2022年4月1日金曜日

近世、近代の日本画、掛け軸コレクションの勧め

田中蘭谷、家に鶏や小鳥を飼って観察したというが、うまい絵である。
田中蘭谷、



現在、京都国立近代美術館で「サロン! 雅と俗—京の大家と知られざる大阪画壇」という展覧会が開かれている。主催者の一人、大阪商業大学の明尾圭造先生に、“芳園”に関する私見を勝手に送ったことから、内覧会の招待状をいただいた。お気を使わさせて申し訳ない。仕事が忙しくて、とても展覧会には行けそうもないが、出品リストを見て驚いた。私も好きで、江戸、明治期の京都を中心とする日本画については、そこそこの知識がある方であるが、それでも今回の展覧会の出品リストをみると、半分以上の画家は知らない。すごい展覧会である。

 

与謝蕪村、谷文晁、円山応挙、伊藤若冲、上村松園は、ほとんどの人は知っているし、少し絵に関心にある人なら、長沢芦雪、森寛斎、田能村直入、岸駒の名を聞いたことがあろう。ただ貫名梅屋、菅楯彦、耳鳥斎、黒江武禅、泉必東、玉手堂洲の名を知っている人はいるだろうか。この展覧会ではこうしたほぼ無名の画家にスポットライトを浴びせたもので、本邦でもこうした取り組みは初めてのことと思われる。この中で、今回、大英博物館から西山芳園の作品が一点、芳園平吉輝の作品が二点、展示されている。問題は、この芳園平吉輝のことで、これまで西山芳園の作品として数えられていたが、今回は西山芳園でないということで、こうした表記となった。もちろん芳園—平吉輝といった姓—名の画家はいないことは日本人であれば、皆感じる。私自身は、香川芳園が該当すると考えているが、今のところ不明で、とりあえず西山芳園でない芳園の画号をもつ画家として芳園平吉輝となっている。

 

今回の展覧会で紹介された多くの画家の作品は、今や日本人には全く関心はなく、ヤフーオークションでも1万円以下で買えるものが多い。十五年ほど前からヤフーオークションで主として掛け軸を買っているが、偽物が多い有名画家を除くと、日本画、掛け軸の価格は驚くほど安い。特に大正から昭和にかけての日本画の2、3流の画家の作品は、絵の内容に比べて誰もコレクションしていないのか、落札価格は驚くほど低い。

 

最近、購入したものでは、帝展で何度も入選した山元春汀の作品も1万円以下だったし、千葉県出身の田中蘭谷の作品も1万円以下であった。どちらも戦前は評価が高かったし、そこそこの価格で売買されていたが、戦後、全く忘れ去られ、人気もなくなった。もちろんこうした画家の贋作はなく、全て真作であることは間違いない。山元春汀の作品は、四季の農家を描いたまことに日本らしい作品なので、昨年末から歯科矯正を勉強に来ていた台湾の先生に送別品として贈り、大変喜ばれた。海外の方へのお土産として、最近ではこうした掛け軸や浮世絵を贈ることが多い。手ごろで、あまり高くなく、またコンパクトになるからだ。

 

掛け軸を集めている人は日本でも多いが、多くの場合、池野大雅、与謝蕪村などの有名画家に集まることが多く、今回の展覧会で展示されている“菅楯彦”でも、オークションでは大体1万円以下、“大阪画壇”で検索しても多くの作品がヒットし、安い。私の場合は、芳園を主としてチェックしており、“西山芳園”もかなりの贋作があるが、それでも署名や印章から真作と思われる作品でも1万から数万円程度で、展覧会で飾られている画家の作品を持つという嬉しさを達成できる。また同一画家の作品を10点も集めると、ある意味、その画家については、どの美術家より専門家になったといえよう。

 

ヤフーオークションでは、落札者のこれまでの落札件数がわかるが、個人であれば、せいぜい落札件数としては数百が限界であり、1000を超える落札件数は業者による。中国の知人によれば、中国の複数のネット業者が、中国人に代理でヤフーネットオークションに参加しており、日本の掛け軸の多くも中国に流出しているような気がして残念である。海外のコレクターは画家の名前には関心はなく、絵の内容により判断する傾向がある。

 

私の場合、最初、大阪の画家、近藤翠石の作品を集めていたが、画題が限られ、次第に飽きてきた。その後、兵庫県の明石で活躍した土屋嶺雪に着目し、この画家は作品の幅が広く、25点くらい集めたが、最近では安く買えなくなったこともあり今は集めていない。その後、シンシナティー美術館のホウメイさんの研究協力で、芳園輝の署名のある作品、あるいは署名が似ている作品、5、6本を買い、そのうち二点はシンシナティー美術館に寄贈した。今でもヤフーオークションで注目しているが、中国在住の知人のコレクターと落札がかぶることもあるので、メールして落札を検討している。これに加えて先に述べた田中蘭谷、山元春汀についても注目している。今回の大阪画壇の展覧会をきっかけに忘れられた大阪の画家についても今一度調べてみたい。



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