はよほど難しい。さらに中国兵器のほとんどはロシア製、あるいはそれの劣化版であり、オリジナルの兵器ですらあれだけ故障が多いと、中国製の兵器が実際に使得るかという問題が生じる。

 

おそらく核兵器がなくなる、あるいは使用できないならば、通常兵器の価格高騰が、大規模な国家間戦争の終焉に繋がる可能性がある。今回のウクライナ戦争で、ロシアが経済的に疲弊し、今後、大国としての立場がなくなると、中国、あるいはアメリカであっても、通常兵器に大規模な戦争をすることは、イコール国家の経済的破綻を招くことに繋がる。つまり1機、200億円の戦闘機を大量に使う戦争は、もったいなくて、よほどの覚悟が必要であり、指導者にとっても国家財政の破綻につながり、戦争回避の大きな抑止力となる。


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