2022年10月9日日曜日

第81回日本矯正歯科学会大会

 




10/5から大阪で開催された第81回日本矯正歯科学会大会に参加した。1985年に大会に参加して以来、ほぼ毎年出席している。一昨年はオンライン、昨年も基本的にはオンラインであったが、臨床指導医の更新のために横浜に行ってきた。今年もオンラインとの併設であったが、ようやく本来の形に戻ったと言える。ただ商社展示はかなり規模が縮小し、これまでの華やかな、大型のブースはなかった。

 

学会出席の目的は、100歳になる母親に会いに行くことであったので、10/6の講演を一部聞いただけで、講演は後日、オンラインで視聴することにした。この方がよくわかるからで、今後、コロナが完全に収束しても同じような方法をとって欲しい。ただオンラインでできないことは、商社展示で新製品の説明を受けることと、症例発表で実際の症例を見ることである。商社展示では、各社ともあまり新製品はなく、ほぼこれまでと同じものであったが、やはり全国的に矯正歯科がブームになっているのか、矯正製品の売り上げはいいという。患者数が増えれば、それだけ矯正製品も売れるのであるから、患者数そのものが増えているのであろう。懐かしい人に会えるのも学会ならではであるが、世代交代もあって、年々、古い先生を見かけることは少なくなっている。

 

今回は、昨年まで土曜日にうちの診療所で矯正歯科の勉強をしていた台湾出身の先生と待ち合わせ、昼食を食べて、新規の臨床矯正指導医の症例を一緒に見た。日本でも最高峰の治療結果を見ることができ、今後の目標にして欲しかったからである。ただ残念なことに昔の専門医試験のレベルに比べてかなり見劣りした症例が多かった。昔、数年間、専門医試験官をしていた時は、1症例でも抜歯症例で小臼歯(第二小臼歯)部分の咬合が甘いとほとんど落としていた。この部分が最も術者の力量を見ることができる場所であるし、抜歯症例では通常4本の小臼歯を抜いているため、この咬合が甘いと非抜歯に比べて小臼歯8本分の咬合を失うことになるためである。そのため、試験官はまず術後の模型を口蓋側から見て、上下第二小臼歯部の咬合が甘いと、この症例は不合格とした。実際の採点は減点方法で、この部分の点数が低くとも、点数としては合格するのであるが、ここが甘いと、無理やり他の項目も低い点数にして、合計点数を減らして不合格としていた。試験官によっては小臼歯だけでなく、大臼歯、前歯の完全な咬合を求める先生もいて、こうした先生が審査すると5症例担当しても合格者は一名もないという事態になった。

 

今回、台湾の先生とみた症例10症例くらいの中で、小臼歯がきれいに咬合していたのは2症例ほど、かっての審査であれば、他の8名は確実に落ちていたであろう。必ずしも、術者の技術が低いということを意味するのでなく、私の場合、マルチブラケット撤去時の模型で小臼歯部がきれいに咬合している症例の中から提出症例を選んだわけだが、最近の先生は、ここが甘くても落ちないという情報があって、そう細かく選択しないであろうし、今の試験官は点数操作をしないで忠実に採点していったからであろう。私のような下手な臨床医でも症例数が多いと、奇跡的にうまく小臼歯部がきれいに噛んでいる症例があり、それらを試験に提出したからであり、今回の合格者もそうした基準で選べば、もっといい症例もあったのであろう。舌側矯正では比較的この部分は噛ませやすいが、唇側に装置をつける一般的な矯正治療では、フルサイズのワイヤー(018)、小臼歯部のトルクと垂直ゴムが必要となり、できれば装置撤去前に模型で確認する、あるいは少なくとも咬合紙で、上顎小臼歯部の舌側咬頭が噛んでいるか確認する必要がある。理論上、現在流行しているインビザラインでは、ここを咬合させるにはもっと難しそうであるが、どうであろうか。

 

ここ十年くらいは子供も独立しているので、学会も観光を兼ねて家内と行っている。来年は新潟のようなので今から楽しみである。


 


0 件のコメント: