2022年10月22日土曜日

アライン・テクノロジー社、スマイルダイレクトクラブの株価の暴落

アラインテクノロジー社の株価


スマイルダイレクトクラブの株価









アメリカにおいて、近年、最も成功した企業としてインビザライン社が挙げられ、株価も一時は急激な上昇をしていた。ところがここ数ヶ月、一気に株価は下がり、減少幅でも全米のランクインするくらいで、実に-72.%の減少となった。収益は前年度より増えていたが、その実態として特許訴訟していたStraumann社(ClearCorrect)と和解し、3500万ドル(52.5億円)が決算に組み込まれていた。それを除くと、それほど業績がいいわけでなく、それが株価の暴落につながった。またこの会社は訴訟が好きで、クリアコレクトに対して訴訟しただけでなく、他の同じような会社、例えばスマイルダイレクトクラブにも訴訟を起こしているが、一方、患者からの集団訴訟、反トラスト法違反として昨年、訴訟されたし、また株主からも訴訟されている。この患者、消費者からの訴訟は、深刻である。今はそうではないが、これまでアライン社は、自分の会社で販売しているデジタル印象、iteroしかインビザラインのツールとして受け付けておらず、これが治療費の高額を招いたとして集団訴訟を起こされている。もしこの訴訟に負けると。インビザラインの利用者の数から、歴史的な莫大な損害賠償金となる。くわしくはアメリカの集団訴訟で有名なHagens Berman法律事務所の訴訟をみてほしい。

https://www.hbsslaw.com/sites/default/files/case-downloads/invisalign/2021-07-30-amended-complaint.pdf

 

他にも近年、インビザライン社の多くの特許が切れたため、同じようなマウスピース矯正の会社が驚くほど出てきたことも原因の1つであり、また米中の貿易摩擦に伴い中国への進出ができず、収益が出なかったことも原因であろう。またアメリカでは利益が出ていても、前上がりに上昇曲線を描いていないと投資家からそっぽを向かれるため、こうした新しい会社には厳しい面がある。

 

ところがインビザライン社に和解金を払ったStraumann社の業績も、思わしくなく、株価も昨年の11月に比べて半分以下、また日本のサンキンの矯正部門を切り捨て、マウスピース矯正に参入した、デンツプライ・シロナも昨年5月では55.6ユーロであったが、今は29.31ユーロとこれもかなり下がっている。全体的にマウスピース矯正に参入した企業は軒並み株価を下げている。これは全体のパイが拡大したというより、パイ自体が縮小したか、固定化してしまったからなのだろう。患者数が増加せず、参入会社が増えれば、利益は減る。大体は、こうした理由なのだろう。さらにひどいのは歯科医を介さず、ショッピングセンターなどの店舗で商売していたSmile Direct Clubの株価は2019.10には21ドルだったのが、アライナー社の訴訟の影響もあり、最近は0.8ドルまで下がり、もうすぐ倒産であろう。

 

コロナ禍、私のところも含めて矯正患者、特に成人患者が増えた。ところがどの患者もぱっと見るとあまり凸凹がなく、矯正治療の必要性もあまり感じられなかったが、患者の要望として口元を引っ込めて欲しいという。マスク美人といわれるように、目元は化粧により綺麗になったが、どうもマスクを外すと、口元の突出感が気になるという。もちろんこうした軽度の叢生患者は最もマウスピース矯正の適用となるが、いざ口元を引っ込めたいとなると、ディスキングくらいではそれほど変化は少なく、やはり小臼歯の抜歯が必要で、そうなるとマウスピース矯正ではかなり難しくい。

 

先日、大阪で行われた日本矯正歯科学会の講演をオンラインで見ているが、その中で韓国の先生の矯正用アンカースクリューの症例が面白かった。日本と同じ軽度の叢生であるが、全症例、小臼歯を抜歯して、口元を後退させている。韓国でも矯正治療も目的がでこぼこの改善だけでなく、口元の改善も求めているのだろう。うちに来ているベトナム人の患者さん3名も口元の突出感が気になるようで、どうもアジア人自体、白人に比べて口元の突出感が気になり、非抜歯を中心としたマウスピース矯正は、アジア人には向いておらず、それも当初の目論見と違ってアライン社の売り上げが鈍化した理由だと思う。

 

鹿児島大学の同門会、あるいは日本臨床矯正歯科医会の会員のアンケートを見ても、全患者の5−10%がインビザラインの患者で、それ以外はワイヤー矯正の患者という。反対咬合患者や、口元が出ていない軽い叢生患者など、適用を絞っていくと、これくらいの割合になるのであろう。アライン社やそれに類した会社の思惑は、この5%が将来、90%になることを夢見たのであろうが、今のところそれは無理だと思われるし、今後もそれほど増えないように思われる。

 

おそらく雨後の筍のように出現した多くのマウスピース矯正の会社も、あと1、2年で潰れていくであろうし、本丸のアライン・テクノロジー社のみがかろうじて残り、他はダメになりそうである。世間ではマウスピース矯正が全盛であるが、株価から見ると、もう将来性はないようである。どこかで線引きがなされると思うが、一部の矯正歯科医院では、インビザラインとワイヤー矯正、あるいはリンガル矯正が主体となり、大部分の矯正歯科医院ではこれまで通り、ワイヤー矯正が主体となり、リンガル矯正が少なくなって、インビザラインがその代わりになるように思える。一般歯科でのインビザライン、マウスピース矯正は、アメリカのスマイルダイレクトクラブの凋落と同様に、どこかで廃れていくだろう。患者からすれば、同じ料金を払うなら、矯正専門医で見てもらうだろう。







 

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