2022年10月13日木曜日

私の診療スタイル





私のところでは、通常のマルチブラケット装置の調整や保定装置のチェックは15分、第二大臼歯のバンディング、マルチブラケット装置の撤去、手術前のフック立てなどの準備は30分、マルチブラケット装置の装着は1時間の枠をとっている。

 

ほとんど全ての処置は一人でやっていて、通常、最も多いマルチブラケット装置の調整では、ワイヤーを外すのに3分、ワイヤーのベンディングに5分、そして金属線の結紮に5分を要する。レベリング以外は、上下のどちらかのワイヤーのみを調整することが多い。そして治療内容を患者に説明し、カルテに記入して終了となる。衛生士は結紮線を出すだけで、すべての処置は私一人でする。マルチブラケット装置に装着は、まず歯面を研磨し、上下の第一大臼歯(下顎は第二大臼歯)まで全てのブラケットをスーパーボンドでいっぺんに付ける。昔はう蝕処置歯が多かったので、大臼歯は全てバンディングをしていたが、今は処置歯が少なく、ダイレクトボンディングでつけることが多いので、30分くらいで終了する。この時だけは衛生士にセンタロイの.016インチのレベリングワイヤーを入れてもらい。その後、注意事項を説明し、鎮痛剤を渡して終了となる。1時間の予約をとっているが、大体は45分くらいで終わる。保定装置の調整は、5分もかからないが、その後、衛生士にエアーフローによる歯のクリーニングをしてもらう。

 

こうして1時間に4人、重ならないように予約するので、6時間半の診療時間で最大で26名となり、ほぼ毎日、20人程度の患者数を見ているが、問題なのはブラケットの脱離などのトラブルで、2日に一人くらいは必ずいる。ワイヤーを外し、接着剤をタービンで削り、新しいブラケットをつける。10分以上はかかるので、かなり忙しくなる。土曜日も基本的にはこの患者数であるが、バイトもいるので、子供の患者や保定装置の調整など、時間があまりかからない患者をダブルで入れていくので、多いときは40名を超える患者を診ることになる。新患の相談は一応、30分を当てているが、こうした状況でなかなか予約が取れないのが現状である。

 

私の場合、歯科医であった親父が全て一人で治療していたし、兄も同様なので、開業当初は、私と衛生士の家内と二人で診療していた。その後、常勤の衛生士一人と午後からの受け付け一人、土曜日は衛生士学校の生徒さんのバイト一人を加えた構成で、これまで20年以上診療してきた。おそらく日本の矯正歯科医院の中でも最も少ないスタッフ数と思われる。通常、この患者数であれば、受け付け1名、衛生士は最低2名以上いる。多いところでは5名以上の衛生士がいる。こうした歯科医院では、ワイヤーの取り外し、セットは衛生士がするところが多く、先生は口腔内を見て治療の進行を確認し、衛生士に指示を出し、たまにワイヤーをベンディングするくらいである。院長室に引きこもり、患者は滅多に先生の顔を見ないというところもある。アメリカでは1日の患者数が200名以上のところも多く、ほとんどはこうしたシステムをとっている。

 

治療内容や結果に関しては、先生が全て一人でしようが、ベテランのスタッフがしようがそれほど大きな差はない。私の場合は、診療終了後あるいは診療開始前に、矯正装置の技工物までも一人で作っており、結局自分で全てしたいだけなのである。それゆえ、お恥ずかしいことであるが、治療の最後の最後で、ブラケットなどが外れたりすると思わずチェと舌打ち、イラツクことがある。こうした時は、衛生士に「ワイヤーはずして、ブラケットをつけて、また同じワイヤーを入れておいて」言えれば、よほどイライラも少なく、ストレスも少なくなる。こんなこともあり、最近では外科的症例では、少し高いがセルフライゲーションのブラケットを使っており、結紮の手間が省けてよほど気がラクだし、時間が短縮できる。またワイヤーにフックをつける時は、以前はいちいち0.5mm線をロウ着していて、外科的矯正の準備など10本以上ロウ着する時は面倒であったが、今は極力、締め込むタイプの既製品フックを使っている。

 

こうした矯正治療をスタッフにやらせるシステムは、治療法にも関係し、昔のスタンダードエッジワイズを使う先生は、結紮の締め具合も重要と考えるので、全て一人でやる傾向があり、その後、ストレートワイヤーでも.018インチではワイヤーのベンディングも多く、先生も関与する部分が多かったが、.022インチになると、ほぼベンディングがなくなり、さらにセルフライゲーションブラケットでは結紮もなくなった。そしてインビザラインになると従来の矯正治療操作が全く必要なくなり、全てスタッフだけで治療が可能となる。ある先生によれば、この順番で治療の質が落ちると言っていたが、そうかもしれない。



 

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